「サービス・ドミナント・ロジック」

 サービス・ドミナント・ロジックとは、2004年ごろからVargo & Lusch(※1)らを中心に提唱されている、比較的新しい顧客提供価値に関する考え方の筋道である。このロジックにおいては、モノとサービスを分けて二極化してとらえるのではなく、モノに下支えされたサービス全体を顧客への提供価値として考える。つまりここではモノは最終提供物ではなく、サービス提供の媒介や手段として位置づけられることになる。

サービス・ドミナント・ロジックに基づく捉え方の変化

 このように生活者への提供価値をコト主導でとらえなおすサービス・ドミナント・ロジックは、様々なタイプの企業の活動に示唆を与えるが、その中でも特にそれまではモノの提供をゴールとしてきたメーカーに対して、「モノを媒介や手段としたコト化による提供価値の深化」という機会と課題を与えている。

 このサービス・ドミナント・ロジックに基づいた活動の盛んな産業の一つとして、スポーツ用品メーカーが挙げられる。本来スポーツ用品というモノを提供するのが生業だったメーカー企業だが、今日では、ある企業が皇居周りのランニングをサポートするステーションを設置したり、また別な企業がHP内で所属チーム探しや対戦チーム探しをサポートするサービスを行っていたり・・・と、充実したスポーツの実践環境の提供に力を注ぐのが、もはや当たり前になりつつある。

 つまりこれらの企業では「ウエア」や「シューズ」というモノを提供するレベルに留まるのではなく、「都心でのファンランニング」や「レベルに応じて仲間と楽しくスポーツする環境」というコトを提供するもう一つ上のレベルで活動している・・・と考えられるわけである。

 一方でサービス・ドミナント・ロジックに基づく活動の形は、何も売った商品の使用価値を高める後天的なもの(下図の②)ばかりとは限らない。例えば、身に着けて使用しているだけでやがてスタイルが良くなる肌着の活用サポート活動に見られるように、商品開発の時点から「スタイル作り」というコトを意識した要素が媒介となる商品に内包されているパターン(下図の①)や、各種レンタルサービスや代行サービスのように、当初はモノを販売していたビジネスモデルが顧客のコト的な欲求に応える形を追求した結果、サービスそのものが商品になっていくパターン(下図の④)などがある。

ビジネスモデル視点から見たメーカーのSDL活動の種類

 さらに、このようなサービス・ドミナント・ロジックに基づく活動が注目を浴びるもう一つの理由を、CRM的な側面への好影響に求める見方もある。

  これはサービス・ドミナント・ロジックに基づく活動には、結果として企業と顧客の関係をより共創的な関係に導く特徴があることによる。つまりは、企業が提供するモノ自体で完結して価値を創出するというよりも、生活者が主体となって企業と一緒に価値を規定していく・・・そんな関係に導くということである。

  ここには企業にとって従来型の「売りっ放し」に見られる手離れの良さはないが、CRMにつながる顧客との関係構築の視点がふんだんに込められており、それこそがアクイジション(新規顧客獲得)からリテンション(既存顧客の維持拡大)に重きを置くようになった産業において、このロジックが注目を浴びているゆえんである。

(*1)THE SERVICE‐DOMINANT LOGIC OF MARKETING(Robert.F.Lusch&Stephen.L.Vargo)において詳しい。
*国内においては、マーケティング ジャーナル誌107(2008)において特集される。