【朝日広告賞】
東京エレクトロン
〈企業広告〉66点シリーズ
企画/同社、博報堂 制作/朝日新聞社、アドレイ
「最初は、一見してビジュアルに強さのある広告に目が行っていたが、最終的にはこの広告に一番ひかれた。パッと見て『どんな会社だろう』と興味がわいたし、小型枠でもこんなにスケールの大きいことができるのかとびっくりした。毎回テレビ欄の同じ場所に出稿され、『次はどんなものかな』という期待感や、『今日は出ているな』という安心感など、新聞を読む楽しさにつながった広告。手元に取っておける広告は、テレビCMもラジオCMも作れないので、新聞らしさという意味でも評価できる。自分は理系だったにもかかわらず化学が大嫌いだったが、こういう面白い小型広告があったら親子で楽しめただろう。こんな広告ばかりだったらいいのにな、と思った」(大宮エリー氏)
「東京エレクトロンという、なかなか説明しにくい会社のことを、元素記号を使ってうまく伝えていた」(日比野克彦氏)
「一度ハマると最後までやってしまうコレクション的な効果があったと思う。これは、子どもだけでなく、大人も自分の記憶を再確認するために切り抜いて楽しんだのではないか。切り抜くのを忘れた人のために、途中で7段広告を出して補足したのもよかった」(弘兼憲史氏)
「新しいことにチャレンジしようという姿勢が見られ、楽しませてくれた」(岡田直也氏)
朝刊 テレビ面小型 元素記号シリーズより一部抜粋
【準朝日広告賞】
第一生命保険
〈マウリッツハイス美術館展「紙上美術館」〉
企画・制作/博報堂
「ふだん新聞広告を見るのが大好きなので、初めての審査会を楽しみにしていた。自分が何かプロジェクトを動かす時、一緒に仕事をするクリエーターは、新聞15段や30段を出すと言えばすごく興奮する。ただ、新聞は本当に効くのか、コスト的に見合うのか、ということを、プロジェクトの予算を預かる立場として考えることが多いのも事実。そういう意味で『なるほど、こういう使い方ができるんだったら、新聞広告は効くだろうな』というものを評価したいと思った。この広告は、まさに新聞の可能性を広げるような提案だったと思う」(小山薫堂氏)
「今の時代は、新聞広告だけで何かを伝えるというのは難しくなっていると思う。したがって、新聞がネットなど他のメディアとどのようにかかわっているのかという、メディア同士の組み合わせで見ていかないと評価しにくいところもある。加えて、良い悪いは別にして、新聞広告がより力を持つためには、ソーシャルメディアなどを相当意識しなければいけないと思う。その時、完成度が高い新聞広告というのは、ソーシャル上で話題になりにくく、逆に未完成な部分、いわゆる突っ込みどころがあると、話題になったりする。今はちょうど、新聞広告の表現が変わっていく境目のような気がする。そこで自分としては、『この新聞広告を見てフェイスブックやツイッターに書き込みをしたいと思うか』という視点で審査した。この広告は、表現としてどうなのかというところもあるが、思わずソーシャルに書き込みたくなる要素を持った広告の一つだった」(佐藤尚之氏)
ホクレン農業協同組合連合会
〈企業広告〉2点シリーズ
企画/同会 制作/電通北海道、イザ
「今回は、クラフト的な視点で新聞広告の特性を見直し、何か面白いことができるのではないかという試みがいくつか見られた。中でもこのアイデアは非常に面白かった」(林真理子氏)
宝島社
〈企業広告〉
企画/電通 制作/ジェ・シー・スパーク、GEEK PICTURES
「新聞広告を隅から隅まで見ている人というのはほとんどいないと思う。それをふまえ、新聞をパッと開いた時にどういう状況だったら目を留めてもらえるかということが計算できていないとダメだと思う。この広告は、それができていた。朝日広告賞では常連の広告主だが、やはり今回も力があった」(川口清勝氏)
【部門賞】
くらし部門賞
ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク
〈「ティファニーとともに幸せな週末を」シリーズ〉9点シリーズ
企画・制作/博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、朝日新聞社
食品・飲料部門賞
味の素
〈調味料群〉
企画/電通、制作/電通、たき工房、トーン・アップ、イメージ・ラボ、レブロン
出版部門賞
集英社
〈SPUR 2月号「SPUR×JOJO」〉8点シリーズ
企画・制作/ 博報堂
電機・情報通信部門賞
日立製作所
〈企業広告「Innovation from JAPAN」〉
企画/電通、制作/電通、ジェ・シー・スパーク
不動産・金融部門賞
日本霊廟
〈「ひかり陵苑」完成告知広告〉
企画/同社 制作/ 電通
自動車関連部門賞
アウディ ジャパン
〈企業広告〉
企画/同社 制作/電通
教育・公共部門賞
37の企業・大学・医療機関
〈マクドナルドハウスを名大病院へ建設するための募金告知〉
企画/電通中部支社 制作/ オープンエンズ
エネルギー・産業部門賞
パナソニック
〈人工光合成技術〉
企画/パナソニック、クリエイターズグループMAC 制作/クリエイターズグループMAC
運輸・サービス部門賞
東日本旅客鉄道
〈東京駅丸の内駅舎保存復原〉2点シリーズ
企画/ジェイアール東日本企画 制作/ジェイアール東日本企画、キラメキ
流通・エンターテインメント部門賞
吉本興業
〈企業メッセージ広告〉
企画・制作/電通、バッテリー
小型広告賞
スター・チャンネル
〈今月の名台詞シリーズVol.1~15〉15点シリーズ
企画/同社 制作/東北新社、モノタイプ
森永乳業
〈「森永乳業ビヒダスヨーグルト」〉5点シリーズ
企画/森永乳業、朝日新聞社 制作/朝日新聞社、アドレイ
【朝日新聞特別賞】
◇パナソニック
〈LED EVERLEDS〉2点シリーズ
企画/パナソニック 制作/博報堂、中野直樹広告事務所、丸山屋
◇三菱商事
〈Global Now〉12点シリーズ
企画/三菱商事、朝日新聞社 制作/朝日新聞社、アドレイ
◇明治
〈ロンドンオリンピックキャンペーン〉17点シリーズ
企画/ 明治、電通 制作/アドレイ
総評
「雑誌広告の審査経験があるので、それとの違いを意識しながら審査した。雑誌は写真がきれいに再現されるので、どちらかというと芸術的な側面が強調される。それに対して新聞、特に朝日新聞の特徴かもしれないが、文化的、教育的なメッセージが多いと感じた」(恩藏直人氏)
「長年審査をしているが、今回は、新聞を立体的に見せていく提案がたくさん見られて面白かった。表現も、真面目なものから、バカバカしく抜けたものまで幅広くあって、新聞広告の可能性はまだまだあると感じられた」(浅葉克己氏)
「審査していて楽しかった。変型の紙面など、新聞広告の新しい方向性を探るトライアルがあたり前になってきていることを歓迎したい。今、新聞を読む人が減っていると言われているが、裏を返せば、わざわざ新聞を選んで読んでいる人がいるということ。そういう読者は、記事や広告に対して、表面的ではない、より深いものを求めている。そのニーズを察知してか、キャッチフレーズで勝負するような広告よりも、ボディーコピーで何かしらのストーリーを語ったり、新しい概念を打ち出したりする広告が目立った気がする」(中島祥文氏)
「震災後、新聞広告は急にトーンダウンして、地球のために、日本のために、社会のために、家族のために、といった大義名分を背負ったメッセージが増えていた。しかし、昨年度はそうしたムードが一掃され、それぞれがそれぞれの方向を見てメッセージを発信していて、見ていて心地よかった」(岡田氏)
「外資系のラグジュアリーブランドの広告が少ないのは少しさみしかった。出版広告の力作が少ないのも残念だった。その一方で、クラフト的な新しい提案がたくさんあり、審査していて楽しかった」(林氏)
審査がとても難しかった2012年度
あたり前のことすぎて、誰も気にしていないが、新聞広告は記事と共に新聞を構成している新聞のコンテンツである。
読者は記事を見ながら世の中の出来事を知り、広告を見ながら世の中の動きを感じている。広告表現の中に今を感じているのだ。だからもしも、新聞から広告が消えたとしたならば、読者はニュースの情報源は、新聞ではなく、Yahoo!ニュースで十分だと思うかもしれない。
いい新聞広告はそのような新聞というメディアの特性を創り手側が理解し、それを生かしながら機能させている。新聞広告が機能するということは、どのようなことなのか? という事を俯瞰から捉える必要があるのだ。なので、大勢の人々が見ているからという理由で、伝えたい内容を大声で叫ぶだけというやり方は滑稽である。
読者(生活者)に何をどのような形で伝えるのかが重要なのだ。
現在の広告キャンペーンでは新聞広告だけでそれを構成する事はまれで、TVCM、オンラインメディア、OOH、などと連携することがほとんどであるため、キャンペーンの構造の中での新聞広告の役割も視野に入れておく必要もある。
それは新しい表現か? 人々の心を摑んだか?というようなことを頭の中で反芻しながら審査に臨んだのだが、今年の審査はとても難しかった。
そして、賞は決まった。
さて、本年度の朝日広告賞として選ばれた作品は皆さんの目にはどのように映るのだろうか。本年度の私の個人的グランプリは、表現では第一生命保険「マウリッツハイス美術館展」、メディアの使い方では、集英社「SPUR」である。
(アートディレクター 川口清勝氏)