朝日新聞社と共同サイトを立ち上げ経営者の心に響くコンテンツを配信

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先進テクノロジーを活用したマーケティングを推進する日本HPでは、現在コンテンツマーケティングに力を入れています。朝日新聞社と共同で中小企業の経営者を対象にしたサイト「生成発展」を立ち上げ、運営。今後は朝日新聞社の読者データも活用した施策も展開していく予定です。

コンテンツを軸に頻繁にお客様と接点をもつことでエンゲージメントを構築

 自身世界有数の技術ベンダーとして、先進テクノロジーを活用したマーケティングに積極的に取り組んでいる日本HP。多様な働き方を提案する「#1時間勤務」キャンペーンなど、優れたコンテンツマーケティングの実績でも知られている。

 そんな同社では、朝日新聞社とともに中小企業経営の今と未来を考えるメディア「生成発展」を立ち上げ、運営している。その背景には、パソコンという商材の特性、それに基づいて、潜在的な顧客層であり、中長期的なファンともなり得る「ミドルファネル」への継続的なアプローチを重視したマーケティング戦略がある。

 「パソコンは個人の場合で購買サイクルが6、7年と長く、コモディティー化も進んでいます。顧客の購買のタイミングを把握することが難しく、大きくリーチをかけるマスプロモーションだけでは効率が悪い。特に企業向けに重要な最先端テクノロジーの価値も、なかなか伝わりにくい。そのためお客様とのつながりを長期的に保ち、こまめな接触を繰り返し、お客様のことをより深く理解したうえで、テクノロジーの価値を知っていただく必要があるのです」と甲斐氏は語る。

 普段から潜在顧客とのエンゲージメントを強め、企業において購買の瞬間が訪れたときに的確なアプローチをする。そのためにも、厚いミドルファネルを構築することが重要になる。具体的には、デジタル施策だけでなく電話、セミナーやイベントなどフィジカルな接触も組み合わせ、総合的に顧客の行動履歴を見ながら、最適化されたメッセージやコンテンツを発信していく。それが同社のB2Bマーケティングの根幹となる考え方だ。

 「デジタルにおいては、通勤電車のなかでスマホによって気軽に読んだり、視聴したりできるライトなコンテンツを頻繁に提供することで、ゆるやかなエンゲージメントを構築したいと考えています。現在、テクノロジー系のオウンドメディアも運営していますが、一般の方がオウンドメディアに毎日アクセスいただくようにするにはハードルが高い。また、私どもがアプローチしたい経営層を、直接オウンドメディアに集めるのは難しい。そこで彼らが普段から日常的にアクセスしているメディアとのタイアップを考えたのです」

 朝日新聞社との共同サイトを立ち上げた理由を、甲斐氏はそう語る。

コンテンツ制作は新聞社にゆだね今後は読者データも積極的に活用

 現在、オウンドメディアを運営している企業は多いものの、明らかな成功例というものはそれほどない。その要因として、一つは生活者の心に響くコンテンツをつくることが難しいこと。もう一つは、ROIを短期的に設定しすぎる、といった点があげられる。そこで甲斐氏は、「生成発展」のコンテンツの中身に関しては、ターゲットに響く記事が書ける朝日新聞社側に委ねることにした。

パーソナルシステムズ事業統括
コマーシャルマーケティング部
甲斐博一氏

 「朝日新聞社には、そのネットワークと取材力を生かし、日々の経営に悩む中小企業の経営者の心に響き、共感してもらえるコンテンツの制作に専念してもらう。そこからいかにコンバージョンさせていくかは、我々の仕事と、役割分担を明確にしました。最初は朝日新聞社が制作した記事から我々が読んで欲しいテクノロジー関連のページへ誘導するのが難しかったのですが、最近は流入数も徐々に増えています。すでにいくつか案件も発生しています」

 特に反響がよいコンテンツは、雇用や事業継承の課題などに対して、慣習にとらわれず、自由な発想で挑戦している企業の事例だという。

 「中小企業の経営者の多くは時代の変化を前に、今のままではいけないと危機感を抱いているものの、過去の成功体験や社内の抵抗から、なかなか改革できずに悩まれています。そんな経営者に対して、経営は変化を起こすことが前提なんだと背中を押し、勇気を与えるような記事がよく読まれています。そのような経営者の琴線に響くコンテンツをつくるには、我々の力だけでは難しい。実際に制作をお願いし、朝日新聞社ならではの取材力やコンテンツ制作力は、さすがだと思いました」

 ある会社の社長に取材をオフォーしたところ、尊敬している社長が「生成発展」のインタビューに出ていたからと、二つ返事で了承してくれたこともあったという。そのような形で、自然発生的に経営者のネットワークやコミュニティーが生まれていけば理想的だ。

 また同社が朝日新聞社とパートナーシップを組んだ理由として、読者データの活用への期待も大きかったという。

 「朝日新聞社の読者データを2nd party dataとして入手し、DMPによって当社のデータと連携することで、朝日新聞でこういう記事を読んでいる人がうちではこういう記事に関心を示している、などとお客様のことをより深く理解できるようになります。それによって、より効果的なメッセージやコンテンツ配信ができるようになり、無駄な集客への投資も減らせます。今、Eコマースではデータ分析をもとにしたマーケティングは当たり前ですが、そこで使われているのはあくまで購買データです。メディアがもつ行動や属性データは、そのメディアならではの属性をもった人の購買前の興味関心を示すもので、ミドルファネルを構築するうえで非常に有効です。それを分析・活用することで、これまでにないマーケティングが可能になると考えています」

 朝日新聞社とのデータ連携は始まったばかりで、現在、トライアルを重ねている段階だ。

 「新しい取り組みですから壁もあります。でもそこから学ぶプロセスを朝日新聞社と共有し、パートナーとしてともに失敗と成功を経験していくことが、何より重要なことだと考えています」