中小企業経営者の悩みにアプローチし、課題解決に寄り添う方法とは ツギノジダイ編集長インタビュー

 「中小企業の事業継承」をテーマとしたメディア「ツギノジダイ」。杉本崇編集長に数多くのインタビューから見えた「中小企業経営者が抱える課題」や、登録者5,708人を記録した「日本を変える中小企業リーダーズサミット」(2022年12月開催/次回2023年7月開催予定)をはじめとする課題解決に向けた取り組みについて聞きました。

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中小企業経営者の悩みに応えるメディア「ツギノジダイ」とは

──「ツギノジダイ」はどのようなメディアですか?

 2020年5月にスタートした「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに向けて、事業承継や経営に役立つ情報を届けるサイトです。
 私の出身は、大阪府東大阪市。2022年10月からNHKで放送された連続テレビ小説『舞いあがれ!』の舞台でもある中小企業の街です。実家の隣は、金属加工の工場でしたし、私の父も中小企業の工場長として働いています。

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ツギノジダイ編集長 杉本崇

 就職活動を始めた大学3年のころ、母は父の工場も就職先の一つとして考えてはどうかと私に伝えたのですが、父は「中国との価格競争が厳しく、あと何年続けられるかわからない」と言って断りました。そんなに厳しいのか……とショックを受けたことはいまでも記憶に強く残っています。
 朝日新聞に入社した後、地方で中小企業の経営者に話を聞く機会も多く、後を継ぐ人がいない「後継者不足」という社会課題を目の当たりにしました。優れた技術を持っていても、継いでくれる人がいるとは限りません。

 中小企業庁の安藤久佳長官(当時)は2018年の年頭所感で「今後10年の間に、平均引退年齢である70歳を超える経営者は約245万人となり、このうち約半数の127万人が後継者未定です」と訴えました。127万人の経営者とは日本企業全体の1/3に相当する規模です。このまま何も手を打てなければ、休廃業がさらに増え、地域経済や雇用という社会の基盤が崩れかねません。「社会課題の解決の一助となりたい」、そんな思いからツギノジダイを立ち上げました。 

なぜ「ツギノジダイ」は中小企業経営者に支持されるのか

──実績や手応え、これまでの運営でおこなってきた様々な取り組みなどを教えてください。

 ツギノジダイは毎月100万~200万PVほど、会員は1万人を超えたところですが、数字だけでは測れない成果も生まれています。経営者の課題解決の過程を紹介するインタビュー記事は、Yahoo!ニュースの総合ランキングで何度も1位になっており、SNSではコア読者である中小企業の後継ぎたちが記事を読んで感想を投稿してくれています。
 たとえば、2023年3月にランキング1位となったのは、金属のものづくりの一大産地「燕三条」で、1970年からバレル研磨業を営む東商技研工業(新潟県燕市)です。2代目社長は娘婿。「先輩から見て学べ」が当たり前だった職人の世界で、「作業手順書でやり方を可視化していく」といった改善する様子を記事で紹介しました。そんな姿に共感する声がたくさん寄せられました。記事を通してこうしたやりとりを重ねるなかで、会社を変えたいと熱意を持っている後継ぎたちの背中を押せていると感じています。

 ──よく読まれる記事カテゴリーはありますか?

 インタビューは、ツギノジダイの看板記事ですが、読まれる記事はほかにもあります。たとえば、税制や働き方など次々と変わる法律や制度をきちんと把握することは専門の担当者がいない中小企業にとって大変なことです。
 そこで、ツギノジダイは中小企業に関係の深い法改正や制度改正を記事で紹介しています。SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)の面でも高く評価されており、経営に関する数百ものキーワードは、Google検索上位に掲載されています。無料会員が読むことのできる専門家の解説も人気です。

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──ツギノジダイが掲げているミッションやユーザーへの約束はありますか?

 ツギノジダイはサイト開設当初から「後継者の決意醸成と生産性改革の両輪で中小企業の新たな挑戦を応援する」をミッションに掲げてきました。
 中小企業の経営者も後継者も、経営にまつわる様々な悩みを持っています。将来の経営の見通しがたたないうちは、事業承継は簡単には進みません。だからこそ、ツギノジダイは、同じような立場の経営者・後継者が、似たような課題をどのように解決してきたのか、課題に向き合う挑戦をするときに、補助金・助成金も含めてどんな制度を活用すればより取り組みを加速できるかを紹介し続けています。
 ツギノジダイは記事(テキスト)が中心ですが、ライフスタイルが多様化するなかでそれだけで読まれ続けるとは考えていません。YouTubeで動画を配信したり、Podcastでニューストレンドを解説したり、私たちも挑戦を続けています。

中小企業経営者が抱える課題とは

──ツギノジダイを運営する中で見えてきた具体的な課題について教えてください

 中小企業は、大企業と比べてヒト・モノ・カネが不足しています。いろんなリソースが不足しているので、悩みは尽きないのが本当のところですが、よく耳にする代表的な悩みを5つ紹介しましょう。

中小企業の課題①採用難による深刻な人材不足

 働き手が少なくなるなか、地方の中小企業の大きな悩みの一つが、人手不足です。もう少し詳しく調べていくと、「事務」とうたった求人には、応募が集まりやすいのですが、製造現場など現場作業のある仕事は集まらないといった偏りが見えてきます。
 コロナ禍で帰国せざるを得なくなった外国人労働者も戻りつつありますが、現場の手が足りない状況は続いています。ほかにも、面接まで進んだ応募者が当日来ない、入社しても長続きしないという悩みはよく耳にします。

──「ツギノジダイ」ができることはありますか?

 日本全体として労働者が減っており、人手不足が解消することは難しいでしょう。それでも、それぞれの会社が採用や育成を工夫しています。そんな事例を日々伝えています。
 たとえば、左官職人の世界は「見て覚える」のが基本で、長い下積み期間を乗り越えてこそ一人前という考えがあったといいますが、東京都文京区の原田左官工業所は、「若手が定着しない原因がこうした教育方法にあるのでは」と考えました。そこで、ベテラン職人の塗り姿を真似して覚える「モデリング」と呼ばれる人材育成システムを採用しました。こうした取り組みが、若手の定着率の向上に寄与しているようです。

中小企業の課題②事業継承

──中小企業が抱える事業承継の問題はどのようにとらえていますか?

 事業承継は、現社長や従業員との関係、株の問題、個人保証など様々な問題が指摘されていますが、後継者が事業承継をためらうのは、やはり売り上げが右肩下がりになり、将来の事業継続が見通せない点が一番大きいと思います。
 もちろん、後継者不在による黒字廃業も社会問題の一つです。ただし、きちんと利益を生み出しているのであれば、M&Aを検討することもできます。
 一方、地方の中核企業でも十分な利益を生み出せていない、赤字のケースがあります。会社の負債を抱え、さらに事業成長が見通せない場合は事業承継をためらうのも無理はありません。売り上げを伸ばし、きちんと利益を生み出せる体質づくりが大切です。
 生産性の低い企業は市場から退場し、新陳代謝を高めるべきだという意見もありますが、地方において中核企業が廃業してしまうと、地域の人たちの雇用の場が失われてしまいます。地方では、新しい企業が進出してくることは簡単なことではありません。地域の活力を失わないためにも、今の企業が売り上げを伸ばせる素地を作ったうえで、若い経営者へ引き継ぐことが重要だと思います。
 政府の中小企業白書で、経営者が若い企業ほど増収の割合が増加することが分かっています。スタートアップに限らず、中小企業の若手経営者の挑戦も応援する社会であってほしいですね。

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中小企業経営者が抱える課題に沿った記事カテゴリー

 中小企業の課題③進まないDX

 中小企業ではDX、それの前段階であるデジタル化もなかなか進まないという声を聞きます。デジタルツールになじみのない中高年のスタッフも少なくありません。また、デジタルツールをなぜ導入するのか、現場にどんな課題があるのかをはっきりさせないまま進めようとして混乱を招くケースも耳にします。ツールを導入して新しく覚えることが増えたのに業務は減らない、ツール利用料の負担だけが重くなったというのは避けたいですね。

──DX導入をうまく進めた事例があれば教えてください

 まず、デジタルツールを使うことは手段であって、目的ではありません。鳥取県の不動産会社「ウチダレック」は、いきなりITツールを取り入れるところから始めたわけではありませんでした。現在どんなシステムが入っており、エクセルや紙で対応している業務は……。そんな業務プロセスの分析から始めたといいます。
 そのうえで、数字をもとに業務改善を始めました。不動産業界の定休日は水曜日が多いのですが、調べてみると実際の来店数が少なかったのは月曜日と金曜日でした。現場にヒアリングすると、休み明けの月曜日は電話の問い合わせが多いため、金曜日を定休日に決めたそうです。また、物件情報を店舗のガラスにペタペタ張る慣習も、「スマホで調べてくるので使われていない」と考えやめることにしました。社内から反対意見がありましたが、慣習をやめた前後で成約率を調べると逆に2%上がっていることがわかったといいます。

 自社の課題解決のために開発したツールを使って、同業他社の課題も解決しようと新規事業を立ち上げている企業も増えています。
 福岡県鞍手町にある外壁塗装専門店は、塗料の残量をリアルタイムに把握できないことや、無駄な在庫を抱えがちなことに、長年頭を悩ませていました。問題を解決するために社長が考えたのは、オリジナルの在庫管理システムを開発・導入することでした。これによって、自社の課題を解決したばかりか、ほかの会社にも使ってもらい売上アップも実現したのです。

 中小企業の課題④脱炭素(カーボンニュートラル)やSDGsへの対応

──社会的に関心の高い脱炭素やSDGsについてはどのような課題がありますか

 正直なところ、現時点では将来に向けて関心はあるものの、今期の経営には直結しないと受け止めている経営者が多いです。
 ただし、脱炭素は、単にソーシャルグッド(Social Good)な取り組みではありません。グローバル企業と取引のある企業はCO2排出量の削減をすでに求められていますし、電気代・ガス代が高騰するなかでは、固定費の削減につながります。
 トヨタ自動車のサプライヤーとして、自動車部品の製造を手がける旭鉄工(愛知県碧南市)3代目社長の木村哲也さんは、生産ラインのデータを「見える化」するツールを開発。
 電気代やCO2排出量の可視化にもつながっており、i Smart Technologiesという会社を立ち上げて他社に提供しています。工場見学の申し込みが絶えないと聞いています。

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中小企業経営者・後継者が、課題をどのように解決してきたのか、具体的な挑戦を描く記事

 SDGsについても地域や消費者との接点になっている事例を紹介してきました。アパレル産地・岐阜県関市にある「大映ミシン」は仕入れ先の廃業で、中古ミシンの入手が難しくなっていました。そこで始めたのがSDGs視点の「寄付ミシンプロジェクト」です。使わなくなった家庭用ミシンや足踏みミシンを寄付してもらい、大映ミシンでメンテナンスした後で中古ミシンとして販売。売り上げの一部で社会貢献活動を支援するプロジェクトを立ち上げています。

中小企業の課題⑤資金調達や助成金

──中小企業の資金調達や補助金・助成金への関心は高いのでしょうか?

  コロナ禍ではとくに資金繰りに悩む中小企業が多かったです。そのため、国のいわゆるゼロゼロ融資など活用できる制度を積極的に発信してきました。事業再構築補助金をはじめ、様々な新制度が発表され、非常に多くの経営者に読まれました。
 ただし、最も大切なことは、経営者がきちんと数字を把握していることです。数字をきちんとまとめると、思いもしなかったムダな経費が見つかることはよくあることです。しっかりした経営計画を作れば、金融機関の信用も得やすくなります。
 補助金や助成金は成長に向けた投資のために活用するのは良いことですが、補助金・助成金ありきの経営になってしまうと経営が続かなくなります。「簡単に補助金が申請できる」と経営者を勧誘し、法外な手数料を取る業者のことも聞いており、十分に注意してほしいと思います。

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中小企業にアプローチしたいクライアントの理解促進やリード獲得を狙う手法とは

 これら中小企業の悩みの中には、共に伴走してくれるパートナーを紹介することで解決できるものもあるのではないか。「ツギノジダイ」の事業推進を担当する高橋克己は次のように語ります。

中小企業サイト運営で培ってきた編集力で提供するタイアップ広告

──ツギノジダイでは、中小企業経営者の課題解決に向けた「スポンサー特集」や「タイアップ広告」を展開されています。どういった業種のクライアントや事例が多いのでしょうか?

 サイトローンチのタイミングがコロナ禍と重なったこともあり、当初は企業のDX化やリモートワークを後押しするような商品・サービスが多かったです。最近では、経営者向け保険サービスの紹介や男性育児休業の啓発、脱炭素経営に貢献するOA機器の訴求など、より多様な業種のクライアントから引き合いをもらっています。

 ──そんな中でも、特にクライアントとの共創がうまくいった手応えのあるタイアップ事例を教えてください。

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ツギノジダイ事業推進担当 高橋克己

 2022年10月に掲載した「明治」の事例が挙げられます。「健康経営」に取り組む中小企業3社に、明治プロビオヨーグルトLG21を1ヵ月間お試しいただくというモニター型の企画です。

 ツギノジダイのタイアップ記事では、モニター実施前後のアンケート結果や実施中の各企業の様子などを掲載しました。タイアップ記事の公開と同日に紙面広告も展開し、クロスメディアで明治の商品を訴求することができました。「中小企業経営者に向けたメディア」と「食品メーカー」はあまり馴染みがないと思われるかもしれませんが、「健康経営」などの切り口によっては十分可能性があると私自身も気づかされました。また、中小企業の皆さまに訴求したい具体的な商品やサービスが既に念頭にあるクライアントに対しては、今回のようなモニター企画もご提案できると考えています。

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2022年10月13日付 朝刊 全15段

登録者5,708人を記録した中小企業向けイベントを実現

 ──ツギノジダイは、タイアップ以外にイベント事業にも力を入れていますよね。特に、2022年12月に開催した「日本を変える中小企業リーダーズサミット」は大きな反響があったと聞いています。

 ツギノジダイとSansanが提供するキャリアプロフィールサービス「Eight」が共催する、中小企業の課題解決に特化したイベントです。
 ツギノジダイの取材活動の過程で、「DX」や「人材不足」など、中小企業に共通するいくつかの課題が見られました。各界の著名人や専門家、クライアントを集め、中小企業の課題をまとめて解決に導くイベントを育てていきたいとの思いから企画をスタートしました。

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中小企業経営者の悩みに応えるメディア
ツギノジダイ

次世代を担う若手のビジネスパーソンを中心としたユーザーデータの紹介やよく読まれている記事、タイアップメニュー一覧などを説明しています。

──初回の結果や手ごたえ、苦労した点は?

 初回はコロナ禍ということもあり、完全オンラインで実施しました。おかげさまで5,700人超の方にご視聴いただき、中小企業向けのオンラインイベントとしては日本最大級の集客を達成することができました。
 豪華な出演者や視聴者の役に立つ講演内容、登壇者とオンライン上で名刺交換できる仕組みもあり、事後アンケートでも85%以上の方が「満足」、「非常に満足」と答えてもらいました。
 参加者属性を見てみると、部長職以上の方の占める割合が約6割で、イベント名のとおり、中小企業のリーダーたちを集めることもできました。オンラインということで、首都圏以外の方が全国各地から参加できた点もよかったです。

 苦労した点としては、初の試みということもあり、クライアントにとってイメージが湧きにくかった部分があったのか、当初は募集が思うように進みませんでした。最終的には1回のイベントで多くのリードが獲得できる価値や、中小企業経営者にアプローチできる大規模イベントが他にないこともあり、全セクションで協賛企業に参加いただくことができました。

 ──最後に、クライアントに向けたメッセージがあればお願いします。

 ツギノジダイを運営する軸として、「中小企業の若手経営層に役立つ情報・気づき・出会いを提供する」というものがあります。これは広告案件も同じです。逆に言えば、この軸にさえ沿っていれば、業種や商品は問いません。事例としてご紹介した健康経営や脱炭素経営の他にも、M&AやD&Iなど、これから中小企業が避けては通れないテーマもたくさんあります。

 ツギノジダイは、朝日新聞グループの中では数少ないBtoB媒体です。「一緒にこんなことできませんか?」といったご相談はいつでもお待ちしております。2023年7月に開催予定の「日本を変える中小企業リーダーズサミット2023」は、前回よりスケールアップした3日間開催とし、「働く環境」や「リスクマネジメント」といった新たなセッションも追加しました。ご協賛のお問い合わせをお待ちしています。

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杉本崇(すぎもと・たかし)

ツギノジダイ編集長

1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。事件のほか、医療と科学技術分野を中心に取材を続けてきた。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。