角川文庫が創刊60周年を記念し、人気作家が編集長を務める「角川文庫編集長フェア」を、2008年4月から行っている。角川書店第一編集部部長代理で角川文庫編集長の郡司聡氏にうかがった。
── フェアのねらい、概要などについてお聞かせください。
新刊であっても古い本であっても、読者にとっては、手にした瞬間が「新しい本との出会い」です。60周年の節目に「何かいつもとは違う形で新しい出会いが提供できないか」と考えたところ、「色々な人の視点で本を選んだらおもしろいのでは」という結論に達しました。作家は書き手ですが、一方でかつても今も読み手であり、当然、優良な読者です。そこで、角川文庫から新刊を出す12人の作家に月替わりで編集長に就任してもらい、角川文庫15,000点の蔵書から6冊を選んでもらおうと企画しました。これまで森絵都さん、東野圭吾さん、京極夏彦さん、重松清さん、恩田陸さん、金城一紀さんが登場。当初、12人が選ぶ本のうち何冊かはダブるだろうと予想していたのですが、なんと全員が違う本を選ばれました。人それぞれおもしろいと感じる本、思い入れのある本は違うんだと、改めて実感しました。
選ばれた本には編集長の推薦文を記した帯をつけ、著者の新刊とともに、書店で特設の売り場を作って販売しています。著者が選んだものや愛用品をプレゼントする企画も行っており、多くの応募があります。その際感想を書いていただいているのですが、若い人からは「こんな本知らなかった」、著者と同年代以上の人からは 「懐かしくてまた手にしました」といった声が多く寄せられています。
── 新聞広告にも各編集長が登場しています。
60周年ということで大きな広告枠を使うことになり、ならば通常の広告とは違う紙面づくりができないかと考えました。こちらもやはり、私たち版元ではなく、作家の言葉を前面に出したほうが面白いだろうと、著者インタビューと本の選出理由を掲載しました。また、フェアのスタートに先駆けた3月31日の紙面では、角川文庫の歴史を解説しました。これが社内外で非常に好評を得ました。
── 今後の展開は。
10月から、読者による「あなたが選ぶ角川文庫」の応募が始まっています。フェアの締めくくりとして、人気を得た文庫作品を来年の年始ごろには店頭展開する予定です。色々な人の視点で選ぶ角川文庫、という切り口は、今後も続けていきたいと考えています。