「タブレット」

 ペンや指先によるタッチスクリーン入力をメーンの入力インタフェースとする情報機器の総称。タブレットという名称は、古代に文章が記された石板(十戒が記されたモーゼの石板が有名)に似た板状の形状に由来する。広義では、eブックリーダーのようなタッチスクリーン・インターフェースでないタブレット形状のデバイスも含められることもある。

 アップル社のiPadの発売により大いに話題になっているが、意外にその歴史は古く、ペン入力の最初の特許は19世紀に出願され、コンセプトとしてはアメリカの技術者、ヴァネヴァー・ブッシュが1945年に発表した論文「As We May Think」やスタンリー・キューブリックの映画「2010年宇宙の旅」にも登場する。実用機も1990年代から様々なメーカーが、様々な形のものを発売してきたが、いずれも大きなシェアを得ることはない状況が続いていた。

 では、なぜiPadの登場とともにタブレットにこれだけの注目が集まっているのか?その最大の要因は、そのポジショニングであろう。従来のタブレットはPCの延長線上であったのに対し、iPadは新しいコンテンツビューアーであり、エンターテインメントデバイスとしての側面にスポットライトがあたっている。むろんこのようなポジショニングが成立するためには、メディア・コンテンツ業界の参加が必須であるが、まさにマスメディアや出版業界が新しいプラットホームへの進出を本腰入れて始めているタイミングであり、充実したコンテンツ群を発売時から整備している。

 エンターテインメントデバイスとしてのタブレットは、今後マーケターから見ても重要なコミュニケーションプラットホームとなる可能性を秘めている。今後様々なメーカーから様々なOSを採用したタブレットが発売され、タブレットは急速に普及してゆく可能性が高い。そしてタブレット上では、PCともモバイルとも違う、新しいコミュニケーション表現が可能となる。しかしその一方では、マーケターにとって既に過度に多様化しているデジタルプラットホームがさらに多様化することを意味する。iOS、Android、Windows、WebOS等様々なOS、そして様々なメーカーのハードウェア規格に対応することによる非効率のコストは、容易に新しい表現の可能性のベネフィットを上回ってしまう。マーケティング・コミュニケーション・プラットホームとしてのタブレットの普及には、このハードルをどのように越えるかが最大の課題である。