環境広告を筆頭に、CSRをテーマとした広告を目にする機会が急激に増えている。
CSRとは「Corporate SocialResponsibility(企業の社会的責任)」の略で、比較的新しい概念。欧米にやや遅れ、2003年が日本のCSR元年と言われる。その浸透とともに、今CSRは次フェーズへの移行期を迎えている。
そのポイントの1つは、取り組む企業が一気に拡大した点。初期は自動車やエネルギー産業といった環境負荷の高い事業に従事する企業など、一部の業界、企業が先行して取り組んでいたが、最近ではどの業界、企業においてもスタンダードなものになりつつある。
付随してCSR訴求型のコミュニケーションも活発化。企業広告ではCSRをメーンテーマにするケースが増え、企業ブランディングにおいてはCSR的視点が不可欠な時代になりつつある。またプロモーションとの融合も進み、昨年夏に話題を集めた『Volvic』の「1ℓ for 10ℓ」キャンペーンに代表されるように、「コーズリレーテッドマーケティング」(社会問題に自社のブランド・サービスを関連づけてキャンペーンを行い、経済的・人的に支援することで、結果として営業利益を上げるマーケティング活動)を採用する企業も増えている。
こういった企業のCSRマーケティングの積極化の背景には、地球温暖化や格差社会など、社会問題が身近に実感をもって感じられるようになったことがある。ADKが4月に実施した調査(全国の15~69歳の男女1,236名)では、「地球温暖化の進行」に対して9割の人が関心を持ち、7割近くが「自分で何かできることがあればしたいと思う」と考えている(図2参照)。「環境貢献をしている企業の製品を積極的に選ぶ」と言う人はまだ3割にとどまるが、今後の環境問題の流れを考えると、その意識はさらに高まることは間違いない。また、食育、教育、人権問題など、環境以外の問題への関心の広がりも予測される。
CSRマーケティングが広がる中で、活動やコミュニケーションの類型化も始まっている。その企業らしいCSRとは何かの追求が、今後ますます重要になってくる。そのためには、企業のバリュープロポジション(自社の提供する価値)や理念、フィロソフィーを再確認するという根本的なところから始まり、その企業の固有性を持ったCSRマーケティングの文脈を構築することが、不可欠である。