「MROC(エムロック)」

 ネットワーク社会の到来により、SNS上で生活者同士、あるいは生活者と企業が直接コミュニケーションを図ることが可能なMROC(Marketing Research Online Community)に注目が集まっている。
 マーケティングリサーチを目的として、特定商品のファンや共通テーマについての興味・関心を持つ生活者を集めたオンラインコミュニティーである。参加欲・貢献欲の高いコミュニティーメンバーとの「対話」を通じて、商品使用実態や購買行動の把握など生活者理解を深め、商品開発につなげるなどの活用例がうまれている。
 

 従来型のリサーチは、定量・定性を問わず、調査対象者を「回答者」とみなし、企業側が一方的に「質問」や「インタビュー」をするAsking型であった。一方、MROCは、調査対象者をリサーチコミュニティーの「参加者」としてリスペクトし、「傾聴」と「対話」を重視したnon-Asking型の調査手法である。

 MROCの設計は次のようになされる。

(1)「テーマ」に関して興味・関心があり、積極的に「対話」に参加したいと考える参加欲・貢献欲の高い人をコミュニティー参加者として、十数人から数百人募る。

(2)専用アプリケーションシステムを活用して、オンライン上にコミュニティーサイトを開設する。基本はクローズドで設計。期間は数週間の短期から1年以上の長期まで可能。

(3)円滑な対話を促すために、専門のコミュニティーマネジャー(博報堂ではディスカッションナビゲーターと呼ぶ)が、テーマに応じて議題の「投げかけ」をする。対話の進み具合、盛り上がりに応じて、1週間に数回の投げかけを行う。

(4)参加者は自由な対話を行い、企業側は「対話」を「傾聴」する。企業側担当者が「対話」に「参加」することも可能。

(5)気になる発言についてはプローブ(深堀)を行うことも可能。また写真や動画の投稿による行動観察や、簡易的な定量アンケートを同時に行うことも可能。

 企業と生活者が対話を行うプラットホームとして「企業コミュニティー」も存在する。しかし自社で企業コミュニティーを立ち上げる場合、システム開発、ガイドラインや運用ルールの設定と社内共有、専任担当者によるコミュニティー管理等が必要な上に、一度始めると安易には止め難いといった問題もあり、組織としての負荷が大きい。また全社的な運用になると、1ブランド・1商品担当者の裁量で活用しづらいという難点がある。外部の調査会社や広告会社が運営するMROCを活用すれば、このような問題点が解決される。

i-dea park i-dea park

 フィリップ・コトラー氏は著書『マーケティング3.0』の中で、ネットワーク社会の到来により、企業と生活者との協働マーケティングが進むと記している。博報堂ではMROCを活用した「生活者協働型」マーケティングプログラム 【i-dea park】TM を展開。オンラインコミュニティーでの対話は、そのテーマやブランドに対する参加者の愛着や関与を高める。そのようなメンバーと各種専門家やメディアコンテンツホルダーとの協働で、広告プロモーションや情報コンテンツの開発、情報発信ファン拡大施策展開まで、つまり、リサーチからプロモーションまでを統合的に展開することを可能にするプログラムである。MROCは、次世代統合マーケティングのプラットホームに発展する可能性を持つ。

◆博報堂のMROC 【アイデアパーク】参加者とコミュニケーションの設計図(例) ◆博報堂のMROC 【アイデアパーク】
参加者とコミュニケーションの設計図(例)