これからの学びを世に問いかけ、ともに考え、価値観を共有する

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日能研が2009年から掲載している広告企画「わかるわかる教育」は、70回を超える連載が続く長期シリーズです。日能研が大切にしている子どもの学びについて、Q&Aでわかりやすく解説するこの企画は、ステークホルダーや社員の価値観の共有の場としても機能しています。

子どもの学びへの思いや考えを社会に公約として宣言する

日能研 常務取締役
茂呂真理子氏

 日能研では2009年から、自分たちの子どもの学びへの思いや考えを伝える広告企画「わかるわかる教育」を展開している。

 朝日新聞が難しいキーワードをわかりやすく解説する広告特集シリーズ「わかるわかる運動」の一貫で、年に6〜10回ほど掲載。これまで70回も出稿されてきたロングセラー企画だ。毎回楽しみにしている保護者も多く、掲載日には「今日見ましたよ!」と即座に反応があるという。

 「私どもは来年、65周年を迎えますが、いつの時代も、今を生きる子どもたちに本当に必要な学びとは何かを考え、実践してきました。この企画は私たちが今、子どもたちの学びをどのように考えているかを、社会の幅広い人たちに伝え、私たちはこういう子どもが日能研で育つことで、社会をより良くしていきたい、と宣言する公約のようなものなのです」と日能研常務取締役の茂呂真理子さんは語る。

 例えば、10月1日に掲載された紙面のテーマは「持続可能学力」。時代とともに色あせる知識や技術などの「消費期限付き学力」ではなく、将来にわたって使い続けることができる学力とはどのようなものなのか、が解説されている。

2017年10月1日付 朝刊 1.3MB

「現代はこれまで当たり前とされていたことが突然、通用しなくなる変化の激しい時代です。万人に通用する正解もありません。そのような時代には、与えられた情報をうのみにせず、自分で考え、判断し、自ら選んだ道を、仲間と協力しながら切り拓(ひら)く。そのような力が必要となります。それは自ら主体的に、自分ごととしてアタマとココロを動かすことのなかでしか培われません。そこで私どもの授業では、『君ならどうする?』『どう考える?』といった問いかけを何より大切にしています」

 ここで茂呂さんが述べていることは、まさに今、国が進めている教育改革の方向性とも一致する。ただ長年、このような学びに取り組んできた日能研からすれば、遅きに失したのでは、との感もあるかもしれない。

 「学習指導要領の改訂には長い時間と膨大な労力が必要なので、国が重い腰をあげたことでいよいよ社会が変わるかもしれないと期待しています。ただ改革の目的が、グローバル競争のなかでいかに日本の競争力を高めるか、といった観点が強いのが気になります。これからの時代、果たして競争という概念のなかに本当の豊かさはあるのでしょうか。むしろ教育によって、子どもの内面的な豊かさをいかに育むか、といった議論が大切だと思います」

未来を考え、想像力を育む活字メディアの新聞を重視

 教育は社会と切り離して考えることはできない。教育を考えることは、私たちがどのような社会を、未来を目指すかを考えることでもある。そういった意味で、日能研が子どもたちの学びや教育への想(おも)いを社会に投げかける場として、新聞広告というメディアを選んだのは自然なことだという。

2017年5月28日付 朝刊 1.4MB

 「例えば私どもがこの企画でとりあげるSDGsなどは、新聞記事でもひんぱんに取り上げられています。読者がそれらと私どもの企画を同時に読みながら、これからの社会や教育について考えていただけるならうれしい限りです。またこの企画では私たち自身、毎回、何をテーマにするか本気で徹底的に議論します。そのなかで、社会との向き合い方や、自分たちが大切にしている価値観、子どもの学びをどう考えているかを再確認します。この企画は、さらにそれを保護者、子どもらと共有するコミュニケーションの場でもあるのです」

 日能研ではこの企画の紙面を首都圏の全教室に掲出し、朝日新聞購読者以外にもメッセージが伝わるようにしている。また社内の会議室にもポスターのように張り出し、ときには紙面をみながら議論をしたりもする。

 また顧客らとのコミュニケーションにデジタルメディアを活用する企業が増えるなか、日能研では紙媒体である新聞広告を今後も重視していくという。

 「私たちは文字でしか伝えられないものがあると思っています。また子どもの想像力を何より大切にしています。活字は映像と違い、読者がそこから発想を広げ、想像をふくらませることができます。そこがとても重要で、私どものテキストも余白を大きくとって書き込みができるようにしています。今後、教育の世界もデジタル化は進むと思いますが、私どもは新聞という活字メディアで丁寧にメッセージを伝えることを、これからも大切にしていきたいと思っています」

 日能研といえばこのシリーズの他に、誰もが思い浮かべるのが「シカクいアタマをマルくする。」の電車内広告だろう。こちらは1986年から始め、31年も続いている。この企画にも、中学入試問題の奥深さと、そこに込められたメッセージを伝えたいとの同社の考えが反映されている。

 「私どもは設立以来、私学を応援し続けてきました。私学は昔から、個人が社会のなかで主体的に生きること、自分はどう考えるか、そして他者に貢献することを重視してきました。日能研で学んだ子どもが私学へ進み、私学そのものを、そして社会をも変化させるアンバサダーとなって活躍する。それが私どもの一番の願いです」

 同社が今、展開しているキャッチコピー、「日能研経由、私学へ。—そして未来へ。」には、そんな想いが込められている。