髙橋真梨子は「高級ウイスキー」 山崎ナオコーラさんの小説連載企画に称賛

 第62回(2013年度)朝日広告賞「広告主参加の部」のグランプリは、JVCケンウッド・ビクターエンタテインメントが受賞した。髙橋真梨子のデビュー40周年記念アルバム「髙橋40年」の発売に向け、昨年5月29日から6月4日にかけて5回にわたって山崎ナオコーラさんの書き下ろし小説を掲載。6月5日のアルバム発売当日の朝刊と夕刊でそれぞれ全15段広告を展開した。

ベストアルバム「髙橋40年」の発売日をめがけて読み切り短編を連載

 広告制作を担当したのは、電通 第3CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター兼コピーライターの神山浩之氏。コピーを担当した神山氏は、アルバムの曲を聞きこむことから始めた。

神山浩之氏 神山浩之氏

「髙橋さんは、歌の中で男性のことを『貴方(あなた)』と呼ぶ。そこに男性のことを『キミ』と呼ぶ最近の歌にはない深さと濃さを感じ、聞いているうちに酒に酔っているような気分になりました。それも甘いカクテルやチューハイのような若者が飲む酒でなく、苦みと深みのわかる大人が飲む年代物のウイスキー。ベストアルバムだからブレンデッドウイスキーで、デビュー40周年だから40年ものの高級ウイスキーだなと」

 こうして生まれたのが、「髙橋40年」というアルバムタイトルだ。この案に広告主も髙橋真梨子氏も賛同した。さらに神山氏は、髙橋真梨子のファン層の中心は50代、60代で、新聞を読む世代なので、新聞の強みや特性を生かした企画提案をした。

 「発売当日に店頭に足を運んでもらえるような仕掛けを新聞広告で展開したらどうか、『新聞小説』の体裁にしてカウントダウンをしたら面白いのではないか、朝日新聞の作家人脈を活用できないか……。そんなふうに企画を詰めて提案しました。同社は社名の通りエンターテインメント精神を持った会社なので、面白いと言ってくれました。結果的に朝日新聞の協力を得て、髙橋真梨子さんの世界観を表現していただけそうな山崎ナオコーラさんに執筆をお願いしました。山崎さんには、『髙橋真梨子=ウイスキー』というコンセプトと『髙橋40年』というタイトルだけお伝えして、あとは自由に書いていただきました」

 小説は毎回が読み切りの短編で、どの回から読んでも楽しめる。挿絵イラストは、アルバムパッケージをデザインしたクリエーターが担当した。パッケージはウイスキーのイメージに寄せなかったので、挿絵イラストでウイスキーを印象づけたという。

広告主の部 朝日広告賞 グランプリ JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント 全7点シリーズ

2013年5月29日付 夕刊 全2段

2013年5月29日付 夕刊 全2段

2013年5月30日付 夕刊 全2段 2013年5月30日付 夕刊 全2段
2013年5月31日付 夕刊 全2段 2013年5月31日付 夕刊 全2段
2013年6月1日付 夕刊 全2段 2013年6月1日付 夕刊 全2段
2013年6月4日付 夕刊 全2段 2013年6月4日付 夕刊 全2段
2013年6月5日付 朝刊 全15段 2013年6月5日付 朝刊 全15段
2013年6月5日付 夕刊 全15段 2013年6月5日付 夕刊 全15段

小説の体裁やカウントダウンの仕組みがかみ合い、アルバムはヒット

 発売当日は、朝刊と夕刊で「髙橋真梨子は、ウイスキーである。」のコピーを展開。「広告主ではなく第三者が言ってこそ説得力がある」との理由から、連載を担当した山崎ナオコーラさんの語り言葉にした。夕刊には山崎さんの手書きのサインも入れた。アルバムの売れ行きは好調で、チャートの上位に。息の長いヒットも期待されている。神山氏は改めてキャンペーンをこう振り返る。「このキャンペーンは、新聞社の協力による作家の起用、発売日をめがけたカウントダウン、新聞小説の体裁の広告と、あらゆることがコンセプトにうまくはまりました」

 さらに神山氏はこう語った。 「クライアント企業の受賞にクリエーターとして貢献できたことが何よりうれしいです。特にこのキャンペーンは仕組みから考えたので喜びは格別です。朝日広告賞は、若い頃に入選した経験がありますが、グランプリは遠い存在でした。受賞者はあくまでJVCケンウッド・ビクターエンタテインメントですが、私にとっても最高の栄誉です」

 今回の受賞について、JVCケンウッド・ビクターエンタテインメントは、 「歌はアーティストのものであると同時に、年月を経て、やがてリスナーのものとなっていきます。聞く人それぞれの楽曲への思いが、それぞれの人生の歴史とともに積み重なり、いわば熟成されていくのではないでしょうか。今、朝日新聞では夏目漱石の『こころ』が、初連載からちょうど100年ということで再掲載され、話題を呼んでいますが、そんな新聞小説の歴史に、ささやかながら花を添えられたと思っています」と述べている。