シャープは北海道洞爺湖サミットが開かれた7月7日から、5日間連続で「ソーラー・カンパニー シャープ」を前面に打ち出したシリーズ広告を掲載した。出稿の経緯、「環境」を通じた社会や消費者との「きずな」の構築について、ブランド戦略推進本部宣伝部副参事の大家直良氏にうかがった。
サミット期間に世界同時にアピール
── 環境分野でのコミュニケーションについてお聞かせください。
2004年に企業ビジョンを「環境先進企業」と定め、同年から始めたエコロジーキャンペーン「エコロジークラスでいきましょう」の新聞広告とテレビCMは、現在も継続中です。毎月最終日曜日に朝日新聞特集記事「環境ルネサンス」の対向面に掲載しているシリーズ広告は、今年の8月で4年7カ月、55回を数えました。
また、家族みんなで話題にしてもらおうと考え、01年からお盆と正月に「太陽光発電」をテーマにした広告を掲載しています。04年~07年8月には、「ワールドレポートシリーズ」として、欧州、アジア、アメリカなど世界24カ所で太陽光発電がどのように使われているかを紹介しました。
── 今回の掲載は北海道洞爺湖サミットに合わせたものでした。
環境意識を高めるためのメッセージを届ける難しさは、消費者との距離感です。漠然と環境に関心はあっても、ソーラー・エネルギーは、まだ自分ごととして考えにくいかもしれません。それを身近に考えるためのきっかけを作りたいと思いましたので、環境意識が社会全体で大きく高まるサミットは、絶好の機会でした。
また、世界の注目も開催地日本に集まっていました。このタイミングにこそ、一企業として「ソーラー・エネルギー」を提案し、「シャープはソーラー・カンパニーとしてやっていきます」と世界に向けて宣言することに意味があると考え、欧州やアメリカへも同時にそれぞれの表現で展開しました。
── ソーラー・エネルギーのメッセージに込められた思いは。
企業が環境について語ることは、まさに時流とも言えますが、訴求レベルはさまざまです。当社の広告は、歴史と実績、そして未来へとつなげていく確かな行動によって、リアリティーあるメッセージを伝えたいと思いました。
「液晶のシャープ」のイメージは定着しましたが、太陽電池開発の歴史は液晶より古く、半世紀近くになります。さらに、人工衛星や灯台の無人化など、これまでに全世界の太陽電池の4分の1を生産している実績や、「2010年、年間1ギガワットの太陽電池を生産できる工場を大阪・堺で稼働させる」という未来につなぐ事実もあります。
これらによって、メッセージにリアリティーを出すことができ、読者の皆さんに社会への提案を受け入れてもらえやすくなると考えました。
── クリエーティブのポイントは。
今回、特に太陽光への思いと環境への意識を伝えたかったので、商品を中心にした展開にはしませんでした。ビジュアル面でも、「エネルギーの象徴」として太陽そのものの写真を4回連続で使いました。
その結果、「希望を感じます」「期待しています」「応援しています」といった、これまでの広告に対する「好き」「興味ある」を超えた共感を得られました。今回はむしろ社会的なメッセージが評価されたと感じています。
読者と広告主が真摯(しんし)に向き合う
── 新聞への期待は。
一連の展開は全国紙の他に、来日している海外の記者などにも伝えようと、英字紙にも掲載しました。企業がまじめに何かをきちんと言いたい時や、宣言したい時、社会性のあるメッセージを伝えたい時に、最も適しているのは新聞です。雑誌やテレビ、ウェブよりも、読者と広告主が真摯に向かい合えます。コピーも決して少なくはなかったのですが、隅々まで読んでいただけたという手応えを感じました。
新聞の存在価値は変わらずにあり続けていると思います。新聞は、単純に情報をとるだけでなく、きちんと確認することができ、リアリティーを感じることができるメディアです。したがって、情報が定着し、人の心にしっかり残るところが他のメディアにはない特徴だと感じています。
── 今後の展望は。
当社は、液晶とソーラーをブランドの2本柱として定着させたいと思っています。現在、欧州では一般市民が太陽光で発電した電力を、電力会社が供給価格よりもはるかに高値で買う制度によって、急速に普及が進んでいます。
日本においても、日本が育んだ太陽電池という技術について、まだまだ知っていただきたいことがあります。そうした情報発信によって、環境問題やソーラー・エネルギーへさらに関心を持っていただけるような取り組みをしていきたいです。