KPI(Key Performance Indicator)とは、「重要業績評価指標」の意。日本語に訳すと仰々しく、しかつめらしいが、経営戦略においては昔からある、企業目標に対しての業務プロセスを定義し、進捗を測定するための指標だ。
KPIは、企業の全体目標に対してだけではなく、組織内の各部門で個別に設定することができる。組織のミッションを分析し、利害関係を洗い出し、ゴール(KGI、詳細は後述)を決める。ゴールまでの到達度合いを測る指標がKPIだ。
その策定に必要な要素として、「SMART」という言葉が用いられる。つまりSpecific(明確性)、Measurable(測定可能性)、Achievable(達成可能性)、Result-oriented又はRelevant(結果指向または関連性)、Time-bound(期限)の頭文字だが、これらの要素がKPIには不可欠だということである。
KPIが広告業界でよく登場するようになったのは、インターネットが台頭してきてからだろう。インターネットでは明確な数値化が可能だと認識され、マスメディアでも、広告効果やクリエーティブの力などが「これはイケてる」「あれはダメだった」といった感覚の共有にとどまらない説明責任が生まれている。経済状況の悪さがさらにその流れに拍車をかけている。
KPIの運用
では、KPIを広告にどう運用するのか。KPIは「何が重要で、次に何を行えばよいか」を顕在化させる。具体的な目標値を設定し、その目標に向かう力を利用することだ。それには、SMARTのT、「Time-bound」にあるとおり、早めの期限を設け、定期的に振り返ることが必要だ。
広告関連の業務は、素材の制作、メーカーウェブサイトの制作、メディアプランニング/バイイング、DM、PR、店舗設計、イベント等、多岐にわたる。露出にかかわることであれば、その役割は、ニュース・詳細情報の告知、多くのターゲットへの周知・・・・・・などとなる。より多くの顧客に知らせることが、「引き合い件数」を増やすことにつながる。この場合、引き合い件数がゴール、つまりKGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標)となる。
では、このゴールに到達するためには、何が重要なのか。リーチ、ブランド認知率、CVR(コンバージョン率)などがあげられる。これらがKPIだ。
だが、これだけでは、ゴールまでの到達度合いを測定できる指標とはなっていない。KPIを活用するためには、KGIとの関係性、KPIが変わることによってゴールの引き合い件数がどのように変化するのかの検証が不可欠だ。検証でき、目標が設定できれば、あとはゴールに向かって邁進(まいしん)するのみだ。
KPI、振り返りの効用
広告キャンペーンの結果には、よく副産物が付いてくる。「キャンペーンによってブランド認知が上がりましたが、○○もあったことが収穫でした」などといったキャンペーン結果報告をよく聞くが、それらのなかには副産物の方が良く見えてしまう場合も多い。ここで、KPIが定まっていて、定期的に振り返っていれば、本来の目標に向けて、軌道修正も図れる。副産物はあくまでもおまけだ。本来の目的と違うものならば、おまけとして喜べばよい。
広告業務は楽しく、感覚論にもなりやすい。しかし、感覚論だけで進むと、本来の目的とはまったく異なる結果になりかねない。広告がつまらなくならない程度に、しかめっ面でパフォーマンスを見張る番人「KPI」との共存が、これからは必要だ。