「どんな学びも人を支える」初野 正幸が語る仕事① ―広告の制作に憧れて―

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集客の深い役割を実感した

 生涯学習の通信講座を提供する(株)ユーキャンでCM制作や商品開発など、マーケティング全般に携わっています。一人でコツコツとモノ作りをするのが好きな子どもでしたが、高校生の頃にコピーライターブームがあり、広告業界に入りたいと就職先を探しました。大手広告会社での制作は難しいと思い、(株)日本通信教育連盟(現・ユーキャン)で広告の文章を書く仕事があると知り入社、雑誌広告部門に配属されました。
 当時はペン字や書道など趣味系の講座が中心で、4月の入社からいきなり雑誌広告を手がけ、6月にはもう掲載されているというほどのスピード感でした。書店で自分の作った広告を見た時は感動しましたね。まだ主流は雑誌に資料請求のハガキを差し込む募集方法でしたから、お客様の反応がすぐ分かります。先輩も後輩もなく、結果で判断される公平さが仕事のモチベーションでした。
 入社してから数年は反響の大きい広告を作ることにやりがいを感じ、成果を出せる自分はすごいかもと思っていました。でもそれは大きな勘違いだと気づいたのです。当社の商品は売って終わりではない。社会人であるお客様が、資格を取る、スキルを身につける、趣味を楽しむといった自己実現をする、そのお手伝いをしているのだと。そしてこの仕事は教育事業だと、改めて襟を正す気持ちになりました。
 資料請求のハガキ数を競うばかりだった私は、やがて講座勧誘の広告であっても、お客様それぞれが目指すゴールを大切に考え、表現を変えるようになっていったのです。社会人として多忙な30代、40代以降ともなると、テキストを読んでも内容がなかなか頭に入ってこないという難しさがあります。そんな不安にどう寄り添うか、学習を続けるためのハードルをどうやって越えてもらえるかと考えながら広告制作をするようになっていきました。

講座はくっきりと時代を映す

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初野 正幸氏

 当初は暮らしや趣味の分野が中心だった通信講座ですが、時代の変化に伴ってビジネス分野にも広がっていきました。例えば、バブル景気で不動産売買が非常に活発になった時期は宅地建物取引士が大変な人気でしたし、古くは国鉄がJRへと民営化されたことで旅行需要が高まり、旅行業務取扱管理者の受講者が増えていきました。1990年代から一気に伸びたのはパソコン入門講座でしたね。今も、国家資格の取得を含めキャリア講座は求められ続けています。
 高齢化が進んで介護系講座の受講も多いですが、家族や身近な人への適切な介助や予防の知識が身につく認知症介助士も人気です。皆さんは「アンガーマネジメント」という言葉を聞いたことがありますか。当社では10年ほど前にこの講座の開発を企画したのですが、当時はまだ一般的ではなく断念しました。ところが最近改めて講座化したところ大きなヒットとなりました。電車内での諍(いさか)い、あおり運転、虐待、DVなど悲しいニュースも耳にしますが、そういった怒りをコントロールするためのスキルが身につく講座です。
 今は、こういった暮らしの困り事を解決する「ソリューション型」の知識やスキルも学ぶ時代になったと実感しています。講座開発は簡単ではありませんが、常に世の中に目を凝らさなければと考えます。

初野 正幸氏(はつの・まさゆき)

(株)ユーキャン教育事業部執行役員


1964年生まれ。明治学院大学卒業後、87年(株)日本通信教育連盟(現・ユーキャン)新卒入社。以来一貫して教育事業に携わり、営業、指導、講座開発、新規事業とあらゆる業務に従事。現在は執行役員として、CMなどのプロモーションや商品開発を含むマーケティングの全領域を担う。