広告朝日22号「『100年人生』のライフステージ戦略」のCOVER PICK-UP ARTは外山亮介氏の「作品『芽』より」です。
独特な空気を纏まとったモノクロームの肖像写真。写真家の外山亮介さんがアンブロタイプという技法で撮影した作品だ。アンブロタイプとは、薬品を塗布したガラスに光を焼き付ける写真の古典技法。ガラスそのものが写真作品で、後ろ側に黒い布や紙などを当てて鑑賞する。
「撮影した瞬間の光がカメラを通してそのままガラスに焼き付く、光の結晶のような作品です。薬品は自分で調合したものを使用し、50センチ×60センチのガラスがセットできる自作の巨大なカメラで撮影しています。既製品のカメラやフィルムで撮影するのとは違う、ものづくりをしている感覚で作品を制作できる。それも魅力のひとつです」
この肖像写真には、10年越しのストーリーがある。2008年、外山さんは約3カ月をかけて全国の伝統工芸の産地をめぐり、自分と同じ30歳前後の若手職人20名の肖像写真をフィルムカメラで撮影した。
その際、職人たちの気持ちを引き出すために、10年後の自分に宛てた手紙を書いてもらってから、撮影を行ったという。そしてちょうど10年が経った2018年の9月から、外山さんは預かっていた手紙と共に再び職人のもとを訪ね、今度はその手紙を読んでもらった後に、アンブロタイプで肖像写真を撮影している。
10年前の作品タイトルは「種」。現在制作中の作品タイトルは「芽」。完成したら、種と芽、そして職人が手がけた工芸品を一緒に展示する計画もある。活動の周知と資金集めを目的に、クラウドファンディングも実施。見事、目標金額を達成した。
「展示会場では、職人たちの制作工程の映像も流す予定です。映像を通じて、ものづくりの現場の穏やかな時間の流れを体感してもらいながら、写真や工芸品をじっくり見てほしいと思っています」
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クリエーターインタビュー
カメラは自作、工芸作品と混ざり合う古典技法のアナログ写真 写真家 外山亮介氏