ハフポスト日本版 媒体資料
SDGs取り組みのコミュニケーションは簡単ではなくなっている
──SDGsに取り組む企業は増えていますが、半面 、他社との差別化は非常に難しくなっていると感じます。企業の個性とSDGsの両立を実現するためには、どのようなアプローチが大切なのでしょうか?
そのお悩み、マーケティング領域で働く皆さんに本当によく聞かれます。PR TIMESが発表した2022年のキーワードランキングは、SDGsが1位でした。2023年現在では「SDGs」の理念が浸透して、共感が広がってきているのは良いことです。一方で急速なバズワード化が進んでいることにも向き合わなくてはなりません。
SDGsというのは、とても包括的な言葉です。その中には多様な区分があるので、SDGsの視点で社会問題を見たり、その言葉と描く理想的な未来を考えたりするとき、一企業が取り組めることは限られています。
一方で、生活者の目線や情報リテラシーは、どんどん洗練されていることも、念頭に置く必要があります。企業の試みが的を射ているか、どれくらいの熱量で取り組んでいるかは、すぐに見抜かれる時代を私たちは生きているんです。盛ったアピールは逆効果です。
そうした中で「推される」企業になるためには、企業の価値観や常識を一方的に発信するだけではなく、生活者をはじめとした多様なステークホルダーと繋がり、社会の風向きに敏感でいること、そこで求められていることを走りながら考えていくことが大切です。
ハフポストはアメリカ発のグローバルメディアなので、常に世界の風向きに敏感でいられることも大きな強みです。グローバルな時代とはいえ、日本の情報はまだまだ閉鎖的で、生活者に届く情報も、英語圏と比べるとかなり絞られてしまいます。翻訳エディターや多様なバックグラウンドを持つエディターが揃っていることで、コンテンツ作成の上でより多角的な視点を生んでいます。
ハフポストが大事にしていること
──ハフポストは「会話を生み出す」ことも理念に掲げています。「会話」のある発信とは、どのようなものなのでしょうか。
個人が発言する場を得た時代、一方的な企業からの発信では心に刺さりません。社会の風向きの話とも通じますが、嘘やごまかしがあればすぐ「炎上」しますし、そこに緊張を感じている企業も多いですよね。
しかし裏を返せば、アンテナを高く張って応援や監視をしてくれる人がいるということは、読者と「会話を始める」場所がそこにあるということだとも言えます。そして、読者との会話を重ねながら丁寧に舵をとることで、より共感や応援をしてくれる人が増えていきます。
ハフポストでは創業当初から、編集でも広告でもSNSを主な舞台に多くの共感を集める記事を発信してきました。さらに、近年は動画やイベント、ワークショップなどのコミュニケーションチャネルを増やし、SNS以外でも会話のサイクルを途切れさせない企画を豊富に実施してきました。
広告コンテンツでも、企業と生活者をつなぐシームレスな構成や読者との目線合わせを意識し、本当に届けたいメッセージが「押し付け」にならないように常に心がけています。その中で私たちが積み上げてきたノウハウや、丁寧に繰り返してきた会話が生かされており、読者からも広告クライアント企業からも今日の信頼を獲得していると自負しています。
──ハフポストは近年ではSDGsで真っ先に想起されるメディアとして知られていますが、2013年の創刊以来、一貫して社会課題に取り組んできたそうですね。
新聞系メディアの信頼性と、TwitterやFacebook、インスタ、TikTokなどのSNSを駆使することに長けていることの二刀流に加え、SEOにも強く、多様なルートで読者を増やしてきました。
創刊時は、団塊ジュニアの課題を当事者目線で発信するメディアとして出発したのですが、今になって振り返ってみると、大手メディアがあまり報じない社会問題にも目を向ける姿勢は「すごくZ世代的な特徴を持ったメディアだった」と言われることがあります。
Z世代とは、1996年から2012年ごろ生まれの若い世代を一般的には指しますが、「デジタルネイティブで、多様性が尊重されたサステナブルな社会を志向し、社会正義全般に感度が高い。また、行きすぎた資本主義社会への疑問から押し付けがましい広告より、自分の価値観にあったブランドを選ぶ」などの特徴があると言われています。しかし、そうした思想を持つ人はそれより上の年代にも存在していて、ハフポストのようなメディアやその読者はまさにそうした特徴に当てはまるのではないか。そんな意味だそうです。
Z世代のインフルエンサー、NO YOUTH NO JAPANの代表理事で、ハフポスト日本版でもU30(アンダーサーティ)社外編集委員を務めた能條桃子さんにもそう言っていただきました。能條さんは対談で、「もっとフェアで、人権が守られる社会であってほしいと思っている人たちにとって、ハフポストは『北極星』のような存在としてよく知られている」と若者世代に支持されていることを評価していただきました。
実際、ハフポストの読者の約25%はZ世代と呼ばれる20 代以下の人々です。Z世代の“資本主義疲れ”や、買い物にマテリアル以外のストーリーや価値を求める消費傾向など、以前は社会の描くZ世代像からこぼれ落ちていたリアルも、Z世代の読者と「会話」することで浮き上がらせました。ただ、Z世代に限らず、社会課題解決への挑戦を通して多様な読者と繋がることも、大切にしています。
日本の大手ニュースメディアは男性の読者が多いのですが、ハフポストの読者はジェンダーバランスが取れており、企業の意思決定層も4割、子育て層、学生など様々な読者を抱えています。関心分野や特に当事者性を感じている分野はそれぞれ異なるかもしれませんが、「アクティブ」に読んでいただいているということは一貫しているようです。
ハフポストが考える未来とは
──創刊10周年を機会に、取り組んでいることはありますか?
2023年は、10周年企画と銘打って「未来を作る」と「アタラシイおいしい」という企画に取り組んでいます。
「未来を作る」は、SDGsを「知る」から「どうアクションに繋げるか」を考える企画です。
企業・団体の取り組みを紹介する「未来を作る仕事ラボ」と、個人の思いやパーパスをどう形にして、社会に活かすかを考える「未来を作る、自分になりたい」の2本立てになっています。
SDGsなどに取り組む企業の先進事例を紹介したり、斬新なアイデアを形にしている若い世代の起業家に話を聞いたり、また、自分自身のことを考えてみるようなワークショップを実施して、皆さんが考える指針になるようなコンテンツとなることを目指しています。
──今後ハフポストはどのようなメディアを目指していきたいでしょうか。
社会課題を解決するメディアとして、これからも、この世界をより良くいものにしたいという思いを持った皆さんと一緒に、課題を深掘りし、解決に導くまでの方法を探求していきたいと思っています。
それに加えて、メディアは、読者にとって大事な居場所の一つになるべきなのだなと最近感じています。例えば、辛い時にも「自分は大丈夫だ」と支えになるようなものだったり、自分も奮闘してみようと思えるエピソードに出会えたり、時には自分を省みて明日からの行動を変える勉強ができたりする、そんな場所です。
10周年企画での様々なイベントを通じて、「ずっと昔から読んでいます!私はハフポストのファンなんです!」と直接伝えてくださった多くの読者の方の声を聞きました。そんな読者の皆さん、行動する人々、企業、社会を繋ぐ存在としてもっと大きく成長し、これからも様々な企画をお届けしていきたいと思っています。
ハフポスト日本版 媒体資料
1983年生まれ。2005年に慶應大学総合政策学部を卒業後、同年4月に毎日新聞社に入社。東日本大震災の被災地となった福島では、避難者の心と身体の健康の課題などを担当、2013年に退職。その後シンガポールに転居。日系出版社でビジネス誌編集者として勤めたのち、東南アジア各国からの女性移民労働者を支援するNGOで広報職員として勤務。2016年に帰国し、同年4月にハフポスト日本版に入社。ジャーナリズムの知識とグローバル感覚の両方を生かしながら、ジェンダー平等の問題や働きかた、子育て、男性育休などのテーマで、キャンペーン報道をリード。2018年副編集長就任後は、記事の取りまとめやコンテンツ全体の読者リーチ拡大、クオリティの向上などに尽力。2021年6月より現職に就任。