「スポンサーシップコミュニケーション」

 スポンサーシップコミュニケーションとは、企業(スポンサー)がスポーツやアート、エンターテインメント、あるいは社会貢献活動を行っている各種NPOなどの活動を支援し、それらの持つ資産(プロパティ)を活用して行うコミュニケーション戦略手法である。

 近年、先進国における広告市場の成熟化が指摘されるが、スポンサーシップコミュニケーション分野は欧米を中心に注目を集めており、全世界で2002年に244億ドルだった市場規模が、2008年見込みでは438億ドルに拡大するなど大きな成長を見せている(アメリカIEG調べ)。その背景としては、この手法の持つ次のメリットが評価されているからだ。

 ①スポンサーが、消費者の共感・応援しているスポーツ、アート、エンターテインメント、社会貢献活動などを支援することで、消費者との自然な接触機会が増加し、仲間意識や好意を持たれやすくなる。結果、スポンサーと消費者との距離が縮まり、そこに強い心理的きずな(エンゲージメント)を作り出すことができる。スポンサーからのメッセージも届きやすくなる。

 ②スポンサーは、スポンサードする対象が持つ資産を活用した広告・プロモーションやセールス活動を行うことで、ブランド認知向上やロイヤルティー形成、売り上げや取引の維持拡大、インナーモチベーションアップや社会的評判形成といった、複数のマーケティング目的を同時に実現させることができる。

 広告コミュニケーションのとらえ方が、世界的に「一方的な情報伝達」ではなく「消費者のブランドへの関与を高めるための諸施策」であるべきだ、と変化している。その中で、スポンサーシップコミュニケーションはまさに新しいとらえ方の視点に合致したコミュニケーション手法として評価されているのだ。

 一方、日本ではこれまで「協賛」と呼ばれる活動が行われてきた。しかし一部の先進的企業を除けば、欧米諸国で見られるような高い戦略性をもって行われてきたとは言えない。多くの場合受け身的で、一定の協賛金支払いの対価として保証されたもの(イベントなどでの企業ロゴ露出や無償チケット入手など)を享受するにとどまっていた。協賛対象と協力し、彼らが持つ資産を活用した積極的なコミュニケーション活動(これを『アクティベーション』と呼ぶ)を行ったり、十分な効果把握を行ったりしないため、しばしば費用に見合う効果が十分でないと認識されたりしてきた。

 しかしながら、本来スポンサーシップコミュニケーションの手法には大きな可能性があり、日本でもこれまでのやり方を一歩進めた取り組みをしていくことが大切だと考える。

 そこでADKでは、海外の動向を参考にしつつ、より効果的なスポンサーシップコミュニケーションを実施するためのプログラムとして、「ADKスポンサーシップバリューアッププログラム」を開発している。これは、「『協賛発想』から『パートナーシップ発想』」「コンテンツを中心とした360度の統合コミュニケーションの実施」「正しい効果測定(レビュー)の実施」という基本思想に基づき、図のような3つの要素からなるサービスを提供するものだ。

 スポンサーシップコミュニケーションは今後もっと注目されてよい戦略手法だ。われわれもその可能性と価値を高めるため努力していきたい。

図:ADKスポンサーシップバリューアッププログラム 3つの要素 図:ADKスポンサーシップバリューアッププログラム 3つの要素