立命館は、北海道・滋賀・京都・大阪・大分にキャンパスを有し、2大学、4附属中学・高等学校、1附属小学校、学生・生徒・児童数5万人を擁する総合学園。理事長の森島朋三氏に、学園の将来像や具体的な取り組みについて聞いた。
──立命館はどのような学園方針を掲げていますか。
立命館は、政治家として、また国際人として知られた西園寺公望を学祖とし、1900年に創設されました。西園寺は「自由と清新」、つまり自由にして進取の気風に富んだ学園の創造を目指し、この精神は立命館学園の建学の精神として今日まで受け継がれています。2006年には、「アジア太平洋地域に位置する日本の学園として、歴史を誠実に見つめ、国際相互理解を通じた多文化共生の学園を確立する──」といった立命館の理念と使命を立命館憲章としてまとめ、これに基づく学園づくりに努めてきました。そして2020年に向け、「Creating a Future Beyond Borders 自分を超える、未来をつくる。」という学園ビジョンを掲げ、学園創造に取り組んでいます。
──早くからグローバル化を進めています。
立命館が目指すのは、「突き抜けたグローバル化」です。国際関係学部の開設(1988年)、多彩な留学プログラムの開発、立命館アジア太平洋大学(APU)の開学(2000年)、附属校3校の「スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業」採択など、学園一体となって国際化を進めてきました。2014年には、立命館大学・APUともに「スーパーグローバル大学(SGU)創成支援事業」に採択されました。SGUの採択を契機に国際教育プログラムを一層充実させていきたいと考えています。
2018年4月には、ジョイント・ディグリー・プログラム「アメリカン大学・立命館大学国際連携学科」を新設。両大学が連携して「グローバル国際関係学」を学ぶ共同のプログラムを設計し、国際社会においてリーダーシップを担える人材の育成を目指します。
2019年4月には「グローバル教養学部」を設置予定です。本学とオーストラリア国立大学で計4年間学ぶことで、両大学の学位を取得できるデュアル・ディグリー(学部共同学位)プログラムを組み込んだカリキュラムを開設、かつてない水準の「突き抜けたグローバル化」を実現していきます。また、中国では情報理工学部と大連理工大学軟件学院が共同で開設するIT学部「大連理工大学・立命館大学国際情報ソフトウェア学部」が2014年9月にスタートしています。
──2018年4月、「食マネジメント学部」も新設されます。
「食マネジメント学部」では、新しい学問分野の開拓に挑戦していきます。具体的には、経済学・経営学を基盤に、マネジメント・カルチャー・テクノロジーの3領域から総合的な「食」に関する深い知見を培い、高度なマネジメント能力と人類的な課題の解決に寄与できる人材の育成を目指します。同学部でも国際化を重視し、包括協定を締結した福井県小浜市などでのフィールドワークや、世界的な食の教育機関であるル・コルドン・ブルーとの共同プログラムなど、多彩なカリキュラムを展開する予定です。
──研究分野の取り組みについては。
国の代表的な競争的資金である科学研究費補助金(科研費)の採択金額ランキング(私立大学)では、5年連続で慶應・早稲田に次ぐ3位まできました。2008年にR-GIRO(立命館グローバル・イノベーション研究機構)を発足、人類にとっての課題を分野横断型の特色ある研究拠点・研究分野を創成してきた成果が現れてきていると思っています。産学官連携の研究も数多く展開、民間企業からの受託研究の数は日本の大学でトップクラスです。社会の要請にこたえる研究分野に注力し、なかでも文理を融合した食・健康・スポーツ・IoTなどの研究分野を強化しています。
──その他、立命館の特色は。
大学のみならず、附属校である小学校や中学・高等学校も含め、学園全体で教育のグローバル化を進めているところが特色です。例えば、立命館宇治高等学校は、世界の大学への出願入学資格を得られる国際バカロレア・ディプロマ・プログラムに基づき、1年次から国語以外の全教科を英語で学習。世界水準の教育を実現しています。
──2018年1月、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長にライフネット生命創業者として知られる出口治明氏が就任しました。
APUでは、現在89カ国・地域から約3,000人の留学生が学んでいます。教員も約半数が外国籍という多文化共生キャンパスです。留学生は日本の生活習慣やルールを学ぶため、入学1年目をキャンパス内にある寮で過ごします。日常生活でも多様な人々と交流できる多文化環境を実現しています。
APUの実績への評価は着実に高まっていますが、首都圏をはじめとしてその認知度はまだ十分ではありません。出口さんの情熱と発信力に期待しています。
──森島理事長は、立命館大学の卒業生ですね。
教師とは違う立場で教育のマネジメントに携わりたいと考え、立命館の職員になりました。1996年から2004年には立命館に籍を置きながら京都・大学センター(現・公益財団法人大学コンソーシアム京都)に出向しました。同センターの目的は、京都市と大学を中心とした産学公の連携によって「大学のまち京都・学生のまち京都」の発展を目指すこと。いわば京都ブランドの発信拠点です。京都市や京都の他大学・企業と連携して様々なプロジェクトに携わり、自由に企画させてもらいました。30代の時にそうした経験ができたのはとても幸運でした。あの経験があったからこそ、今の自分があると思っています。
立命館に戻った2004年からは、小学校設置準備にも携わりました。確かな学力の上に、豊かな個性を花開かせる子供たちが育つ学校をつくるというやりがいある取り組みでした。
──リーダーとして心がけていることは。
リーダーの条件は「志の高さ」と「問いを立てる力」だと思っています。物事を創造するためには想像力を働かせる必要があります。そして、想像力の礎は、読書と経験だと思っています。だからこそ、読書の時間を大事にしています。
──愛読書は。
大学の目的は職業教育ではなく教養ある人間を育成することにあり、文学や歴史などの教養教育は必須だと説くジョン・スチュアート・ミルの講演録『大学教育について』は、「教育は何なのか」という原点に立ち返らせてくれる本です。また、リーダーの心得を説く『貞観政要』の内容は、実行できているかといえばなかなか難しい。だからこそ、いつもそばに置いています。
立命館理事長
1961年大阪府生まれ。86年立命館大学産業社会学部卒。96年学校法人立命館の職員となる。96年から2004年まで京都・大学センター(現・公益財団法人大学コンソーシアム京都)に出向。立命館総務部長、常務理事、専務理事を経て17年7月から現職。
※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、森島朋三氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)
広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.106(2018年2月24日付朝刊 東京本社版)1.5MB
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