「フラッシュマーケティング」

 フラッシュマーケティングとは、割引料金などの特典がついたクーポンを期間限定でオンライン販売する手法。多くの場合一定数以上の成約件数が前提となり、ギャザリングにも似た手法といえる。Twitterなどのリアルタイムウェブの流行、iPhoneなどスマートフォンの普及によって、瞬間的にユーザーに情報を伝播(でんぱ)させ、販売にまで直結させるマーケティング手法として脚光を集めている。米国の「Groupon」が老舗として有名だが、同じモデルで日本国内でも「Piku」「Kaupon」などをはじめとする類似サービスが生まれ、サービス乱立の様相を呈している。中でもリクルートの「pomparade(ポンパレード)」は、リクルートの営業力との相乗効果で注目されている。またフラッシュマーケティングを構築するためのソリューションを提供する企業も現れている。

 フラッシュマーケティングは今のところ、話題作りや集客などに効果が出ているようだが、本質的にはエンドユーザーに対する大幅な割引であり、ユーザー側の慣れによる特典のエスカレートや、情報を知らない人や定価購入した人が持つであろう不公平感、そしてそれらが結果的にブランドイメージに悪影響を与えるのではないかなどを懸念する声もある。

 会員へのメルマガやホームページで告知を行うタイムセールは以前からあったが、フラッシュマーケティングのほとんどは、ソーシャルメディア(Twitterなど)を活用することで、ネット上のクチコミによる短時間・広範囲への情報伝達が容易にできるようになったことによって成り立っている。そのような意味で、フラッシュマーケティングの新しさや将来性は、大幅割引などの特典にあるのではなく、ユーザーにとって魅力的な情報を、マスメディアよりも安価でスピーディーに、そして直接メディアに接触している人以外にも広く伝達させることが可能という、「時間」と「コスト」の短縮にある。それはあたかも自宅でくつろいでテレビを観ているときに、“お得な情報”が突然飛び込んでくるのに似ている。または知り合いとたわいもない雑談をしているときに、思いも寄らない有益な情報を得られる体験に似ている。そしてその情報に接触した瞬間に、オンラインで購入のアクションを即座に起こすことができるわけだ。わざわざ自分にとって必要な情報を探したり、サイトを定期的にチェックしたりしなくても、向こうからやってくる情報に対して買うか買わないかを決めればよいのである。

 ウェブを通じてユーザーに伝わる情報のリアルタイム性と、それとほぼ同時に行われるシームレスな購買行動がフラッシュマーケティングの本質であり、今後この手法がどのように進化・発展していくかは、ソーシャルメディアがどのように生活に浸透し、スマートフォンなどの新デバイスが生活にどのように定着していくかにかかっているといえる。将来的には単なる割引クーポンの販売だけではなく、さまざまな商品やサービスに関するセール情報がソーシャルメディア上を流れ、短期間かつ手間のかからない売買が行われる新しいマーケットが成立するだろう。