甘いばかりではない英国人にとってのバレンタイン

 ここ英国では、バレンタインには男性が女性にプレゼントをするのが主流だ。2月14日当日には、花屋に列ができ、駅前やスーパーにも特設テントができる。大小さまざまな花束を抱えた男性はどこか誇らしげで、ほほえましい。

 Marks and Spencerの新聞広告<br />画像はテレビCMのyoutubeへリンクします Marks and Spencerの新聞広告
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 イギリス人の配偶者を持つ同僚の日本人女性は、「財布は同じだからもういいって言うんですけど、それでも夫は毎年何か用意しています」という話をしていた。愛する人を喜ばせたい、というサービス精神旺盛なところが欧米人らしいと感じた。

 The Drumの調べでは、今年のバレンタインに関する消費の総額は、昨年の1.3ビリオンポンド(約2,100億円)から1.9ビリオンポンド(約3,100億円)に増えたとされている。その内訳をみてみると、トップは「ディナーを共にする」だった。なるほど、新聞をめくると大手スーパーマーケットによるバレンタインディナーの提案をした広告が掲載されている。

 一方で、正反対のアンケート結果もある。ラディウムワンが英国の18歳以上1,000名を対象に聞いたアンケートによると、バレンタインデーに対してポジティブな印象を持つ人は、14%だったという。また、プレゼントを買うと答えた人が50%だった昨年に比べ、今年は45%に減少してしまった。プレゼントを用意する時期について聞くと、約70%の人が「2月に入るまで予定を立てるつもりがない」と答え、これも昨年の64%を上回った。残念ながら甘い雰囲気が伝わってこない結果である。このような、バレンタインに対して「ポジティブになれない人」に向けられたようなテレビCMも見受けられた。

NHS(国民保険サービス)のテレビCM

 バレンタインのデートで余計なことを言って、困らせたり怒らせたりする様子をおもしろおかしく紹介し、「言わぬが仏の場合もあるけれど、臓器提供の決断について、愛する人とバレンタインデーに話しませんか」という問いかけをしたNHS(国民保険サービス)。まったくロマンチックな雰囲気のない映像とともに、臓器提供というテーマを連動させ話題になった。

※画像は拡大表示します。 アディダスのインスタグラム アディダスのインスタグラム

 また、前出のThe Drumの調査によると、ほぼ半数の人がデジタルデバイスを利用してバレンタインデーのイベントを調べたり、プレゼントを購入したりしているという。そんな中、アディダスのインスタグラムの広告が話題になった。女性同士がキスをしていると思われる写真とともに、「The love you take is equal to the love you make.(あなたが得られる愛は、あなたが与える愛に等しい)」というビートルズの曲の歌詞にも出てくるメッセージが添えられた投稿。これに対し、一部のフォロワーからは「これからはナイキにかえる」などの批判的なツイートが相次いだが、それに対しアディダスはバイバイと手を振る絵文字とキスマークで答えたのだ。インスタグラムのキャンペーンとしては大成功ともいえる21万を超える「いいね」を獲得し、結果的には失ったファンよりも新たに獲得したファンのほうが多いと評価を受けた。

 案外ロマンチストばかりでもないことを知った、ここ英国でのバレンタインデー。マーケティング戦略をたてるのもなかなか難しい。ちなみに、冒頭でご紹介した同僚の女性に後日、今年は何をもらったかを聞いてみた。すると、「手作りのカードだけだったんです!ついThat's it? (それだけ?)って言ってしまいました」とのこと。財布は一緒だからいらなかったのでは?と思いつつも、そう簡単にはいかないのが乙女心だ。

(朝日新聞社 広告局 ロンドン駐在 金井 文)