新聞広告の特性を生かし 読者に有益な求人広告を

 人事募集に特化した広告会社として長年の実績をもつ内藤一水社は、各媒体の求人広告の出稿量や効果などを継続的に調査している。企画調査室の佐藤桂樹氏に、媒体特性を生かした新聞求人広告の今後の可能性をうかがった。

佐藤桂樹氏 佐藤桂樹氏

── 新聞求人広告の現状は。

 労働市場は景気後退の声がきこえるものの、有効求人倍率の急落はなく、企業の採用意欲はまだ旺盛と見ることができます。一方、求人広告は衰退傾向にあり、新聞求人広告は景気が回復した5年ほど前に回復しませんでした。

 ただ、新聞に対する信頼性は揺らいでいません。2004年に東京広告協会が大学生を対象にした調査では、「信頼できる広告媒体」として新聞広告がトップでした。また弊社が昨年から今年にかけて実施した、メディア別平均応募・採用数調査(下図)でも、最も効果があったのは新聞でした。中でも朝日新聞は大学教授の秘書や病院の研究室など、学術的な分野で高い実績をもちます。

── 新聞求人広告の強みを、どのようにとらえていますか。

 新聞が求人誌や求人サイトと異なるのは、日常的に付き合う媒体だという点です。一般には知られていない、将来性のある事業を展開している企業のリポートや、さまざまな職業人のインタビュー記事のような「読ませる企画」は、今は職を探していない層も含む広い読者に、新聞求人広告の存在感を継続的に印象づけます。

 また、朝日新聞に掲載されている「職選広場」のような連合広告にも新しい可能性を感じます。これは合同説明会の開催告知ですが、その役割以上に、各社のHPへの誘導の役割が増しています。新聞求人広告というと小さな文字でびっしりと書かれているイメージがありますが、広い紙面で企業名を効果的に認知させ、詳細をHPで見てもらうという仕組みは新聞の特性を生かしています。

── 新聞求人広告の今後の可能性については。

 新聞求人広告に流れを呼び戻すためには、一般読者の視点をもつことが大事だと思います。求人広告は、企業、媒体、広告会社というプロたちが作っていますが、求職者にプロはいません。「社保完」など用語の意味や、正社員と派遣の違いなどを正確に理解していない読者も多いのが現状です。

 また、記事では食品偽装や偽装派遣を追及しているのに、求人面ではフード業界特集や派遣企業特集が説明なく掲載されています。広告業界では編集と広告の独立性は常識ですが、一般読者には腑(ふ)に落ちません。情報媒体としての新聞の機能を活用した、素人の疑問に答えるページや、「世の中はこういうことになっているが、こんな理由であなたが必要なのです」といった解説記事があれば、読者の注意をよりひくと思います。