
「Twitterが閲覧できなくて困る!」「Twitterが好き!」
2023年当時の出来事に、企業がSNSを重視するべき理由が凝縮
2023年7月、一時的にTwitter(X)がAPI制限を設け、1日の閲覧回数に制限をかけたことがYahoo!ニュースの記事やテレビのニュースでも取り上げられ、社会的に大きな話題となりました。
「推しの情報が追えない」「近くで災害などなにがあったか分からない」「使えないと困る」など、携帯キャリアのサービス障害とよく似た反応がみられたことは記憶に新しく、SNSは今やあらゆる世代にとって身近で欠かせないツールとなっていることを示しています。
SNSがこれほど身近となるきっかけとなったのはそのTwitter(X)です。2008年に日本語版のサービスが開始してから間もなく18年になります。私たちが生まれて成人するまでの期間が経過することになる今、国内の月間アクティブユーザー数(MAU)は6,800万人に達しています。
X(Twitter)と共通のUIを採用したThreads(2023年7月、サービス開始5日で、全世界1億ユーザーを獲得)を筆頭に、Bluesky、mixi2など、UIや機能を踏襲したSNSが続々と誕生したことも、フォロー、拡散、お気に入り、タイムライン閲覧といった、”Twitterの骨子となる仕様”が、推し活中心のライフスタイルに欠かせない現状が明らかになった現象といえるでしょう。
これらのTwitter踏襲型SNSは、Xの会員課金モデルへのシフトや生成AIによる投稿・画像の学習、ハッシュタグ廃止の検討といった、運営方針や機能の変化を受け入れられない利用者の”移住”を想定しています。他、FacebookやInstagram、YouTube、TikTokなど、役割や利用者層の異なるソーシャルメディアが次々に台頭しています。
SNSの日本での人気は高く、国内の月間アクティブユーザーは、先ほど挙げたSNS中で(利用者の割れる”旧Twitterを踏襲したSNS”を除く)、もっとも少ないFacebookでも2,600万ユーザーを超えています。日本の人口の約21%に該当するSNSは、メディアとして充分に機能しているといえるでしょう。
他にも、ミームや、隙間時間に視聴できるショート動画など、文化やライフスタイルの変化に合せてSNSから発生・浸透するトレンドは多く、マーケティング戦略に欠かせないヒントが多数みられる文化の1発信源といえます。
月間アクティブユーザー数 |
対人口比 |
参考元 (年月) |
|
X (Twitter) |
6,800万人 |
55.04% |
|
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2,600万人 |
21.04% |
|
YouTube |
7,370万人 |
59.65% |
|
|
6,600万人 |
53.42% |
公式 (2023年11月)*1 |
TikTok |
3,300万人 |
26.71% |
|
Bluesly |
未公表 |
未公表 |
|
mixi2 |
未公表 |
未公表 |
主なSNSの国内MAU ※対人口比:日本の人口を1億2,355万人として算出(参考:総務省統計 |25年1月)
※1 2023年11月の「Meta Marketing Summit Japan 2023(Online)」にて発表

SNSのお悩み解決!事例と5つのバズポイントを解説
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2025年には”メディアとSNS” “著名人と一般発信者”の区別が曖昧に
担当者の「SNS上級者」としての期待は高い
テレビと違って発信者の資格には制限がなく、誰でも発信できる一方で、コストをかけなくても工夫やユニークさで注目を集めやすいため、タレント・著名人やSNSで支持を集めるインフルエンサーから、0フォロワーの無名・独り言アカウントまで、SNSには無数のアカウントが共存しています。
技術や機器・収益モデルが進歩・普及したことによって、2025年現在では、YouTubeでペットの様子を生配信したり、スポーツファンが日々思ったことを日記的に配信するアカウントなどが特別なものでなくなり、それらの視聴もかなり一般的となりました。SNSで有名になった一般人がテレビ出演し、テレビタレントはYouTube公式チャネルにも注力しています。どちらにも広告が配信され、Amazon Fire TVの普及とテレビ番組の配信提供によってテレビでもPCでも視聴できるなど、視聴者の意識はどちらも同じ。メディア、発信者とも、旧来のものと区別がつかないまでになっています。
生活者は誰でもソーシャル「メディア」としてSNSに接し、閲覧者でありながら、発信者としても注目や収益を集めることが当たり前のこととなりました。だからこそ、日常生活でSNSに慣れ親しんでいる企業の広報、宣伝、マーケティング担当者には、「SNS経験者・上級者」としての大きな期待が集まっています。2025年となり、すでに30歳以下の企業の担当者は概ね、デジタルネイティブである「Z世代」へとシフトしているのです。
おさえたいSNS活用は3パターン
アカウント運用は“ダイレクトマーケティングツール”として機能

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SNSは前述のように利用者が多いこと、生活に欠かせない情報チャネルとなっているだけでなく、「多様なライフスタイル・関心領域を持った生活者が利用しているとはっきり分かること」も、企業が重視しなくてはならない理由のひとつです。
SNSについて、企業で活用する際の主な手法を①アカウント運用 ②広告出稿 ③ソーシャル・リスニング の3手法に分けて、活用目的や得られるものの違いを、何回かにわけて整理・解説します。
今回は①アカウント運用(企業のSNSアカウント運用)について解説します。
最大のメリットは、自由なタイミングでダイレクトに商品・サービスの訴求を何度でも行えることであり、小売り、生産者など業種によっては既存の顧客や潜在顧客に、投稿はもちろん、コメントやDMで接触・アプローチもできることです。2025年にはTikTokのショート動画にショッピングカート機能が付けられ、直接の購買チャネルとなったことを示しています。
企業は多くの利用者にアプローチすることができ、利用者はスマートフォンやPCのインターネットを経由して、SNSからそのままカートや、商品やサービスの紹介ページ、外部の購入・予約サイトに移動できます。そこでは、認知の深化・消費行動の喚起が起こっているのです。
<アカウント運営のメリット・デメリット>
メリット |
デメリット |
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「企業のSNS活用」と聞いて、多くの企業の広報宣伝部門はもちろん、マーケターにおいても公式アカウントの運用を真っ先に思い浮かべるのは、SNSをダイレクトマーケティングの場と捉えた視点によるものです。
昨今はBtoBのビジネス領域でもSNS活用が促進されていますが、背景には、「見てもらいたい相手企業の担当者が、日常生活や業務でSNSを利用しているため(接触時間が長く、目に入りやすい)」というポイントがあります。
その他、担当者の日常シーンの投稿や社会貢献活動の報告、キャラクターを使ったアカウント運用もみられますが、そうしたケースでは消費行動よりも、理解の深化やファンの獲得などブランディングがゴールとなることが多くなっています。
自由度が高い分、自分たちのアカウント運用の目的や、最終的なゴールを見失わないことは重要です。SNS創生期から間もなく20年。利用シーンの多様化にともない、情報・コンテンツの表示アルゴリズムや検索機能のアップデート、生成AIの支援も行われているため、フォロワー数が増えれば成功、と最初に結論づけずに、どのケースにおいても、ゴールを目指す為のKPIをどのように考えるのかは、戦略に大きな影響を与えることになり、慎重に設計する必要があります。
SNSの”バズ”ポイントをまとめた記事は
こちら
身近な娯楽だからこそ、業務に変わると意外と難しいもの
もう1点、30歳以下の若手の社員がアカウント運用担当として配属されやすい状況について触れておくと、先にも述べたように、運用担当者は学生や幼少の頃からプライベートで生活者、消費者の目線で自由にSNSで発信・閲覧していますが、意識や目線を切り替えて、 “中の人”として運用する必要があります。プライベートで、投稿はもちろん、音声・映像の配信経験を持つ担当者も増えていますが、企業や団体の顔・一員としてのアカウント運用経験者は限られ、担当になって意識を持つ必要がでてくることはたくさんあります。
オフの自分たち自身や、一般利用者に、関心を持ってもらえるような企業メッセージを届けるにはどうすれば良いのか。逆に、どのような訴求、アプローチをすると嫌われてしまうのか。
明確な目的があって訪問されることの多い企業ホームページでのメッセージとは異なり、SNSでは娯楽の場としてのコミュニティーになじむことや、文化に「乗っかる」ことも重要であり、従来のビジネススキルとは異なるアプローチが期待されています。ただし、感覚や作法には個人差もあることに加えて、関心の向くままに発信、やり取りを行えば良いプライベートアカウントとは違って、訴求の対象や表現に制約があり、コミュニケーションにも、企業の顔としての対応が求められます。
例えばスポーツに置き換えて考えると分かりやすいと思いますが、異なる競技やポジションでは勝敗・成功の基準、ゴールが変わり、制限もタブーも異なります。切り替えて対応する為には一定の訓練が必要です。好みのSNS利用に偏ったり、独自の「マイルール」で対応してきた生活者も多いことから、若年主体で運用したい場合にも、社内でのディスカッションを行うことも重要で、繰り返し試行錯誤していくことが求められます。

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メリット・デメリットを正しく理解し活用目的に沿った選択を
②広告出稿、③ソーシャル・リスニングについては、別の機会に改めて掘り下げることにしますが、例えばSNS上の広告出稿では、配信設定で関心の高いターゲットに表示を絞り込むことができます。SNSによっては、閲覧者のフォロワーにもシェア・拡散される可能性がある、といったメリットは、検索連動型広告やサイト上のバナー広告にはない魅力といえるでしょう。
そしてSNS上の話題を収集して分析するソーシャル・リスニングは、商品やブランド、イベント、プロモーションなどの反響のボリュームや内容を確認して、効果の定量化や支持要因・課題の把握をもとに、自社の取り組みに反映することができる活用法です。
②③の活用手法では、企業アカウントでコンテンツを運用する必要はありませんが、前者では広告を掲載したSNSに、魅力的なアカウントがあれば認知・フォロワーの獲得も期待できます。後者ではソーシャル・リスニングで発見した仮説をもとに、アカウントで発信する訴求ポイントの改善や手法・メッセージに反映できるなど、相乗効果も見込まれます。
SNSの利用者数の増加が続く中、デジタルネイティブが続々と購買力を増していることもあり、企業規模や認知度、サービス形態に捉われず、SNSの企業活用はいよいよ軽視できなくなっています。生活者との”接点を増やしてアプローチしたい”のか、生活者を”理解してビジネスに取り入れたい”のか。早いタイミングでビジネス上の目的設計を再確認し、アカウント運用か、それ以外の活用法か選定し、必要な準備をすることが大切です。
ディー・フォー・ディー・アール株式会社(D4DR inc.)
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マーケティング視点でのSNS分析の他、未来予測から目の前の課題解決までサポートする、未来共創コンサルティングパートナー「D4DR株式会社」のシニアアナリスト。
ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした生活者のインサイト抽出・提案を得意とする。D4DR 札幌リサーチセンター室長。