朝日新聞社とハフポスト日本版が新たにDE&Iプロジェクトをスタート

 世界経済フォーラム(WEF)が6月、2024年のジェンダーギャップ(男女格差)指数を発表した。日本の男女平等達成率は146カ国中118位と前年の125位から持ち直した一方、低い順位にとどまった。ダイバーシティが経営戦略視点で語られることが増えてきたにも関わらず、ジェンダー平等の実現には高いハードルが残る。こうした状況に向き合うべく、朝日新聞社がハフポストとタッグを組み「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)プロジェクト」を立ち上げた。なぜ今、「DE&I」をテーマに掲げるのか。プロジェクトに携わる、朝日新聞社の小林篤弘プロデューサーとハフポスト日本版の編集長・泉谷由梨子氏に経緯と狙いを聞いた。
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経営戦略でも重視されるDE&I  ムーブメントの起点に

 「DE&Iプロジェクト」は、20249月の「SDGs週間(GLOBAL GOALS WEEK)」から202538日の国際女性デーまで長期にわたっての取り組みだ。

 プロジェクトに冠した「DE&I」はDiversity(多様性)、Equity(公平性・公正性)、Inclusion(包括性)の頭文字を取ったものだ。「多様性」を「包括」し、それぞれに「公平」な制度や仕組みを用意することで、性別や年齢、人種や嗜好、障がいなど個々の違いを受け入れ、認め合いながら成長できる組織作りを目指すことを指す。

 経営にこの視点を採り入れる企業は増えている。朝日新聞社もその一つだ。

 2020年に「ジェンダー平等宣言」を制定・公表し、管理職における女性比率など、宣言の達成度を定期的に点検・公表するなど報道・課題提起に留まらない形で取り組んでいる。報道機関としても長年、ジェンダー視点で経済や政治、文化など社会課題を指摘する報道を続けている。

 2024年38日の国際女性デーでは、140年を超える歴史の中で初めて朝刊の題字を、国際女性デーの象徴であるミモザで飾り、ジェンダー問題に本気で取り組んでいく意思を表明した。

 新聞紙面ではジェンダー問題を多角的に捉える記事を複数の面で取り上げ、朝日新聞デジタルの特設ページでも「ここから知るジェンダー」という、「入り口」となる言葉やできごとを紹介する記事を展開。広告でもジェンダー平等をテーマにした広告が多く掲出され、ジェンダー問題を考える契機をつくり出した。

コーポ転載 38ミモザ題字

広告朝日記事_朝日新聞社 ジェンダー平等の取り組み

朝日新聞の題字がミモザになった理由 創刊以来、初の試み

 プロジェクトを担当する小林篤弘プロデューサーは「今回の報道や、広告施策には大きな反響が寄せられました。この反響をより大きな物にしたい、その思いがDE&Iプロジェクトの出発点です」と説明する。

 「DE&Iの実践は企業にも、個人にも大きなメリットがある」と小林氏は話す。

 「企業にとってはイノベーションの促進や従業員エンゲージメントの向上、優秀な人材の確保と維持、企業ブランド価値の向上が注目されています。この変化は個人にも自己成長とキャリアの機会拡大や、エンゲージメントと心理的安全性をもたらします。

 朝日新聞社が2020年に出したジェンダー平等宣言も、社員の中から声が上がって実現したものです。まだ課題は残っていますが、社内の雰囲気は大きく変化しています。この変化を社会全体に広げたい」と語った。

PL小林さん 小林篤弘プロデューサー

ハフポストとともにDE&Iの視点を日々の生活に実装

 プロジェクトをともに進めるのはウェブメディアの「ハフポスト日本版」。ビジネスパーソンをターゲットにグローバルニュースから個人が注目する社会課題まで幅広いコンテンツを提供する。

  2016年に匿名ブログ「保育園落ちた」が訴えた待機児童問題報道をリードし、SNSで議論を巻き起こした結果、20216月の「改正育児・介護休業法」成立の実現の一助となった。

  ハフポスト日本版の編集長・泉谷由梨子氏は「経営視点でDE&Iが語られ始めましたが、それが日々の生活に実装されていると感じづらい人も少なくないはず」と語る。

ハフポスト泉谷さん 泉谷由梨子編集長

 昨年10周年を迎えたハフポストは、創業当初からDE&Iを三つの柱の一つに掲げてきた。泉谷氏は朝日新聞社に対しても「DE&Iに関して手厚く扱っているとみていました。今年も新聞社の中では一番DE&Iを取り上げている数が多かったと記憶しています」と評価する。

 「DE&Iをもっともっと前に進めるためには経営視点の取り組みと、一般の人々、働く個人の文化や価値観のアップデートの両方が必要です」と話す。

 「私たちは課題やビジョン、先進事例などの報道に加えて、企業の担当者レベルの皆さんとコミュニティを構築し、実際に社会を変えていく一歩一歩を共に歩むことを目指して、このプロジェクトをスタートしました」

DE&Iプロジェクト  初年度のテーマは「男女賃金格差」「女性とキャリア」

 2024年9月のSDGs週間(GLOBAL GOALS WEEK)」では、外資系企業でCEOを務める有識者の特別講演や、朝日新聞社とハフポストの記者がコーディネートするパネルディスカッションが行われるキックオフイベントを開催する。

 初年度となる今回は、朝日新聞社は2024年の国際女性デーにおける報道で朝刊1面を飾り反響が最も大きかった「男女賃金格差」、ハフポストは「女性とキャリア」をテーマに掲げる。

 課題提起だけに留まらぬよう、キックオフイベント後にも解決策を考える小規模対話型イベント「ラウンドテーブル」を複数回にわたって開く。外部の有識者を招いて課題解決の糸口になる議論を展開し、社会全体で行動変容の機運とエンゲージメントを高めるための「未来像」を製作するという。これらの議論は朝日新聞の紙面やハフポストのデジタル媒体で発信していく。

  泉谷氏は「プロジェクトでは会話を大切にしたい。賃金格差やキャリアは一見、難しいテーマですが、私たちの日常です。日常についての会話を増やしていくことで、それぞれに適合するソリューションを考え、ボトムアップ型で社会に風を起こしたい」

朝日新聞&ハフポストがタッグを組む強みとは?

 小林氏は朝日新聞社とハフポストの連携でこれまでにないムーブメントが生まれると期待する。

「朝日新聞社は社会の大きな議論や仕組み、システムの話になった時、伝える力がある。ハフポストは感度の高い人たちと向き合ってきて、常に半歩先を行っている。

 今回のプロジェクトではそれぞれの強みをつなげることで、感度の高い人たちや企業とのつながりを生みだし、大きな議論にしていけると考えています」

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