大学スポーツにスポットライトを。「4years.」立ち上げの背景
──「4years.」はどのようなメディアですか?
2018年10月にローンチし、大学体育会でスポーツに取り組む学生アスリートや、選手たちを支える指導者やマネージャー、スタッフを応援するメディアです。全国に約20万人いると言われている大学生アスリートはもちろん、アスリートの家族、周辺にいる大学生、後輩たちを気にかけているOB・OGが主なユーザー像です。
これまで約70の競技、約230大学をとりあげてきました。なかでも一番の人気は、陸上・駅伝です。朝日新聞社は全日本大学駅伝を主催していることもあり、関連記事は年間約300本にのぼります。長距離ランナーの当事者たちだけでなく、市民ランナー、深いストーリーを知りたい駅伝ファンなど、ほかの競技では見られない様々なユーザーがいます。
──なぜ大学スポーツに着目したのでしょうか。新しいビジネスモデルの構想があったのでしょうか?
高校やプロと比べると、大学スポーツにはまだまだ光が当たっていないと感じていました。ローンチ当時はスポーツ庁主導で、2018年度中に日本版NCAA、UNIVAS(大学スポーツ協会)が創設されるタイミングで、大学スポーツに耳目が集まり始めようとしていました。アメリカのNCAA(全米大学体育協会)の収入は年間約1,000億円規模で、市場が完成しています。
いっぽうで、日本は大学からの支援が手厚いとはいえず、協会をはじめ、学校横断的かつ競技横断的な組織がないうえ、資金面でも安定しておらず、大学スポーツのショービジネスとしての潜在能力が十分に発揮されていない状況でした。それらを踏まえると、市場ポテンシャルが高く、競合がそれほどなく、弊社の事業との親和性が高いテーマであったことから、大学スポーツのメディアを立ち上げることにしました。
まずは、情報発信から始め、大学スポーツの課題解決サービスや、就職活動支援や受験生向けなどの周辺サービスに段階的に拡大していくことを構想しました。大学のスポーツ新聞部を巻き込んで取材してもらったり、大学アスリート個人にSNS等で発信してもらったりするなど、外部を巻き込みながら、まずは特定競技・大学から立ち上げて、コンテンツづくりを進めてきました。将来的には、コミュニティー機能やグッズ販売、差し入れ、イベントなど、多角的な事業展開を視野に入れています。
スポーツライターや記者出身の編集者が手掛ける読み応えのあるコンテンツ
──競合のスポーツメディアと比べて、「4years.」の強みはどこにあるのでしょうか?
月刊陸上競技やベースボールマガジンなど、競技ごとに「競合」メディアは存在しますが、「大学スポーツ全般」となると、ほとんど競合はいません。陸上、アメリカンフットボール、バスケットボール、バレーボールといった競技ごとに専門知識が豊富なスポーツライターと契約しているほか、現在は16大学のスポーツ新聞部と提携しています。彼らには、我々ではなかなか手が回らないマイナー競技にも光を当ててもらい、コンテンツに多様性を生み出し、編集する私たちはライティングスキルをお伝えするという形で、彼らに還元しています。将来的にスポーツライティングや新聞業界に少しでも興味を持ってもらいたいという思いをもって、大学のスポーツ新聞部とのつながりを深めています。
──運営や編集において、心がけていることを教えてください。
まずは「応援する立場」であるということを、きちんと明示していきたいなと思っています。大学生アスリートを丁寧に取材したうえで、選手たちを応援したくなるようなコンテンツ作りを心がけています。対立や感情を煽るようなコンテンツは山ほどありますが、そうしたところとは一線を画して、専門のライターを抱えている強みを活かして、読み応えのある、深みのある記事を制作しています。
──タイアップコンテンツを作成するにあたり、「4years.」でしか成し得ない価値はどんなところにあるのでしょうか?
大学スポーツに関する取材の蓄積、専門的な知識やネットワークがタイアップコンテンツの作成においても強みとなります。オリジナリティがあるヒューマンストーリーを得意としており、コンテンツに深みや広がりを持たせられるほか、取材を通して築いてきた体育会や大学との人脈を生かした切り口の提案が可能で、朝日新聞の記者出身者がコンテンツ作成に携わることにより、質の高いコンテンツを提供できます。
また、広告主の要望や課題に寄り添い、記者の視点を活かした、話題性や独自性のある企画案、読みやすい記事構成を提案できますし、社内の動画制作チームやイベント運営を手がけている部署と協力して、タイアップコンテンツと組み合わせて幅広い提案をすることも可能です。
商品訴求も、キャリア領域も。「4years.」が持つビジネスの可能性
──どのような広告主からの相談が多いでしょうか?
業種は食品やウェルネス関係が多く、施策内容は商品訴求が多い傾向にあります。アスリートが摂取するサプリメントや、身に着けるサポーターやウェアを訴求するケースがほとんどですが、今後は、男性のスキンケア用品をはじめとした、化粧品も扱っていけたらなと考えています。今はアスリートも化粧品を使う時代であると、多くの取材現場を通して実感したので、ニーズはあると思います。
そしてもうひとつ、キャリア領域にも手を広げていけたらなと考えています。「4years.」をうまく活用して、アスリートのセカンドキャリアを応援していきたいんです。企業側からすると、「うちの会社の実業団は、その先のセカンドキャリアも充実している」ことなどを広く発信し、アピールすることができます。これは企業にとって大きな魅力となるはずですし、そこにビジネスチャンスや、マネタイズの可能性があるのではないかと思います。
──印象に残っている案件を教えてください
東海大学陸上競技部中長距離ブロックをサポートしている森永製菓株式会社様の取り組みを「4years.」で紹介させていただきました。東海大学は駅伝の強豪校で、全日本大学駅伝でも注目されるチームです。陸上・駅伝を強みとする「4years.」と大変相性がよく、ほかにはない充実した内容で、商品の魅力やクライアントのサポート内容を伝えることができました。
また、バスケットボール・コーポレーション(旧B.MARKETING)株式会社様の案件も印象的でした。クライアントと「4years.」で日本のバスケ界を盛り上げる特設サイト「with Basketball」を立ち上げました。バスケットボール専門サイトは多々ありますが、このサイトでは、JBA(日本バスケットボール協会)やBリーグの社会貢献活動や、日本のバスケ界を支える活動を紹介する「SOCIAL ACTIVITY」、注目選手や次世代スターを紹介する「FEATURED PLAYERS」という、大きく2つのテーマを取り上げています。
前者は、社会的なテーマを取り上げている朝日新聞社の記事と親和性が高く、ほかのサイトにはない特徴です。後者は「4years.」で培ってきたサイト運営のノウハウを活用し、SEOを意識したライティングを行っています。ちなみに、サイト名の「with Basketball」には、このサイトを通してバスケットボールを少しでも身近に感じてもらえたら、という思いを込めました。ひとりでも多くの方がこのサイトを訪れ、日常生活でバスケットボールに触れる機会を持ち、チームや選手のファンになってくれることを願っています。
──クライアントの反応はいかがでしたか?
森永製菓様には継続してご出稿いただいています。バスケットボール・コーポレーション様については、「4years.」にしか載っていないオリジナル記事について評価をいただきました。
たとえば、バスケットボールのレフェリー(審判)やジュニアウインターカップ、パートナー企業の取り組み、沖縄ワールドカップ(FIBAバスケットボール ワールドカップ 2023)の裏方のコンテンツなどです。
レフェリーの記事に関して言うと、レフェリーは選手のパートナーとして一緒にゲームを良くする存在であり、選手と同じように、バスケ界を盛り上げている一員であると伝えることができ、かなり深みのある記事を作れたと思っています。おかげさまで、クライアントにはとても満足していただけましたし、関係者の中でも記事が拡散されて、ロングランで読まれている記事になりました。仮にレフェリー育成が課題となっているなら、「4years.」はそうした課題の解決にも寄与でき、それがクライアントにとってのベネフィットにもつながると考えています。
──今後の展望について教えてください。
「4years.」が学生スポーツの中核となり、体育会や大学、クライアント、OB・OG、ファンを結びつける存在になりたいと考えています。
ステップ1としては、学生スポーツの情報発信メディアとしての地位を確立することで、今現在「4years.」はこの段階にあります。
また、ステップ2として、スポーツにおける課題解決サービスを提供する事業体になっていきたいです。体育会や大学、クライアント、OB・OG、ファンを結びつけるコミュニティーづくりを進めていきたいと考えています。たとえば、サンプリングやアンケート配布、イベントの実施、差し入れなどを想定しています。
体育会や大学にアプローチしたいクライアントがいれば、まずは「4years.」に相談しよう、逆に体育会がスポンサー探しをしたい時、OB・OGが後輩たちをサポートしたい思った時に、「4years.」に相談しよう、となってもらえることが理想です。
4years.メディアガイド
4年の間には、いくつものドラマがあります。 まばゆい輝きを放つスター選手にも、雑草のようにはいつくばるような毎日を過ごしている選手にも、主務やトレーナーや分析班などの周りで支える学生にも。 大学スポーツの現場からあらゆるドラマを伝えたい。 そんな夢を持って、挑戦を続けます。
2008年、朝日新聞社入社。記者職の時は2013年からスポーツ部に在籍し、プロ野球担当を計8シーズン務めた。東京オリンピックでは野球・ソフトボールの専門担当として、横浜と福島を往復する日々。海外出張も経験し、サニブラウン・ハキーム選手が陸上男子100mで9秒97の日本記録(当時)を出した時は、現地で震えながら写真を撮った。高校まで野球を続けたが、大学時代は体育会所属ではないため、学生を取材することで青春を取り戻している。