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明治期から連綿と積み上げられる「朝日新聞の宝」
――朝日新聞フォトアーカイブはどういったサービスですか
竹谷:朝日新聞フォトアーカイブは、明治期から現在まで朝日新聞のカメラマンと記者が撮り貯めてきた日本各地の写真と動画約450万点(2024年11月末現在)を利用できる法人向けサービスです。2010年に立ち上がったサービスで、webサイトで無料の法人ID登録をしていただきますと、日付やキーワードなどで簡単に写真・動画の検索ができます。
朝日新聞社では日露戦争あたりからのネガなども含めると推定2000万枚ほどを保有し、そのうちデジタル化された約450万枚をフォトアーカイブで利用できる、ということになります。
提供する写真や動画は取材で撮影したもので、基本的に朝日新聞社に著作権があります。一方で、うつっている方の肖像権については、利用される方に権利処理をお願いしています。
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――現在も、データはどんどん増えているわけですね
竹谷:そうです。例えば2021年以降ですと、社内でデータとして蓄積される写真は1年間で平均14万枚ぐらいあります。2024年はオリンピックや総選挙などもあって、平均よりも多くなると思われます。総選挙の投開票日(10月27日)は他のニュース写真を含めて1日で1000枚近くになりました。これは普段の1日平均の2倍以上にあたります。
――写真だけでなく、動画も古いものがストックされているのでしょうか
竹谷:動画は大正時代から現代まで、1万本ぐらいあります。主に1930年代後半から1940年ぐらいのものと、2010年ごろから以降のものが多いです。「2010年ごろから」というのはインターネットが普及し、新聞社として動画に力を入れ始めた時期にあたります。古いものは昭和初期に作られた「朝日世界ニュース」や子ども向けの「アサヒコドモグラフ」「アサヒホームグラフ」といったニュース映画が中心です。
杉浦:ニュース映画はほとんど速報のようなもので、今のテレビのニュース番組のような役割を果たしていました。
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焼却処分の危機をくぐり抜けた、原爆投下直後の貴重な写真も
――朝日新聞フォトアーカイブの強みを教えてください
竹谷:国内の報道写真としては、最大級・最古のコレクションになります。記者たちが数々の歴史的な瞬間に現場で立ち会い、写真に納めてきました。
2025年は戦後80年ですが、1945年8月6日に広島へ原爆が投下された後、大阪本社の写真記者・宮武甫(はじめ)氏が同月10日から広島市内で撮影した写真が残されています。終戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の命令を受けて、上司からフィルムを焼却しろという話が出たのですが、ネガを自宅に隠し持って守り抜いたという逸話が残っています。また、長崎では写真記者・富重安雄氏によって被爆直後の写真が記録されています。
技術的な面では、朝日新聞社は小型ジェット機で高度1万メートルを超える高高度からの写真を撮れる数少ない会社です。エベレストを上空から撮影した珍しい写真もあります。また、防振装置がついたビデオカメラを搭載しているヘリコプターもあり、気象条件が悪くて機体が揺れるような災害現場などでも、ブレの少ない滑らかな映像があります。
このほか、新聞社の写真というと硬いイメージがあると思うのですが、昔の暮らしぶりや世相を表すような写真も多いです。
――具体的には、どのような写真がありますか?
杉浦:例えばですが、そば屋の出前の写真が大量にあったりします。また、大阪にあった蛍売りの夜店を撮った写真(1935年)もとてもきれいです。この写真はフィルムではなく、ガラス板に焼き付けたものですが、非常に美しい仕上がりになっています。
一方、1954年は東京で大雪が降ったらしく、上野駅近くの坂でスキーをする人が集まっている様子も珍しい一枚です。
世相を切り取った動画もあります。燃料物資が貴重な時代だった1940年制作のアサヒホームグラフ「珍案湯沸法(ちんあん・ゆわかしほう)」は、牧場の牛や馬の堆肥(たいひ)から出る熱を利用して湯を沸かす取り組みを紹介しています。
このほか、栃木・日光で行われた氷上スポーツ大会で、スケート靴姿で卓球やバドミントンに興じる人々を映した「氷上スポーツ」(1940年、朝日世界ニュース)といった珍しい映像や、大人に交じって小学校帰りの子どもたちも手伝う山形・天童の「将棋の駒作り」(1939年、アサヒコドモグラフ)のような、人々の生活風景がよく伝わる動画もあります。
――写真は社内に保管されているのですか?
竹谷:社内にいくつかある書庫に分散して保管・管理しています。中にはデータの出所の特定が難しいものなどもあり、すべてをフォトアーカイブで提供できるわけではないのですが、時代を揺るがした事件の生々しい記録も残っています。
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企業の歴史を写真で彩る
――フォトアーカイブは実際にはどのように利用されていますか?
竹谷:主なクライアントは、テレビ局や出版社、教科書会社などですが、企業のCMや社史などでの利用も増えてきています。企業の歴史を振り返ったり、歴史の長さを印象づけたりする形での利用が多く、周年を迎える企業が「○×年頃の出来事を探したい」といった時に便利なサービスとなっています。
また、特に災害に関する写真や動画は、防災の啓発目的で様々なところで利用されています。地震や浸水した際の状況と対比させて今後の対策に役立てる、などの用途があります。以前には、保険会社の広告で、全都道府県それぞれの大きな災害の写真を使っていただいたこともありました。
杉浦:提供した写真はある程度の加工も可能になっていますので、広告では写真を組み合わせるなどして利用される場合もあります。
――たとえばどのような広告利用事例がありますか
杉浦:伊豆諸島の青ヶ島に初めて電話が通った際の写真(1956年)を、半導体用シリコンウェハーを製造するSUMCOのテレビCMで利用していただいたことがあります。「半導体の進化が世の中を変える」というナレーションとともに、技術の進化を印象づける一コマとして、写真が利用されました。
朝日新聞社のウェブサイト「&Travel」で帝国ホテル「ライト館」の100年を写真で追っていく広告企画を掲載した際にも、アーカイブの写真が活躍しました。「日本が世界に誇る「東洋の宝石」 朝日新聞の記録で振り返る帝国ホテル「ライト館」の100年」では、その歴史の長さを印象付ける写真を使用してもらいました。フランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテルの二代目の本館は、関東大震災で打撃を受けた朝日新聞社が仮事務所を設けたこともあり、当時の様子がよくわかる写真が多く使われています。
ほかの事例では、豪雪時に地方記者が地上取材したものや高速道路での立ち往生を空撮した写真が、カー用品店の店頭でポップに利用されたことがありました。冬の雪シーズンを前にした、早めのスタッドレスタイヤの準備を呼びかけるキャンペーンに活用されました。
著名人の写真素材も豊富にストック、撮影コストの削減に貢献
――膨大な写真の量だと思うのですが、イメージにあった写真の有無などは相談できますか?
杉浦:イメージ検索依頼なども受け付けているので、「こんな感じのものないですか?」というご相談にも応じられます。例えば以前、教科書会社から「輸入牛肉を選んでいる消費者が写ったスーパーの写真はないですか?」というものがありましたが、こちらで探したらやはりそういったものが見つかりました。細かな要望にもできる限り対応したいので、ぜひご相談いただきたいですね。
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竹谷:フォトアーカイブのページで法人新規IDを申請していただき、審査が行われた後、IDが発行されますと、自由に画像が検索できます。写真・動画の著作権は朝日新聞にあるので、こちらで用途の確認ができればすぐに使えます。
以前経験したケースですが、企業が社史を作ろうとして社内を探したところ、会社に写真はあるけれど誰が撮ったものか分からないので使用できないという理由で、こちらの写真を使っていただいたこともあります。肖像権は確認していただいていますが、著作権と肖像権の二つのうち、著作権がクリアになっているだけでも負担は軽いと言えるのではないでしょうか。
杉浦:著名人の写真素材も豊富にあり、カメラマンが撮ったクオリティの高いものをそろえています。例えば、著名人を撮影するとなると写真セッションの設定やスケジュールをおさえるコストや手間が大変ですが、フォトアーカイブの写真素材をご利用になるのであれば、事務所に連絡して許諾さえ取れればすぐ使えるし安く済む可能性が高いです。こちらの方がはるかにメリットがあります。
――最後に、広告などでフォトアーカイブの利用を検討される方へのメッセージをお願いします
竹谷:どの写真にも言えるのは、昨今の画像生成で作られたものではなく「事実を写し取った」写真だということです。記者、カメラマンがその一瞬を狙うために現場に行って撮影しています。それは今も昔も同じです。
杉浦:フォトアーカイブの写真はライブ感があって、眺めているだけでも広告制作のアイデア出しのヒントになると思います。飛行機の中で虎が逃げ出した、というような信じられない出来事の写真もあります。新しいイメージを作り上げていくときの参考にもなると思います。
朝日新聞夕刊に掲載中の「朝日新聞写真館」やインスタグラム(@asahi_photoarc)とX(@asahi_photoarc)でも写真を配信しているので、どうぞご覧下さい。
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