「広告主参加の部」の中間講評では、1点の作品に審査委員の評価が集中。結果、Appleのシリーズ広告が最高賞に輝いた。
朝日広告賞
Apple
World Gallery 4点シリーズ
「“平熱感”がよかった。これからの報道写真がどうなるのかという議論も含めて静かな波紋を呼んでいる広告だと思う」(原研哉氏)
「新聞をめくってこの紙面に出合い、グッときた人は多かったと思う」(前田知巳氏)
「『iPhone6で撮影』という言葉がすべてを語っている。ビッグフォトは非常にオーソドックスでベーシック。その根底にヒューマンな匂いが漂っているところが何ともいえない。デジタルの最先端にいるiPhoneが新聞広告というアナログの紙メディアで十分に効果を発揮した」(中島祥文氏)
「スマホは都会で使ったり、近い距離で友達同士を写したりというイメージがあるが、旅してみたくなるような場所や、大自然の中で撮った写真を展開しているところに“抜け感”があって、すごくシャレている」(タナカノリユキ氏)
「スマートフォンなのに写真にフォーカスしてキャンペーンを組み、ウェブサイトや街のビルボードでも写真が見られるというキャンペーンはもちろんすばらしい。ただ、新聞広告でやる意味があるのだろうかと個人的には思った」(佐藤可士和氏)
「アップルは、『客』ではなく『ユーザー』に向けてメッセージを発信している。『あなたと私たちは同じ場所で物を見ているんですよ』というポジショニングからワールドワイドに今回のような展開をされてしまうと、日本のキャンペーンでは太刀打ちできないという気がする。“してやられている感”があって悔しいが、このキャンペーンは企画も制作物も断トツだった。新聞広告に出すことによって“真打ち登場”的な効果があったと思う」(川口清勝氏)
「圧倒的にすばらしいと思った。このキャンペーンを初めて見たのが新聞広告だったが、キャッチフレーズやコピーの概念を飛び越えた『iPhone6で撮影』という言葉や、ありそうでなさそうな写真の“中距離感”が新鮮で、30段を目にした時の衝撃はとても大きかった。新しいビジュアルが出るたびに、何でこういう写真を選んだんだろうと思わされて、自分はスマートフォンはあまり好きではないが、『やられたな』という感じがした」(葛西薫氏)
「圧倒的に写真がきれいで、『何だろう、この広告は』と思って目を写すと『iPhone6で撮影』とあって、『あっ、なるほど』となる。うまい作りだった」(恩藏直人氏)
「ほとんどの審査委員がこの作品を支持していて、『やっぱいいいものはいいんだな』と思った。何がいいのかと考えると、プロが作り込んでいながら“素人発”のように見せている広告が多い中、そういう匂いがしないからではないか。写真の選び方がリアルで、『自分に近い』と感じさせる。雑誌の大きさだと普通だったと思うが、新聞30段の大きな紙面で見られたのはとてもよかった」(大宮エリー氏)
「『新聞でどこまで世の中を変えられるか』という視点でいうと、すばらしいキャンペーンだと思う。ただ、写真としていいのは鹿の写真だけで、他については、もっといい写真が撮れたのではないかと思った」(浅葉克己氏)
準朝日広告賞
東日本旅客鉄道
ウフフ!北陸新幹線
「ウフフ!ほ~くりくしんかんせん♪」というテレビCMの歌のトーンを新聞広告にサラッと入れ込んでいる感じ、力が抜けている感じがいい」(原氏)
「人の気配を感じさせるイラストが北陸の楽しさを伝えている」(中島氏)
「北陸新幹線開通のニュースがテレビで絶えず流れていた日にこの紙面を見て、びっくりした。ニュースでは新幹線の映像が映し出されていたが、新聞広告はイラストのみ。その思い切りの良さとニュースとの兼ね合いがとてもよくて、新鮮に感じた」(佐藤氏)
「タレントを起用したディスティネーションキャンペーンと、イラスト表現による開業告知キャンペーンの使い分けが秀逸なキャンペーンだった」(川口氏)
パルコ
PARCOシーズンキャンペーン Lily, from Solstice to Solstice 2点シリーズ
「得体(えたい)の知れないビジュアルが記憶に残る。昔のいい時代のパルコを思い出させる」(タナカ氏)
「フランスで人気のある『M/M(Paris)』という2人組のアーティストを起用したキャンペーンに、パルコの新しい動きを感じる。新聞広告にもそれが反映されたのがうれしい」(浅葉氏)
資生堂
企業
「制作のトライの仕方がとても面白いと思った。レディー・ガガのセルフィー(自分撮り)の1/50という切り口も良かった」(中島氏)
「今までの資生堂にない巨大なロゴとレディー・ガガのセルフィーの組み合わせは、どこか暴力的な感じがしないでもないし、キャンペーンの仕組みは自分の好みではないが、インパクトはあったと思う」(葛西氏)