
超高齢社会に向けて「ロコモ」を周知する活動をスタート
──ロコモティブシンドロームについての啓発活動を始めたきっかけについて教えてください。
私が救急医療などに携わっていた1980〜90年代の整形外科で診療する疾患の多くは、交通事故や労災に起因するものでした。ところが高齢化が進む中で、骨折や、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、変形関節症、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、あるいはこれらを複合的に抱えた患者さんが増えていきました。こうした疾患は、進行すると日常生活に支障が生じ、さらに進行すると介護が必要になるリスクが高まります。これを整形外科医として広く周知していく必要があると、中村耕三東京大学名誉教授と私で2007年に考え出した新語が「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」です。ロコモとは、骨や関節、筋肉、神経などの運動器のトラブルにより、立ったり歩いたりする力が衰えた状態のこと。2007年は折しも日本の高齢化率が21%を超えて超高齢社会に突入した年にあたり、この年からロコモの概念や予防策について周知していく活動を開始しました。知っていただかなければ行動変容につながらないと考えたからです。

──国が推進する「健康日本21(第2次)」の中に、ロコモの認知向上が目標として掲げられ、目標値は80%と高く設定されました。認知向上のために、どのような取り組みを行っていますか?
認知度は健康日本21(第2次)運用開始時点で17.3%でしたが、その後順調に上昇し、開始後2年の2015年時点には、整形外科学会の告知活動もあいまって、認知度は44.4%に達しました。しかし、そこからなかなか5割の壁を超えられませんでした。調査をしてみると、高齢者の認知度は7割近い一方で、働き盛りの若い世代の認知度が低いことがわかりました。若い世代が触れるメディアは多様化しています。そこで、幅広く読まれている新聞での訴求を軸に、新聞とリンクしたインターネットサイト、コンビニエンスストアやタクシーのサイネージで動画を流すなど、メディアを使い分けての訴求を始めています。
ロコモの予兆を早期に発見する4つのサインとは?
──朝日新聞の媒体特性について、どのようにお考えですか?
ロコモを周知していくうえで、新聞は欠かせないメディアです。朝日新聞の読者層は、30〜50代の女性を中心とした読者コミュニティーを持つ「ボンマルシェ」なども含めて、健康に関する社会課題への意識が高いイメージがあります。2024年に朝日新聞で展開した広告特集では、ロコモが全世代に関わる問題であることや、予防が重要であることを、当時の日本整形外科学会学術総会会長の松本守雄先生と、日本整形外科学会理事長の中島康晴先生が伝えました。そのほか「ボンマルシェ」でのタイアップ広告も展開しました。新聞広告での訴求をきっかけに、他のメディアが話題として取り上げる可能性にも期待しました。
──2025年2月に展開した新聞広告では、日本整形外科学会理事長の中島康晴さん、ダンサーのSAMさん、埼玉県立大学准教授の山田恵子さんの鼎談(ていだん)を採録した広告特集を展開しました。
2024年度から開始された「健康日本21(第3次)」では、ロコモの減少が目標として掲げられました。その指標は「足腰に痛みのある高齢者の人数」とされましたが、日本整形外科学会は、ロコモの減少のためには、痛みだけではなく、運動器の機能にも注目すべきであると考えました。2017〜19年にかけては、ロコモの該当率や、年代別基準値、生活習慣などの関係について、対面での1万人調査、2024年にはインターネットでの1万人調査を実施。それらの調査の分析を主導されたのが、山田先生です。分析の結果、ロコモの予兆となる運動器の機能に関する4つのサイン(階段の上り下り、急ぎ足で歩く、休まずに2〜3キロ歩き続ける、スポーツや踊り)が導き出され、これを今回の広告で伝えました。SAMさんは高齢者向けのダンスのワークショップなどを行っています。そこで、片足立ちやスクワットなど「簡単トレーニング」のお手本を示していただきました。簡単トレーニングの動画も制作し、新聞紙面のQRコードを読み込めば、スマホで見ることもできます。さらに、BS朝日でもロコモ対策のCMを放送しました。

──広告掲載後の反響は。
今回の新聞広告には病院関係者からの反響が多く、「新聞広告の増し刷りを病院内に掲示したい」「簡単トレーニングのレクチャー動画を病院の待合室や講演会で流したい」といった声が複数届いています。
「日整会100年」の節目に次の100年に向けたプロジェクトを始動
──日本整形外科学会は2026年に創立100年、翌2027年には第100回の日本整形外科学会学術総会を迎えます。節目を迎えるにあたり、どのようなコミュニケーションを展開していきますか?
近年は医療や福祉の現場で「フレイル対策」という言葉をよく耳にするようになりました。フレイルとは、加齢により心身の働きが弱くなってきた状態のことで、主に「身体的フレイル(筋力や歩行速度の低下、疲れやすさ、体重減少など)」「精神・心理的フレイル(気力や意欲の低下、抑うつ傾向など)」「社会的フレイル(社会とのつながりの希薄化、孤立、閉じこもりなど)」の3つの特徴があります。身体的フレイルは、食・口腔(こうくう)機能を除いて、ほぼ運動器の機能の問題です。身体的フレイルの対策として何が効果的かと言えば、ロコモ対策に他なりません。ただ、現代の日本は、自身がロコモであることを自覚しにくい社会です。階段の横にはエスカレーターがあり、遠くまで買い物に行かなくてもネットショッピングですませることができます。日常生活の中で、自身の運動能力を知る機会が減ってきているわけです。そういう意味でも、ロコモ対策を促すコミュニケーションはこれからも必須と考えています。

日本整形外科学会では、100年の節目を迎えるにあたり、次の100年に向けて「医療のチカラで『運動器』を支え、全ての人に自分で動ける生涯を。」というビジョンを掲げ、ビジョン実現に向けた様々なプロジェクトを進めています。その一つにロコモの啓発活動も含まれていますので、引き続き認知の向上を図るとともに、ロコモサインの早期発見とセルフケアの大切さについて伝えていくつもりです。
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