機械メーカーのナブテスコは、2014年8月~10月にかけて、朝日新聞で全46回のシリーズ広告を展開した。前年に掲載したシリーズ広告に引き続き、マンガ家の見ル野栄司氏がビジュアルを担当。掲載後には、広告を用いたオリジナルカルタを制作し、読者にプレゼントして好評を博した。
中期3カ年計画をスタート より多くの人に知ってもらいたい
ナブテスコは、制御技術でモノを動かし止める、「モーションコントロール技術」を核とする機械メーカー。輸送機器や産業用機器、福祉機器など、幅広い分野に最先端のテクノロジーを提供している。
製品は、産業用ロボットの関節として使われる精密減速機、鉄道用ブレーキシステム、自動ドア、飛行機の姿勢を制御するフライトコントロール・アクチュエーション・システム、パワーショベルの走行モーター、船舶の制御装置、介助用の電動車いすなど多岐にわたり、世界シェア60%を超えるものもある。私たちの目に届きにくいところで活躍する同社のテクノロジーは、世界中から支持を集めている。
同社は8月12日~10月28日の約3カ月にわたって、製品の魅力や技術力、事業内容をイラストで伝えるシリーズ広告を展開した。その数は全46回に及び、その後、広告をもとにした「ものづくりカルタ」を制作、読者プレゼントとして提供した。
このような企画を実施した狙いについて、総務・人事本部総務部の首藤枝里氏は、次のように話す。
「ナブテスコは、帝人製機とナブコが合併してできた企業で、まだ12年の若い会社です。知名度を上げるため、また多岐にわたる事業を社内外に知ってもらう意味もあり、2014年度から3年かけて集中的に広告を展開し、ブランディングに力を入れたいと考えています。これまでも電車内動画広告や新聞広告を活用してきましたが、まだ道半ばです。景気が回復しつつある昨今、良い人材の獲得も視野に、学生や転職希望者、そのご家族など、B to B企業の当社が普段接することのない方々にも、もっと当社のことを知ってもらいたいという意図もあります」と話す。
出稿を決断した背景には、2013年に行った15回のシリーズ広告「ナブテスコに男泣き!」が成功したこともあると、総務・人事本部総務部 総務部長の松本敏裕氏はいう。
「前年の広告をもとに制作した、ナブテスコをマンガで紹介している会社パンフレットがとても好評なんです。いつも本社入り口のロビーに置いていて、来客が手に取れるようにしていますし、英語・中国語版は海外の方からも喜ばれています。広告原稿をカルタにしようという今回のアイデアにも興味を引かれました。前回のシリーズ同様、見ル野栄司さんがマンガを描いてくれることも、安心感がありました」
同社はCSR活動の一環として、朝日新聞社主催の小学生高学年向け環境教育イベント「地球教室」に協賛している。子どもたちに省エネ設計やバリアフリーの自動ドアについて社員が講義するなど、子どもたちと直に触れ合う機会になっている。その地球教室の一環として、有楽町マリオンで開催された「かんきょう一日学校」(9月21日開催)にシリーズ広告の掲載が重なっていたことも、広告とイベントの連動感を醸成するのに効果的だったと考えている。
カルタのプレゼントが大人気 紙面+αの企画で認知度向上に貢献
広告の制作では、元エンジニアでもあるマンガ家の見ル野栄司氏が中京地区と関西地区の工場を取材した。
「取材した情報を一コママンガにするのはとても難しかったはずですが、減速機の技術を、『おばあちゃんが針の穴に糸を通すより精密』と表現したり、技術者の手の角度を何度も描き直してくれたり、細部まで気を配ってくれました」と首藤氏。描き上がったマンガは、現場の技術者にも入念にチェックしてもらい、リアリティーを追求した。
全46回の掲載が終了した後、広告で使用したマンガを「絵札」に、それとは別に新たに「読み札」を考え、「ものづくりカルタ」を制作。11月24日付朝刊のテレビ面で、プレゼント告知を掲載した。500人の募集に対し、約5千人もの応募が殺到した。
首藤氏は、「カルタ募集への反響の大きさに驚いています。また、新聞に広告を掲載しはじめてから、個人投資家の方から、株式の購入を検討したいという問い合わせまでありました」と話す。今後はノベルティー化を検討し、各地で開催される展示会やイベントなどで配布したいと考えている。
「できあがった46回分の広告は、一枚のパネルにしてもらい、本社に展示しています。前回はマンガ形式のパンフレット、今回はカルタと、紙面だけにとどまらない展開ができました」と、松本氏は企画を評価する。
2016年度までの3年間は、「ナブテスコって、ナンデスコ?」というキャッチコピーを使ったテレビCMで幅広い層の認知を高め、じっくり読み込んでもらう新聞広告や雑誌広告で企業理解をさらに深めてもらう方針だ。
首藤氏は、「B to C企業に負けない認知度を得ることを目標とし、長期的なファンや将来の入社志望者を増やしていきたいと思います。その成果が出るのはこれからですが、昨年の新卒の就職イベントではブースに来る学生のほとんどが『広告を見ました』と言ってくれたそうです。志望者数は確実に増えています」と、広告戦略に手ごたえを感じている。
2014年10月28日付
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