健康づくりをフックに消費者とリアルにつながる

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サンスターは健康食品シリーズ「健康道場」を発売しています。「人間が本来持っている健康になろうとする力(自然治癒力)を高める」という商品の目的の背景には、社員の健康増進を起点に、消費者とのダイレクトな接点を大切にしながら信頼を築いてきた取り組みがあります。顧客と社員が一緒に参加する「健康道場ツアー」も話題を呼んでいます。

社員の福利厚生施設から始まった「健康道場」シリーズ

2016年9月13日付 朝刊2016年9月13日付 朝刊904KB

 サンスターが通販食品として取り扱う健康食品シリーズ「健康道場」が好調だ。コレステロールが気になる人に向けた特定保健用食品「緑でサラナ」をはじめ、100%有機野菜を使用した「緑黄野菜」など、20種類近くの商品をラインアップし、消費者の健康志向に応えている。

 「当社の健康食品事業は、社員の健康増進から始まったんです」と話すのは、サンスターグループのヘルス&ビューティーカンパニー日本ブロックマーケティング部健康道場グループ長の鶴見利江氏。「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」を社是とする同社。創業家二代目の金田博夫氏が健康を損なった際、病院治療だけに頼らず、生活習慣を見直して健康を回復した経験をふまえ、健康関連事業に関わる社員が「まず健康であるべき」との考えから、1985年、社員の福利厚生施設「心身健康道場」を設立。食事、身体、心を柱に、玄米菜食や青汁などの食事、整体や有酸素運動、冷温水の交代浴などによって健康バランスを取り戻す試みを重ねてきた。鶴見氏は「健康道場で実践する『体に良いこと』を、一般のご家庭へも簡単に提供できるようにしたい。その思いがいつも原点にあります」と話す。

 そんな思想をもとに、10年以上にわたる研究から生まれた商品が「緑でサラナ」だ。キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科野菜に含まれる天然アミノ酸「SMCS(S-チルシステインスルホキシド)」に着目。体内のコレステロールは酵素によって胆汁酸に変えられて体外に排出されるが、この酵素を「SMCS」が活性化し、LDLコレステロールを下げるという。1日の目安となる2缶(320グラム)で、同成分をしっかり含んだ野菜約210グラム分が摂取できる手軽さが受け、2009年の発売から販売実績1億本を突破。鶴見氏は「機能面に加え、野菜由来の安心感に支持をいただいています。お客様の自宅を訪ねてご意見をうかがうと、毎日体に良い物を取りたいという主婦や、ウォーキングなど運動と組み合わせている方も多い。利用シーンをリアルに感じることが商品開発や広報宣伝に大いに役立っています」と明かす。

鶴見利江氏鶴見利江氏

 商品デザインや広告では、「サンスターならではの品質の高さ」をシンプルかつ上質に伝えることを重視。パッケージのブランドロゴは海外展開を見据え、日本らしい毛筆体とローマ字で表現。野菜などの素材写真を中央に配してバランス感を出したほか、広告は書体や色の多用を抑え、分かりやすく、安定感のあるメッセージ発信を心がけているという。鶴見氏は「新聞は、私たちの想いや商品を細かなところまで理解していただける大切なメディアで、お客様の調査でも実際によく読んでいただいているのを感じます。新規や継続購入の促進に加え、既にファンになっていただいている方が、新聞掲載を見て、『こんな良いものを使っているんだ』と再認識され、ブランド価値を高めてくれている効果も見逃せないと思っています」と話す。新たな情報を既存顧客に発信するためにも、広告活動は欠かせないという。

企業姿勢を伝える健康づくりの実践ツアーも話題

健康道場ツアーの様子健康道場ツアーの様子

 顧客とのつながりを大切にする姿勢は、2013年から実施している1泊2日の「健康道場ツアー」にも表れている。「心身健康道場」で培った健康法を旅の形で体験してもらおうと、当初は通販会員を対象に企画。管理栄養士、歯科衛生士、健康運動指導士らが同行し、さまざまな体験プログラムを通して、無理のない健康づくりの方法を、旅の思い出とともに持ち帰ることができる。8回目となる昨年11月と今年1月には初めて一般からも参加を募り、和歌山県田辺市で開催。1食を600キロカロリー以下に抑えた玄米菜食や温泉に加え、「健康寿命をのばそうアワード」で優良賞を受賞しているNPO法人熊野で健康ラボの協力で、世界遺産熊野古道でのウォーキングやストレッチ運動も盛り込んだ。「参加者の健康意識がとても高く、逆にいろいろと教わることが多い。寝食をともにして、お客様の商品への愛着を直接感じ取れ、私たちの励みにもなっています」とほほえむ。昨年2月には参加者の体験談が、第8回ヘルスツーリズム大賞を受賞。「自らの体験や納得感があるからこそ、消費者に自信を持って商品をおすすめできます」

機能性表示食品にチャレンジ徹底した消費者志向で切磋琢磨

 2015年4月に「機能性表示食品制度」がスタートし、安全性と有効性の科学的根拠(エビデンス)を消費者庁に届け出ることで、企業の責任において商品に表示できるようになった。同社では機能性表示食品こそ未発売なものの、鶴見氏は「商品の幅を広げる良い機会なので、じっくり研究してチャレンジしたい」と意欲を見せる。ただ、前提は消費者の信頼。同社では原材料や成分などを厳しくチェックする品質保証部門を持ち、顧客の問い合わせにも迅速に対応できる態勢づくりに力を注ぐ。2015年11月には米国で開かれたコンタクトセンター・ワールドアワード2015で、同社お客様センターが続ける「消費者志向の草の根活動『お客様の声を聴こう会』3年間の軌跡」が最高位の金賞を受賞するなど、社員一人ひとりの意識の高さをうかがわせた。鶴見氏は、「流行に飛びついたり、行き過ぎた表現は業界全体の信用に関わります。お客様がどんな状況でどんな商品を求めているのかを考え、切磋琢磨(せっさたくま)して期待にお応えしていきたい」と結んだ。