COVER PICK-UP ART

 広告朝日27号「学びの新世紀 ─2020年を超えて」のCOVER PICK-UP ARTは陶芸作家 二階堂明弘氏の「器」です。

『広告朝日』27号 表紙

 陶芸家の二階堂明弘さんは陶芸を始めた当初、陶芸におけるアートは「オブジェ」であり、用途のある「器」はアートではないという考えがあることを知った。その考えには違和感があったが、陶芸家として活動するようになっても、自分なりの答えを見いだせずにいたという。

 「お土産屋さんで販売する『作家モノ』と言われる安い器をつくりながら、アート作品としてオブジェもつくっていました。でも、オブジェは全然売れない。オブジェをつくってもアートだとは納得できず、器も自分の作品とは言えないようなものだった。どっちつかずの日々が続き、悩んで作品がつくれない時期もありました」

 悩んだ末に二階堂さんが出した結論は、「自分がいいと思う器をつくること」。器もオブジェも、突き詰めていけば作家の思考から生まれたものだ。器がアートかどうか、それを決めるのは自分だと気付いたという。

 それから二階堂さんは、自分の足元にある土を使い、自分がつくりたいものをつくろうと、当時暮らしていた益子の土の良さをシンプルに引き出す器づくりを始めた。益子らしさではなく、自分らしさ。それを追求して完成したのが、黒い器だった。

 今から12年ほど前、食器といえば白い器が一般的だった。黒い器は珍しく、最初の1、2年は売れなかった。だが、あきらめずにつくり続けていくうちに、世の中の「もの」に対する意識が少しずつ変化してきたように感じたという。

 黒い器は使っていくうちに、染みができて色が変わってくる。それが経年変化の美しさとして受け入れられるようになってきたのだ。感度の高い飲食店や料理家が使ってくれたことをきっかけに、二階堂さんの器の魅力が広く知られるようになっていった。

 「売れない時期に作家性を曲げてまで陶芸をやる必要はないと、アルバイトもせずに没頭して作品を作り続けた。自分の作品に自信があったからこそ、やめるという選択肢はなかった」

 現在は、国内にとどまらず海外へと活動の場を広げている。12月には東京・浅草橋にあるルーサイトギャラリーで個展が開催される予定だ。

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クリエーターインタビュー
器が育つ、経年変化も美のひとつ。器を通じて日本文化を世界で発信  陶芸作家 二階堂明弘氏