スマホやパソコンで学べる新しいオンライン大学が誕生

 2018年4月に開学予定の東京通信大学は、スマホやパソコンで学べるオンライン大学。1コマの講義が約15分に分けて配信されるので、多忙な日常の合間を利用して受講を積み重ねることができる。学長の村岡洋一氏に、大学のしくみや特性について聞いた。

──東京通信大学設立の目的は。

東京通信大学学長村岡洋一氏 村岡洋一氏

 設立趣旨は主に2つあります。一つは、経済的理由、地理的理由、時間的理由などで通学が難しい人も存分に学べる機会を作るため。もう一つは、社会に出てからの学び直しのニーズに応えるためです。情報マネジメント学部と人間福祉学部の2学部において、生涯を通じて活躍できる人材の育成を目指していきます。学びたいと思う、すべての人に学びの機会を開放します。

──どのような個性を持った大学なのでしょうか。

 本学では、動画配信によるメディア授業を展開します。1コマの講義を約15分に分けて配信するので、スマホやパソコンとインターネット接続環境があれば、最短15分から学習を進めることができます。8コマの受講+単位認定試験(もしくはレポート)で、1単位が取得できます。

 15分というのは、人が集中できる適度な長さで、多忙な日常の合間に捻出できる長さでもあります。通勤時間やランチタイムを利用した、スマホによる「スキマ時間」での受講が可能です。

 教える側からすると、15分に収めるための緻密(ちみつ)な計画が必要で、結果的に濃い講義内容になる。一般大学で90分の講義をしていた経験から実感していることです。

──単位認定試験もオンライン上でできるということですが、本人確認はどのように行うのですか。

 本学では、講義も単位認定試験も、顔認証システムによって本人確認を行います。試験期間中は24時間いつでも受験できるので、忙しい社会人でも安心して単位取得に臨めます。

──教育方針は。

 オンライン大学として最も意識しているのは、授業を一方通行にせず、学生同士、また学生と教授陣との心理的な距離を縮め、双方向でコミュニケーションできる環境を整えることです。具体的には、「授業で分からないポイントをスマホで教員にたずねることができる」、「チャット感覚で教授や他の学生とディスカッションができる」、「スカイプを通じてフェース・トゥ・フェースで教授の話が聞ける」──といったことです。受け身ではなく意欲的に教授陣とコミュニケーションをとる学生が、多く育ってくれればいいなと思っています。

 また、新宿駅前・大阪駅前・名古屋駅前の徒歩3分の便利なロケーションに、キャンパスを設置。パソコンを使っての図書の閲覧やDVDなどの視聴ができるようにしました。一部の資格取得に必要なスクーリングは、この3つのキャンパスの他、札幌、仙台、広島、福岡、那覇などの全国主要都市で実施する予定です。

──教授陣について聞かせてください。

 教授陣はそれぞれに専門知識を持ち、ビジネス経験や教育経験などバックグラウンドも多彩。年齢の幅広さや男女比のバランスも申し分ないと思っています。

 授業の質の向上を追求し、画面に映し出すパワーポイントが分かりやすい内容か、シラバスに沿った講義になっているか、といったことをレビュアーが評価するシステムも整えています。もちろん学生評価も導入します。

──情報マネジメント学部の特徴は。

 ITの専門知識やスキルに加え、社会や企業のしくみに通じ、イノベーションの創出や企業システムの改革に貢献できるような人材の育成を目指します。プログラミング能力はもちろん、社会や経営に関わるマネジメント、データ分析、マーケティングのノウハウを学ぶことができる3つのモデルを設置しています。

 また、同学部は通学不要で大学資格(学士)を取得でき、必要単位を修得することにより、社会調査士、情報処理士、上級情報処理士の資格取得が可能です(一部の資格取得にはスクーリングが必要)。

 実は、情報系企業の社員の7、8割は非情報系の学科出身と言われ、その中には、新しいビジネスのために情報系の知識を得たいという人も多い。高まるニーズに応えられると思っています。

──人間福祉学部の特徴は。

 福祉事業、医療、行政機関などで活躍できる人材を育むカリキュラムを設置。社会的課題を的確に把握し、1つの分野・領域では解決できない複雑な社会的課題に対して包括的な相談援助を行うことができる福祉のスペシャリストを育成します。必要単位を修得することにより、社会福祉士、精神保健福祉士などの国家資格取得も可能です(資格取得には、スクーリングと実習が必要)。

 教授陣からは、情報マネジメント学部と人間福祉学部の特性を組み合わせた、新しい学問の分野の創出を期待する声もあります。学生とともにチャレンジしていきたいですね。

──リーダー信条は。

 私の務めは、多様な人々がそれぞれの意見を主張できる場を作ること。学生と教員が刺激し合い、ともに新しい価値を創造していくような大学を目指していけたらと思っています。

──愛読書は。

 愛読書と言いますか、何度もチャレンジを繰り返している本が2冊あります。『不完全性定理』と『 Theory of Recursive Functions and Effective Computability 』(未邦訳)です。どちらも私にとっては難解すぎて、なかなか読み進められない。だからこそ近くに置いている書です。近年は、小学生や小学校の先生を対象とした教材開発などに携わっているのですが、ストーリーを楽しみながらプログラミングの基礎概念を学べる絵本『ルビィのぼうけん こんにちは! プログラミング』はとても参考になりました。

村岡洋一(むらおか・よういち)

東京通信大学 学長

1942年宮城県生まれ。65年早稲田大学理工学部卒。71年イリノイ大学電気計算学科博士課程修了。同年日本電信電話公社(現・NTT)入社。電気通信所、早稲田大学理工学部教授、同大学副総長などを歴任。2018年4月から東京通信大学学長。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、村岡洋一氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.105(2018年1月31日付朝刊 東京本社版)1.4MB


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