「子どもたちの未来のために」有益な情報を発信したい

 3月8日「ミツバチの日」、山田養蜂場は、子どもに安全なクレヨンを新聞広告で紹介した。「子どもたちの未来をつくるのは、大人の責任だと思います」という社会に向けた企業メッセージによって、生活者に気づきを与え、「きずな」を作っていこうとしている。総務部文化広報室室長の守安健一氏、健康食品事業部部長の上原俊男氏、同チーフの山本晶子氏にお話をうかがった。

人と人がつながる大切さを伝えていく

守安健一氏 守安健一氏

── 取り組まれている「教育」に関する活動は。

 「ひとりの人のために」という創業の精神が、社会貢献活動の「子どもたちの未来のために」という考えのベースになっており、子どもの教育関連が活動全体の約6割を占めています。全国の小学校に絵本を贈る「みつばち文庫」、養蜂場でミツバチとふれあう体験学習「エコスクール」、直接、学校に訪問してミツバチの生態や自然環境の大切さを伝える「みつばち教室」、子どもたちの未来につながる物語を募る「ミツバチの童話と絵本のコンクール」、8月にはカンボジアに小学校を建設するなど、子どもたちの教育に関する活動は国内外を問わず、多岐にわたっています。

 こうした取り組みの根底には、人と人がつながっていくことが大切だという考えもあります。ミツバチは箱の中で集団で生活していますが、1匹だけ別にすると大切に世話をしても死んでしまいます。人間も、他の人から必要とされ、社会の中で役割を果たす幸福感を持つことが生きる力につながるはずです。

── コミュニケーション戦略については。

 これまでの企業は社会にモノだけを提供していればよい時代でした。しかし、これからは考えを転換させて、モノだけでなく、情報などによって、生活者の意識を高めることも企業活動の一つであると思います。かつての農型社会では、地域の大人が子どもを見守るという姿が当たり前でした。現在、そのような関係が希薄になっているという危機意識から、子どもたちの成長にとって大人たちの関心がいかに大切なことかを、企業活動や広告を通して伝えたいと思っています。生活者ひとりひとりに、問題を投げかけるような広告づくりに取り組んでいます。

ストーリーのリアル感を読んで考える新聞で

上原俊男氏 上原俊男氏

── 新聞広告の魅力と期待することは。

 新聞は、他の何よりも読んでいただけて、考えていただけるメディアです。行間からリアル感を読み取ってもらうことができますし、問題意識を持っていただくには最適です。私たちは通販会員様へのコミュニケーションツールも、ぬくもりや現場の温度をお伝えするため、手書き文字を大切にしています。それと同じで、私たちの思いや温度を理解していただくには、新聞の質感がふさわしいと考えました。

──3月8日の出稿の経緯は。

 当初、「みつばちクレヨン」の販売開始ということで、商品の訴求にとどめようとのことでしたが、このクレヨンには子どもに対する強い思いが込められており、企業メッセージを十分伝えることができるものだとの考えに至りました。

 そこで、これまでダイレクトに商品をアピールする「レスポンス広告」と、企業メッセージを伝える「企業広告」を同じ広告で訴えるのはかえってマイナスになるのではと両方を別々に扱っていましたが、初めて商品と企業理念を兼ね備える広告にしました。二つの距離を近づけるにはどうすればいいのか、商品PRが勝ち過ぎてしまうのでは、と懸念もしましたが、「現場で実際に取り組んでいる姿勢や思いを正直に伝えればいいのだ」と気づかされました。

山本晶子氏 山本晶子氏

── クリエーティブのポイントと反響は。

 一番留意したのは、開発ストーリーのリアル感です。母親でもある社員が「子どもがうっかり口にしてしまっても安心なクレヨン」の開発を思い立ち、商品化に至るまでの実話を簡潔にまとめました。コピーも、企業は子どもたちや自然に対して責任がある、ということを訴えるものにしました。これは単なる商品のPRではなく他の企業へも影響を与えたいとの思いも含んでいます。感激したのは、国立大学でシュタイナー教育を研究されている教授から「企業がこういうことを考えて商品を作っていることがうれしい」というお電話でした。お孫さんへのプレゼントにと注文される祖父母、教師や児童評論家、日々子どもたちのことを考えておられる方々から評価してもらえ、「伝えたかったことがきちんと伝わった」と実感できました。

── 今後の展望は。

 「みつばちクレヨン」の広告は、レスポンス広告と企業広告との距離を縮めた新しい試みの一つになりました。今後は、子どもたちの未来のために取り組む活動を継続していくだけでなく、さらに予防医学などの健康に関する情報発信にも力を入れていこうと考えています。こうした広告ができるのも、安全安心な商品があってこそ。常に「ひとりの人のために」役立つもの作りを続けていきたいです。

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