広告の効果が測れない。テレビCM崩壊。こんな言葉が広告を取り巻く業界の中で日常的に語られている。この言葉の中身を探っていくと、効果測定の問題に突き当たる。そもそも広告効果とは何か。20世紀型のAIDMA理論をベースにすれば、広告接触率、認知率、注目率であり、広告に接触する可能性や接触した生活者の意識変容であった。
20世紀末から広告の効果として費用対効果(ROI)の概念が登場し、広告費が投資と位置づけられ始めた。広告によって、いくら売り上げが向上したか? この説明を企業の広告担当セクションや広告会社が担わなければならなくなった。もともとAIDMA理論下の広告は、生活者の頭の中に商品(ブランド)を記憶させ、店頭での購入へ誘導していくことが役割だったため、表現は「ワンフレーズ・シンプル・インパクト」を前提とし、テレビCMではメーンコピー言い切り型、印刷媒体では一幅の絵画型であった。AIDMA理論は意識変容が主体で、最後のA(購入行動)はオマケのような存在として認識されていた。よって、一定期間に大量露出するキャンペーン型が主流を占め、生活者の意識を一挙に変化させることに主眼を置いてきた。
21世紀の広告管理は意識変容から行動変容へ指標が変移しつつあり、AIDMAもAISAS(電通)やAIDAに変化している。購入行動を喚起する広告とはどのようなものか? テレビ媒体を見てみると、テレビショッピング番組は枠が取れない状況が続いており、スポット枠でも60秒以上の長尺CMの出稿が増加。十分な時間をかけて生活者と対話し、購入行動に結びつける表現が台頭している。新聞広告を見ても、全ページ(15段)の記事体広告が目立つ。11月下旬の全国紙を調べると、ある新聞では新聞本紙40ページのうち、通販・通教・通販保険分野の全ページ広告は13社を数え、全体の3分の1を占めていた。これら業種の広告効果を測る指標は、CPOやCPRという顧客獲得効率である。つまり、このような表現が多数を占めているのは「効果がある=売れている」からといえよう。広告効果についても意識変容ではなく、行動変容をベースとした表現や出稿パターンで実施すれば「売れる広告」が可能となるのだ。これらの表現の基礎となるのは「対話/説得」という要素である。
ダイレクト広告では、マス広告のように「記憶」ではなく、接触した瞬間に「購入/申し込み(CTA)」が重視されるため、表現は「対話/説得」のステップを踏み、段階を追って納得してもらい購入行動を喚起することが絶対条件である。
ダイアログ マーケティングは左図のように「ダイレクト→TEL→ONE to ONE→データベース」の分野を守備範囲とし、対話により顧客を獲得し、顧客をロイヤル顧客へ育成するまで活用できるマーケティング手法である。そして「対話/説得」型のコミュニケーションにより、良好な関係を築いた顧客が、自らの判断でクチコミやブログで好意的な情報を発信してくれるCGMの世界へつながりやすい。広告によって発信された内容がCGMで波紋のように拡大し、価値増幅のバリューサイクルが生まれてくる。顧客を巻き込んだ勝利の方程式、それがダイアログ マーケティングである。