新たな価値を創造し続け、未来の社会を支える会社に

 来年創業100周年を迎える帝人。今年2月に「2017—2019 Always Evolving」という中期経営計画を発表し、成長・発展戦略の実行と、それを支える経営システム基盤の強化を図っている。代表取締役社長執行役員 CEOの鈴木純氏に聞いた。

──中期経営計画2017—2019の骨子について、聞かせてください。

帝人代表取締役社長執行役員CEOの鈴木純氏 鈴木純氏

 「帝人は、社員の多様性を活(い)かし、社会が必要とする新たな価値を創造し続け、未来の社会を支える会社になることを目指す」という長期ビジョンを掲げました。この実現に向け、マテリアル事業領域とヘルスケア事業領域を2本の柱とし、強みとするICT技術と融合させながら、既存事業の強化と、新規コアビジネスの確立を図っています。

──マテリアル事業領域の成長に向けてどう取り組んでいますか。

 高機能素材事業の強化に加え、航空機、自動車、鉄道、船舶など、モビリティーをターゲットとした複合材料や部品の事業を収益の柱としていきたいと考えています。中でも自動車は、環境規制対応、EV化、技術革新による設計思想の変革といった潮流に応じて、低燃費化の要請に応える「軽くて強い」高機能素材など、様々な環境価値ソリューションを提供できると考えています。将来的には、IT制御の「ぶつからない自動車」やパーソナルモビリティーなどの発展も考えられます。社員一人ひとりが、「今はまだないが、こんな製品やサービスがあったらいい」という消費者目線を大切にしつつ、新たな価値を創造できる環境整備に努めています。

──ヘルスケア事業領域の成長に向けた取り組み内容についてはいかがでしょうか。

 医薬品は、新規創薬研究に加え、当社が得意とするヘルスケア技術と素材技術を融合させた製品にも注⼒しています。例えば、高い強度と伸長性を兼ね備え、身体の成長による再手術が不要になる心臓パッチや、短時間で強力な止血効果を発揮した後、生体に吸収されるので除去する必要がない外科手術用シート状接着剤など、画期的な製品が生まれています。

 在宅医療の分野では、在宅酸素療法、補助換気療法、睡眠時無呼吸症候群に対する療法、超音波骨折治療などにおいて、医療機器や各種サービスの提供を行っています。在宅医療は、医師、パラメディカル、コメディカル、そして、患者さんと直接結びつく分野です。医薬品はB to B、在宅医療はB to Cの色彩が強い事業です。両⽅に注力している会社は少なく、そこがヘルスケア事業の強みです。

 また、新治療の啓発・研究にも取り組み、磁気刺激を⽤いてうつ病や難治性神経疾患などを治療する技術の導⼊、再⽣医療技術を⽤いて脳梗塞(こうそく)を治療する医薬品の開発なども進めています。

 さらに、⽇本やアジアの⾼齢化が進む中、健康寿命延伸においても貢献できると考えています。東洋⼈の体格に適した⼈⼯関節や、リハビリロボットなどです。医療費抑制の動きがある中、⾮保険領域も含めたヘルスケア総合サービスの提供にも注⼒しています。機能性⾷品素材がその⼀つで、エビデンスの検証を徹底するのが当社の特⻑。健康効果が話題となっているスーパー⼤⻨「バーリーマックス」など、ヒット商品も⽣まれています。

──リーダーとしての信条は。

 かっこつけずに正直でいることです。経営においても、社員一人ひとりが正直でいられる企業風土づくりに努めています。それは、「社員の多様性を活かす」という当社のビジョンにも通じます。多様な人々が率直にアイデアを語り合い、チャレンジに手を挙げやすい職場環境こそが、ビジョンの実現に不可欠だと思っています。

──愛読書は。

 学⽣時代は筒井康隆さんの本を愛読しました。リズム感のある⽂体に魅せられたのです。娯楽系では浅⽥次郎さんも⼤好きです。⽣物学を学んでいた⼤学時代には、「⽣物は遺伝⼦の保存のために⾏動する」という視点で⽣物の成り⽴ちを説き明かす『利⼰的な遺伝⼦』などを⾯⽩く読みました。

鈴木純(すずき・じゅん)

帝人 代表取締役社長執行役員 CEO

1958年東京都生まれ。83年東京大学大学院理学系研究科修了。同年帝人入社。中央研究所、英国の帝人MRC研究所、帝人ファーマ医薬医療企画部長、帝人グループ駐欧州総代表などを経て、2013年取締役常務執行役員。14年4月から現職。

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(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.104(2017年12月27日付朝刊 東京本社版)2.9MB


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