経済誌ならではの切り口で多岐にわたるテーマを特集

 創業以来113年の歴史を誇る東洋経済新報社。読まれる週刊誌をいかに作り続けるか。発行の意義や企画のスタンス、最近の読者の傾向、広告展開について週刊東洋経済編集部編集長の鈴木雅幸氏に語っていただいた。

鈴木雅幸氏 鈴木雅幸氏

── 売れ行きが順調だとうかがっています。

 ここ2年ほど売り上げが順調に伸びています。特に2007年は対前年比で約10パーセントの伸びを記録し、我々も驚いています。

── 勝因は。

 特集の企画力だと思います。当社の編集部員をはじめとするスタッフの地道な活動の積み重ねで、他にはできない独自の取り組みをしていると自負しています。経済週刊誌を手に取る方は、面白そうで興味をひくだけでなく、実際すぐ参考になる特集を求めています。最近の金融危機を受け、読者の景気や世界経済への関心が高まっていますが、それ以外のトピックスへの興味も広がっています。『週刊東洋経済』読者の7割の方が本誌を書店で購入しているため、毎週毎週が勝負です。

── 企画の例をご紹介ください。

 「鉄道革命」という企画では世界の鉄道を紹介しましたが、シベリア鉄道の搬送をトヨタがどう手伝っているか、他の日本の企業がこの業界にどうからんでいるかなどを取り上げ、単なる鉄道路線紹介ではない、経済誌ならではの切り口のユニークな特集にしました。また薬の特集では、どの薬がどういう成分からできていて、どういった病気に一番効くかをジャーナリスティックに切り込みました。業界紙・誌の記者以上の知識を持った専門記者が食い込むことで、説得力が出てきます。結果、専門家や医者、患者の方たちから喜ばれ、新しい読者層に手に取っていただけるようになりました。

── メディア全体の中における立ち位置は。

 社会経済が毎日劇的に変化する昨今、何が起きているかを知るためには新聞やネットに勝るものはないと思います。しかしそうした変化がどういう構造で起こっているか。情報を整理分析し、読者が自分の考えをまとめるための軌跡をいくつか与えられるのが、週刊誌の醍醐味(だいごみ)だと思います。活字だけでは伝えられないものは図解したり、データを積極的に使用して、読者の理解を深めるように配慮しています。また、アジアや欧米の情報を大切にしているので、海外著名人のインタビューも毎号必ず入れています。

── 広告展開については。

 以前は経済紙や電車の中づりが広告媒体としてはメーンでしたが、最近は扱う特集テーマと読者層の広がりとともに、朝日新聞にも広告掲載しています。実際に朝日新聞に広告を掲載して大きな反響を実感した号もあり、部数増に大きく結びついています。

 広がってきた新たな読者層にいかにアピールできるか、効果的な広告展開の仕方を今後も考えていきたいと思います。

7/14 朝刊
『週刊東洋経済』 2008年 7/19号