マーケティング・ダッシュボードとは、様々なマーケティング・データを、包括的に見やすく提示するソフトウエアの総称である。マーケティングの意思決定を、自動車や飛行機の操縦に例えて、ダッシュボード(計器盤)のようにデータを提示するという意味で「ダッシュボード」という言葉が用いられている。マーケティングROIへの注目の高まりとともに、マーケティング・ダッシュボードという言葉が広く用いられるようになったが、明確な定義はなく、ひとえにマーケティング・ダッシュボードと言っても、非常に簡便なものから高度なものまで、様々なものがある。個々のアプリケーションごとに機能は異なるが、総括すると以下の5つの機能に大別できる。
機能1:多様なデータを集約
すべてのマーケティング・ダッシュボードに共通しているのが、社内にあるばらばらのデータソースからの情報を集約していることである。システム的に統合しているケースもあれば、人的に集めているケースもあるが、ダッシュボードの最も基本的な機能といえる。
機能2:グラフィックな一覧性
グラフィックにデータを表示し、多様なデータを一覧しながらの意思決定を支援する。マーケティング・ダッシュボードの機能として最も頻繁にあげられるのがこの機能である。FlashやFlexなどのテクノロジーによって、容易に高度なグラフィック・ウェブ・アプリケーションを開発することが可能となったことがダッシュボードがもてはやされるようになった一つの要因である。また既存の情報管理・分析・意思決定支援システムにダッシュボード的なインターフェースが備わり、ダッシュボードと言われているケースも多い。
機能3:リアルタイム性
自動車や飛行機の計器盤がそうであるように、リアルタイムのデータ表示をすることもダッシュボードの機能としてあげられる。当然データの更新頻度の制約によって真のリアルタイム性を持つことは難しいが、日単位、週単位でのリアルタイム性を持つダッシュボードは多く、リアルタイム性を持っていることがダッシュボードとしての必須機能だと解釈するケースもある。
機能4:データ解析
高度なダッシュボードには統計分析を行い、マーケティングの意思決定に必要な情報を抽出する機能を備えているものもある。その内容は、簡単な統計解析からマーケティング・ミックス・モデルを活用してROIの評価を行うものまで様々であり、また背後で自動的に行うものもあれば、ユーザーが個別に操作するものもある。
機能5:予測機能
将来のシナリオに応じた売り上げ予測を行う機能を持っているダッシュボードもある。いくつかのシナリオに対し「What-If」分析を行い意思決定ができるようマーケティング・インプットの結果のシミュレーションを行うことが必要であり、最も高度な機能である。
マーケティング・ダッシュボードを導入する意義はマーケティングにおける意思決定の高度化・効率化に加え、縦割り組織の弊害を解消し横の情報共有の円滑化を図ることもあげられる。マーケティング・ダッシュボードを導入することにより、マーケティングの現場の中でしか理解されていなかったマーケティング効果・データが、トップ・マネジメントおよび他の部門からも理解される。つまり、マーケティング・ダッシュボードはマーケターがマーケティングを見るためのインターフェースであるとともに、トップ・マネジメントおよび他の部門がマーケティングを見るためのインターフェースでもあるとも言える。