「成長の糧は至る所にある」木村 慎が語る仕事④ ―面白いと思う仕事を目指す―

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収入を決め手に転職しない

 食品の「買い手」である外食産業と、「売り手」である卸売業者や生産者の仲介を「IT」で行っていた当社へ、2度目の転職で2007年に入社しました。その後、新たに当社は「BtoBプラットフォーム 請求書」事業を立ち上げ、手間のかかる請求書業務のデジタル化というサービスを手がけてきました。「働き方改革」という世の中の流れもあり、業務の簡素化を実感して頂けている手応えを感じています。
 私が転職をしようと思い始めた時、そこにあったのは、今の仕事を精いっぱいやっているけれど、これがやりたいことの全てではないという感覚でした。新卒で入った総合食品商社から次のIT会社に移った時は、インターネットの可能性に魅了されて飛び込びましたが、キャリアの方向性などは考えていなかったですね。ただ面白そうだ、やってみたいという思いだけでした。二つの職を経て7年が過ぎた頃に当社を知り、自分の中で「食品」と「IT」経験がつながっていったのです。
 転職を考えて犯しがちな行動は、現在の経験値を基準に収入アップを目指してしまうことだと思います。私は転職を新たな仕事力の獲得だと考えてきたので、やったことがなくて収入が希望額に満たなくても、「面白そうだ」という自分の感覚で選んできました。そんな本音が自分らしいキャリアになっていくのかもしれません。転職先では慣れない仕事で新人のように苦戦するかもしれませんが、「自分の経歴ならこの金額」といった転職の常識のようなものにはハマらないことです。
 では、どんな基準で選ぶか。まず、あまり真剣に業界や会社研究などはしない(笑)。そういう他者目線より、自分が飽きずにやれそうだとか、ちょっと好きな仕事だとか、そういう観点で選べばいい。どのような会社でも、入ったら必ずあなたが学べることはあるはずですから。そして、自分自身がその会社で稼げる方法に知恵を絞るべきだと思います。
 私が就職面接で一緒に仕事をしたいなと感じる人は、自分が入ってどう働くかをはっきり描ける人。さらに「現場の人に会いたい」と言われたら響きます。自分の仕事を具体的にイメージしようとしているからですね。

新しい働き方が成長を促す

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木村 慎氏

 この数年で仕事環境がよくなってきたと思います。リモートでかなりの仕事ができ、お客様への訪問の時間も削減されました。そうすると朝9時から夕方6時まで会社にいる場合より、仕事から離れる時間は増えてきます。仕事を効率的に終えて時間に余裕ができたら、読書やセミナー視聴など好きな学びにつなげられるかもしれない。私はそういう個人の時間が成長につながると思っています。目の前の仕事に距離を置くと別の視点が見えてくる。それが次の仕事に役立つのではないでしょうか。
 BtoB(企業間取引)を事業とする当社も、その先の一人ひとりのお客様とつながっていきたい。自分で時間を作って「何かに充てる」という行為が、実は会社という囲いから放たれた発想をもたらしてくれるかもしれません。だから私は、会社と個人の真ん中ともいえるリモートの働き方に可能性を感じています。
 これからは、ビジネスパーソンであり生活者でもあるという意識を持ち、その視点で成長して得た新しい提案を、仕事や社会に活(い)かしていってほしいと思います。

木村 慎(きむら・しん)

(株)インフォマート クラウド事業推進部門、事業企画・戦略営業部門 取締役


1976年東京都生まれ。2000年慶應義塾大学商学部卒業。総合食品商社入社後、経営支援サービス会社を経て07年インフォマート入社。電子請求書サービス「BtoBプラットフォーム 請求書」の立ち上げに従事、19年同事業執行役員、22年から現職。