「初めてに、ひるまない」高田 晋作が語る仕事① ―人の近くで顔を見たい―

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ラグビーとは別の社会人の道へ

 中学、高校、そして大学4年間、私の毎日はラグビーが真ん中でした。母校の慶大ラグビー部で、創部100周年のシーズンに大学日本一を果たせたうれしさは忘れられません。でも卒業後は、ラグビー選手としてではなく社会人として、新たに仕事へ向かいたかった。父がメディア業界にいたことにも影響を受け、自ら制作することに引かれてNHKにディレクターとして入りました。スタッフのみんなで番組に取り組む仕事が、チームスポーツのように感じられたのかもしれません。
 地方局に配属となり、各地の自然や暮らし、教育などの多くの番組を制作して数年、その仕事に面白さを見いだしてはいました。しかし5年が経ち、今後の仕事を考えていく中で、なぜかモヤモヤしている自分がいたのです。視聴者はどういう気持ちで私たちの番組を見ているのだろうか、画面の向こう側にいる人たちの顔をリアルに見たい。そんな思いが強くなっていました。
 2004年の国際的なスポーツイベントを応援する番組制作中に、まちづくりに携わる不動産業界の方に出会いました。どうやら不動産業界が担う「まちづくり」の仕事は、私が求めていた「人と近く、顔が見える」仕事が日常のようだと感じて、まちづくりに力を注ぐ三菱地所に転職を決めました。
 最初はビル管理の営業職です。ビル1棟を受け持ち、店舗からオフィスまでお客様とコミュニケーションを取る役割でした。その次は、ベンチャー起業家と大企業との新事業開発の拠点となる「EGG JAPAN」(当時)という、日本ではまだ珍しかったシェアオフィスを約5年間担当しました。賃貸スペースが小さな坪数であっても、「ここは最高だよ」と言ってくださる。役立っているという実感を持てました。
 営業では、もちろん難しいこともありますが、あえてラグビーと照らして言えば、どう相手方と距離を詰めるか、どう思い切って懐に飛び込むかが大事。私も臆せずトライすることを心がけてきました。

新しいプロジェクトはどうか

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高田 晋作氏

 ある時、当社の営業部で「19年には日本にラグビーの国際大会が来るね」という話題になりました。まだ開催2年前ごろのことで、世界3大スポーツ大会とも言われているので海外の富裕層も多く来日するだろうし、東京・丸の内のブランディング(活性化)など、当社のビジネスで関われる機会があるかもしれない。何か可能性がすごくありそうだと思ったのですが、会社ではスポーツへの大型協賛にあまり例はないようでした。
 新しい取り組みに熱くなっていた一方で、社内では「ラグビーの国際大会って何なの?」といった反応。たぶん日本中がそれに近かったでしょう。それでも営業部の上司に話したら「チャレンジしてみてもいいね」と応援してくれ、じわりじわりと部長、役員、そして社長に伝わって「それはやってみよう」と、ラグビーワールドカップ2019日本大会のオフィシャルスポンサーになることが即断されました。当社には約130年前に、日本初の本格的な賃貸オフィスのビジネス街、丸の内をゼロから築き上げたことに代表されるパイオニア精神が息づいており、それで認めてもらえたのだと思います。
 ただ、この時点では取り組みの方針にOKが出ただけで具体的な活動方法は決まらず、うれしいながらもここからが正念場でした。

高田 晋作(たかだ・しんさく)

三菱地所(株) 広報部ユニットリーダー 兼 ラグビーマーケティング室長


1978年東京都生まれ。國學院大學久我山高校を経て、慶應義塾大学卒業。同大ラグビー部主将として日本一を経験。卒業後NHKに入局、2005年に三菱地所へ転職。
三菱地所では12月25日(日)まで東京・丸の内エリアにて松任谷由実さんとのコラボレーション企画を展開中。