昨年9月に初版1,000部からスタートし、今年6月に百万部を突破した文芸社の『B型自分の説明書』(Jamais Jamais 著)が、新たな血液型ブームを起こしている。文芸社では今年4月にA型編、6月にAB型編、8月にO型編を出版。10月8日現在、全シリーズの累計は480万部を突破した。無名の著者から大ヒットが生まれた要因として、一般人が原稿や企画を持ち込みやすい同社の自費出版システムが果たした役割も大きい。文芸社広報部文化事業推進課課長の伊藤伸氏にお話をうかがった。
決めつけはなしで自分分析を楽しむ
── 出版の背景は。
一昨年、Jamais Jamaisさんから原稿の応募がありました。並んでいるB型の特徴で、自分にあてはまる項目をチェックしていくとオリジナル説明書ができるという構成や、ユニークなイラストなどで、当初から編集部内の評価は高いものがありました。
ブームの発端は、山形県天童市のある書店の書店員さんがタイトルを気に入られて、5冊注目したところ、たちまち売れたことでした。その方もB型で、「B型はあまのじゃくだから」とあえて目立たない店の隅にこっそりと置いたことが功を奏したとのことです。
その書店員さんが後に異動した仙台でも本書が売れ、動きが仙台周辺へと広がる中で本社の販促活動にも力が入っていきました。今年1月中旬に三省堂さんが全店での販売を決定した後は、売り上げが一気に伸びています。
── ヒットの原因をどのように分析していますか。
『B型自分の説明書』は、B型であるJamais Jamaisさんが経験に基づきながら、ご自身の内面を見つめるような視点で自己認識、自己肯定をした本です。血液型ブームは過去に何度もありましたが、多くは紋切り方の性格分析や占い的なもので、「これは自分に合っているけど、これは合ってない」と笑って楽しめるものではありませんでした。新聞広告においても、コミュニケーションツールとして家族や仲間と楽しめる本書の特徴が伝わるクリエーティブを心掛けています。
── シリーズ化のペースは非常にゆっくりとしたものでしたが。
本書の成功の鍵はひとつの血液型に絞って本にした著者の着眼力ですし、文章に非常にこだわりのある方なので、執筆のペースはお任せしました。また間隔を開けて続刊が登場することでブームの鮮度が維持され、期待感の醸成が図れましたし、芸能人や個人のブログで改めて紹介される機会にもなりました。今冬にニンテンドーDS向けのゲーム化が決定しています。今後はシリーズのブランディングや、他メディアへの二次使用をいかに有効かつ持続的に展開していくかが大きな課題です。