自由闊達(かったつ)な社風を醸成し、心のやすらぎと健康に寄与する会社を目指していきたい

 創業70周年を迎えた昨年、ロッテ、ロッテ商事、ロッテアイスの3社が合併。新たなスタートを切ったロッテ。代表取締役 社長執行役員の牛膓栄一氏に、新しい経営体制にかける思いや、経営戦略などについて聞いた。

──3社統合のねらいは。

ロッテ 代表取締役社長執行役員 牛膓栄一氏牛膓栄一氏

 これまでは、ロッテが菓⼦とアイスの製造、ロッテ商事が菓⼦の販売、ロッテアイスがアイスの販売を担ってきました。しかし、消費者のニーズが多様化し、激しく変化する中では、製造から販売までを⼀気通貫で⾏うのが会社のあるべき姿であり、迅速な意思決定、事業競争力を高めるために、3社統合に⾄りました。

 統合は従業員の意識改⾰にもつながると考えています。私は長く菓子販売の営業を担当していたので、外部の方と接する機会が多くありました。そうした中で自社がいわゆる大企業病に陥っていないかという危機感がありました。トップへの依存心からくる自発性の弱さ、セクショナリズム、安定志向といったことです。まずそこを変えるべく、自由闊達に議論する、失敗を恐れずチャレンジする、個の力を育む、この3つに重点を置いた組織づくりに取り組んでいます。社長として社員向けのブログで思いを発信したり、社内の飲み会に参加したりと、社員との交流も大事にしています。

──具体的な成長戦略は。

 5,000億円の売上⾼を⽬標に掲げています。主力ブランドを中心に営業利益も500億円に引き上げたいと考えています。また、現在は約10%程度の海外売上比率を、20%あるいはそれ以上に高めることを目標にしています。

 会社としての社会的価値の向上にも全力で取り組んでいます。2018年11月にはESG(環境・社会・ガバナンス)中期目標を設定。5つのテーマ(食の安全・安心、食と健康、環境、持続可能な調達、従業員の能力発揮)において、SDGsなど外部のイニシアチブに貢献できるように、意欲的な目標を掲げました。例えば、食品企業として正面から取り組むべき「食品ロスの削減」については、SDGsが目指す2030年までに半減させるという目標を2年前倒し、2028年までに達成する目標としました。

──「乳酸菌ショコラ」や「歯につきにくいガム〈記憶力を維持するタイプ〉」など、画期的な商品がヒットしています。

 当社の強みは、技術力と最高品質へのこだわりです。最⾼の原料を使い、安⼼・安全でおいしい商品を提供し続けています。近年は、人々の健康志向や高齢化が進む中で、「腸内環境の改善」を訴求した「乳酸菌ショコラ」や、記憶力(言葉や図形などを覚え、思い出す能力)を維持すると報告があるイチョウ葉抽出物配合の「歯につきにくいガム〈記憶力を維持するタイプ〉」など、技術力を生かした機能性を持つ食品が多くの支持をいただいています。

 当社は1948年の創業以来、ガムを作り続けてきました。2003年に特定保健用食品の許可をいただいた「キシリトールガム」は、⻭を丈夫で健康に保つ機能があるガムとして知られています。近年は、医学や科学の進歩によって「噛(か)むこと」がもたらす意外な効果が次々と明らかになっています。そこで、「噛むこと」の良さを広めるべく、歯学、スポーツ科学、栄養学などの研究者と「噛むこと」の可能性を探る「噛むこと研究部」を設置。例えば、「ガムをかんで歩くとカロリー消費が高まる」というエビデンスをもとにスポーツ用品メーカーと組んでスポーツメソッドを開発したり、千葉ロッテマリーンズの選手一人ひとりの「噛む力」を測定し、それぞれに合ったガムを作って提供したりと、ユニークな試みを始めています。

──人材育成について、心がけていることは。

ロッテ 代表取締役社長 牛膓栄一氏

 当社のお菓子やアイスは、若い世代に広く支持されています。商品企画や宣伝戦略においても若い感覚が不可欠と考え、若手社員がのびのびと能力を発揮できる環境づくりに努めています。「ガーナチョコレート」「キシリトールガム」など売上目標300億円を掲げる主力ブランドのリーダーも30代の若手に任せています。

 昨年多くの反響をいただいたロッテ創立70周年の記念アニメーション「ベイビーアイラブユーだぜ」の制作も、若手社員を中心とするメンバーに任せました。企画・プロデュースをお願いした川村元気さんと活発に議論を交わす様子は実に頼もしかったですね。ロッテブランドの世界観を伝えるアニメーションは、12⽉12⽇の公開後、3⽇⽬にして100万回再⽣を突破しました。今も視聴され続けています。社員たちには、こうした成果と自信を次なるチャレンジにつなげてほしいと思っています。

──仕事において大事にしてきたことは。

 うそをつかず、真面目に仕事と向き合うことです。それが信頼につながり、成果につながることを実感してきました。人生にはいい時と悪い時があります。でもトータルすればプラスマイナスゼロで、いちいち一喜一憂する必要はないということも営業の仕事を通して学びました。悪い時には「悪いことばかりだ」と悲観せず、「この程度ですんだ」と前向きにとらえる。いい時には「自分の実力だ」とおごらず、「ついているだけだ」と謙虚に構える。そういった心の持ちようも大切だと思います。

──今後の課題は。

 海外事業の拡⼤です。当社は早くからタイ、ベトナム、インドネシアに⼯場を構えています。2010年には中・東欧地域で歴史のあるポーランドのウェデル社を買収しました。いずれも業績は順調で、さらに拡充を図っていけたらと考えています。欧米は巨⼤なマーケットなので、チャレンジしていきたいです。もちろん国内マーケットも⼤いに刺激していきたいと思っています。お菓⼦やアイスを通して世界中の⼈々の⼼のやすらぎと健康に寄与する会社であり続けたいですね。

──愛読書は。

ロッテ 代表取締役社長 牛膓栄一氏

 小説は『蝉しぐれ』をはじめとする藤沢周平の作品に惹(ひ)かれます。主人公の生き様をサラリーマンの人生に重ねて読むと味わい深く、戦国武将の派手な立身出世ものよりずっと好きですね。『百花』は、今をときめくコンテンツメーカー、川村元気さんの最新作です。昨年、ロッテ創業70周年記念アニメーションの企画・プロデュースをお願いしたご縁もあってこの小説を手に取りました。あと、野球マンガ『キャプテン』も思い出深いです。小学生の頃に読んだのですが、振り返ると私の組織づくりの原点であり理想とも言える作品だったなと思います。

牛膓栄一(ごちょう・えいいち)

ロッテ 代表取締役 社長執行役員

1960年神奈川県生まれ。83年明治大学政経学部卒。同年ロッテ入社。2008年ロッテ商事営業統轄部執行役員。15年同社常務取締役。同年ロッテホールディングス取締役(兼任)。18年4月から現職。

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(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.124(2019年9月30日付朝刊 東京本社版)1.3MB


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