コロナ禍の人々の心を和ませたゼスプリのキャンペーン
ゼスプリキウイフルーツの日本におけるマーケティングを一手に担っているゼスプリ インターナショナルジャパン(以下、ゼスプリ)は、2016年からキウイを食べる習慣が少ない若年層に対し、美味しさや栄養価の高さを伝えようと、日本発のキャラクター「キウイブラザーズ」を全面に押し出した広告展開を行ってきた。2020年度は世界共通で「Make your healthy irresistible(ヘルシーをやみつきに)」というタグラインを開発。この理念を訴求するべく、日本では2020年4月からキウイブラザーズを起用した60秒のテレビCM「好きなことを楽しみながら」篇を展開した。
昨年4月といえば新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発出された時期と重なる。キャンペーンのローンチ時の葛藤について、ゼスプリ インターナショナル ジャパン(株)マーケティング部 APAC マーケティング本部長の猪股可奈子氏は、「本当にキャンペーンをスタートさせていいのかどうか、社内でも意見が分かれました。しかし話し合いを重ねるなかで、実は今の世の中に非常にマッチするキャンペーンなのではないかとチームの答えが一致し、ローンチに踏み切りました」と話す。
猪股氏をはじめとするゼスプリチームの思惑は当たった。緊急事態宣言下でストレスを感じる生活のなか、キウイブラザーズのかわいらしい姿に心を和ませた視聴者が続出。同CMは高い好感度を獲得した。テレビCMで手応えが得られたことで、「Make your healthy irresistible」を伝えることがミッションだと考えるようになった猪股氏が次に手がけたのが、新聞を活用した「スポーツの日」、「親子の日」、「栄養の日」の3回シリーズだ。出稿の経緯について猪股氏は次のように振り返る。
ゼスプリ インターナショナル ジャパン株式会社
マーケティング部 APACマーケティング本部長
猪股可奈子氏
「ブランドの概念を幅広い世代の方に、広く、深く理解してもらうことができないかと模索するなかで出てきたのが新聞でした。新聞の利点は即時性があるところですから、“〇〇の日”に結びつけることで、自分ごととして捉えてもらえるのではないかと考えたのです。難しかったのは表現方法。テレビCMでは主役のキウイブラザーズが頑張り過ぎてしまうなかで、“無理をしなくてもいい、キウイを食べよう”と気づく設計にしているのですが、このストーリーラインを2Dの世界で表現するのは非常に難しかったですね。何か違う方法で、できればバズを生み出せないかと話し合うなかで出たアイデアが、タレントさんの起用。一人ひとりが人生を楽しんでいらっしゃるところが企画にピッタリだったので、森三中さんにお願いすることにしました。制作するうえでとくに大切にしていたのがコピーです。本当に消費者が我慢していること、頑張り過ぎていることってなんだろうと深堀りしながら、真実に近いところを
表現できるように、なおかつ押しつけがましくならないように、何度もやり取りを重ねながら進めました」
掲載後、同社のコールセンターには「元気になった」「かわいい」などの意見が多く寄せられた他、SNSでの活発な投稿も見られた。
利便性と信頼性が高い新聞社のニュースサイトにも期待
コロナ禍におけるゼスプリの新聞広告において、話題を集めた紙面がもう一つある。それが2020年5月31日に朝日新聞に掲載された「普通のことが、特別なことでした」がキャッチコピーの全15段広告だ。同社は昨年4月18日から29日にかけて、Twitterで「#差し入れキウイ」のハッシュタグとともに、具体的に感謝を伝えたい店名とその気持ちをツイートすると、そのツイートで推薦された店舗にキウイフルーツ1ケースを送るというキャンペーンを実施した。新聞広告はそのフィナーレを飾る位置づけで出稿されたものだ。
「大変な状況のなか日常がまわっていたのはスーパーや青果店で働く皆さんのご尽力があったからこそ。Twitterのキャンペーンではその気づきをステークホルダーの皆様に届けることができたと感じました。同時に、この気づきはもっと広く理解してもらった方がいいのではないかと考え、集大成として新聞に全15段広告を出稿。キャンペーンを通じ、お客様から感謝の声を多く頂戴(ちょうだい)することができました」(猪股氏)
毎年、コンテンツを考える前に、どういうメッセージを伝えるのか、コアとなる部分を、時間をかけて設計するのが同社の方針。今、来期のキャンペーンの開発真っただ中の猪股氏は、新型コロナウイルスの今後の見通しについてはそれほど重要視していないとのことだが、その理由について「もちろん新型コロナウイルスの感染状況によって、キャンペーン実施時のトンマナは間違えないようにしなくてはなりませんが、キウイフルーツがもたらすことのできる価値は、日常がどう変わろうが普遍的なもの。例年通り、消費者のリアルな悩みや我慢にタッチできるかどうかを最優先に考えています」と語った。
最後に新聞の役割、また期待することについて猪股氏に伺った。
「ゼスプリでは若い人たちにどれだけフルーツを食べてもらうかを軸にメディアを設計しているので、基本的にはデジタルがメインです。ただPRの最終的な展開先として、新聞紙面は非常に重要なメディア。引き続きPRのコンテンツを活用し、紙面上にキウイフルーツやゼスプリが登場するような展開を行っていく予定です。またミドル世代とのタッチポイントとして、新聞社のニュースサイトにも期待しています。本場ニュージーランドでは、キウイフルーツがメンタルヘルスにどのような影響を与えるか研究を進めているところ。今後、こうしたキウイフルーツの健康効果を伝えるには、デジタルの利便性があり、かつ情報への信頼性の高い新聞社のサイトは有効だと考えています」
来期も消費者とコミュニケーションを図るべく、引き続き幅広いメディアを活用していくと話す猪股氏。キウイブラザーズは、コロナ禍であっても、コロナ後であっても、その時々の消費者の心に寄り添い、持ち前の明るさとかわいらしさで、多くの人を和ませてくれるだろう。