OTTは普段皆さんが利用している身近なサービスです。「Over The Top」の略称で、IT用語のひとつ。インターネット回線を通じて、映像、音声、SNSなどを通したメッセージなどのコンテンツを提供する企業やサービスを総称するものです。ISP(インターネットサービスプロバイダー)や通信キャリアと呼ばれるような通信事業者はOTTに含まれないとされています。OTTの普及に伴い、その概念についても様々な解釈が出てきています。
背景
iPhoneやAndroidなどのスマートフォンが普及する前、映像や音声などのデジタルコンテンツを含む様々なサービスを提供する事業者は、通信事業者を通してサービスを提供していました。サービスを利用した際、通信事業者の通信料の請求にサービス利用料を上乗せして請求するため、利用者はサービスの支払いを気にすることなく利用していたのです。通信事業者のみの限られたサービスも存在していたため、契約先によってはコンテンツサービスを利用することができない場合もありました。現在は、スマートデバイスの普及や通信速度、ユーザーエクスペリエンスなどの技術進歩に伴い、会員登録や認証、決済など様々なインターネットを介した方法が複数存在します。それによって、必ずしも通信事業者を介さなくても、動画や音声などのコンテンツサービスを提供できるようになっています。故に通信事業者等はOTTに含まれないとされており、従来の方法にとらわれずに、「制限を超える」「より上へ」などの意味合いをもつ「Over The Top」という用語が総称として利用されるようになりました。
OTTの種類
OTTには有料、無料問わず様々な種類が存在し、今後も新しいサービスが増えていくと考えられます。2020年6月にスタート予定のディズニー・プラスも注目されています。種類を紹介する上でOTTビデオ、OTTボイス、OTTメッセンジャーとわけてみます。
●OTTビデオは、動画配信サイトに代表されるYouTubeやHulu、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、DAZN、TVer、FOD、Paravi、TELASA、ABEMA、ディスカバリーチャンネルDplay、J:COMオンデマンド、ディズニーデラックスなどがあります。
●OTTボイスは、Spotify、radiko、Apple Music、Amazon Music、LINE MUSIC、YouTube Musicなどがあります。
●OTTメッセンジャーは、Facebook Messenger、LINEなどがあります。TwitterもOTTに含まれるという人もいます。
OTTの提供方法・デバイス
OTTに対応したデバイスとしては、PC、スマートデバイス、テレビ受像機、セットトップボックス、レコーダー、スティック、スマートスピーカーなどがあります。OTTサービスの種類に応じて対応するデバイスも異なります。
PCは、ブロードバンド回線を経由してブラウザー上でサービスを提供するモデルです。PC上で動くアプリケーションによる提供方式もあります。
スマートデバイスは、Wi-Fiや電話回線を経由して、スマートフォンやタブレットで各サービスのアプリケーションにて提供するモデルです。AppleやAndroidストアなどからアプリケーションをダウンロードする必要があります。事前に各デバイス・メーカー側でインストールして提供している場合もあります。
テレビ受像機、セットトップボックス、レコーダー、スティックは、ブロードバンド回線へ結線またはWi-Fiに接続しアプリケーションで提供するモデルです。これらのデバイスには専用OSが搭載されており、PCやスマートデバイスと異なった操作性を向上する動きも出てきています。
スマートスピーカーは、Google、Amazon、Apple、LINEなどが提供しており、Wi-Fiを通して音声を中心としたOTTサービスを提供するモデルです。スマートスピーカーはIoT(Internet of Things)の領域以外にOTTサービスの操作などのユーザービリティを向上するうえでも重要になっていくと思われます。
OTTの今後
5Gによる通信回線の環境変化、デバイス機器の進化を通してOTTサービスはコンテンツの充実化、利用ユーザーの増加、ユーザーエクスペリエンスも各社の工夫により向上しています。今後も高品質、高付加価値なサービスが増えてくると思います。またこのような技術の進化により、テレビや新聞といった既存メディアのデジタルトランスフォーメーションがより加速されるでしょう。OTTがより進むことによってユーザーが場所や時間を限定されることなく優良なコンテンツを得られる機会が増えることが期待されます。一方で、利用ユーザーも増える中で、市場が飽和状態になり、各社のサービス力が試されることにもなります。ユーザービリティ、コンテンツのラインナップ、バリエーション、提供価格、広告モデルと課金モデルとのハイブリッドモデルなどの戦略、コンテンツ制作や提供者やデバイス・メーカー、通信事業者とのコラボレーション、AIによるバックグラウンドの効率化などオリジナリティーを打ち出していくことが重要になるでしょう。
OTTサービスを通して家族、友人などの生活と経済がより豊かになっていくことを期待しています。
株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI) ブロードキャスティング・ディビジョン エグゼクティブ・スタッフ グループマネージャー
2006年CCI入社。動画CMの商品開発やオペレーションに関わり、07年に電通と音声広告ネットワーク(PodcastAD)の立ち上げと音声広告配信システムにおける特許を取得する。09年以降、媒体社への広告配信システムや分析ソリューションの提供やコンサルティングを行う。現在、放送局や動画配信サービス事業社を中心にソリューション提供やオペレーション、ライブ配信、プログラマティック取引など環境整備に従事。