英国人を悩ませる、年に一度の「ブルーマンデー」

 日曜日の夕方、サザエさんの放送が始まると「週末も終わったな」と寂しい気持ちになる、と友人が言っていたのを思い出す。月曜日は「ブルー」になる人も少なくないだろう。

 今回ご紹介する「ブルーマンデー」とは、毎年1月の第3月曜日にだけ英国にやってくる、年に一度の「ブルーな日」のことである。

※画像はPDFへリンクします。 2015年1月18日付デイリーミラー紙 2015年1月18日付デイリーミラー紙

 今年の「ブルーマンデー」である1月18日付のデイリーミラー紙では、「ブルーマンデーを克服する21の方法」という特集が組まれたほか、サン紙も「元気になる10の方法」を紹介した。「心地よいブランケットを用意すること」や「ソーシャルメディアをやめてみる」にはじまり、「一日中食べ続ける」や「前屈でつま先をタッチする」などの不思議な項目も並ぶ。

 「ブルーマンデー」と呼ばれる1月第3週の月曜日は、統計的にまだ日が短く天気の悪い日であることが多く、1年でもっとも人々が落ち込む日だそうだ。クリスマスで散財したにもかかわらず給料日まではまだ遠く、暖かい夏まではさらに遠いということからくる気分の落ち込みが原因とも言われている。2005年にカーディフ大学の指導教員だったアーナル氏がこの統計を発表し、スカイホリデーという旅行会社がこの日を「ブルーマンデー」として宣伝に利用したことが、注目されるきっかけとなったそうだ。残念ながら当時の広告を見つけることができなかったのだが、追随した他の企業は、今年もユニークな広告を打ち出していたので紹介したい。

※画像は拡大表示します。 ブリティッシュエアウェイズの広告 ブリティッシュエアウェイズの広告

 ブリティッシュエアウェイズは、「今日はレッド、ホワイト、そしてブルーマンデー。北アメリカ便販売中」という見出しの広告を、インディペンデント紙に掲載した。アメリカの国旗と同社のブランドカラーをうまく表現したコピーである。また、「夏休みの予約を取って気分を盛り上げよう」という趣旨の旅行会社の広告も目立っていた。パリツーリストオフィスは、SNSを使ってするなど、英国人のうつな気分を旅行という楽しいムードに誘導する作戦に出た。

 量販店最大手のテスコは、という名の、ブルーベリーをはじめフルーツを無料で配るサービスを実施。果物のパワーで元気をチャージしてほしいという狙いだ。

 その日に店員が「いいな」と思った人にだけコーヒーを無料にするという、かわったサービスをすることで有名な英国のコーヒーチェーン、プレタマンジェはブルーマンデーの1日限定で、 10万人を対象にコーヒーを無料で提供した。5万個の限定スリーブ付きのコーヒーをもらった人が、そのスリーブをあげた人と一緒に再訪すると、スリーブを譲り受けた人もコーヒーが無料になるという方法だ。これなら常連客を満足させるだけでなく、スターバックスなど競合店の常連客にリーチできる可能性も高い。

ボイラーメーカーの「ヴァイラント」のキャンペーン

 ネーティブアドと参加型のリアルキャンペーンにチャレンジしたのは、ボイラーメーカーのヴァイラントだ。バーミンガムやマンチェスターなどの主要駅にコーヒーマシーンを用意し、その前に笑顔で立つとコーヒーやホットチョコレートが出てくるというサービスを実施。右の動画は昨年のロンドン、ヴィクトリア駅での様子である。また、#keepsmiling で投稿すると目の前のビッグスクリーンにアップされた様子が映し出されるため、ついツイートしたくなる心理をうまく利用している。

※画像は拡大表示します。 デイリー・テレグラフ紙 デイリー・テレグラフ紙

 同社は、他紙同様にブルーマンデーの過ごし方の特集を組んでいたデイリー・テレグラフ紙に、ネーティブアドも掲載した。ひと目では編集記事とかわらない、同社の商品紹介もない広告で、左上に小さく「スポンサード バイ ヴァイラント」と入っている。実施しているホットドリンクサービスのことを告知したくなるものだが、これにも全く触れられておらず、徹底して“記事”として読ませているのも興味深い。

 今年の1月18日も期待を裏切らず、やはり小雨の降る寒い一日で、各社のブルーマンデーキャンペーンは盛り上がったと言える。筆者としては、こんなにもブルーになってしまうほどホリデーを満喫できる英国人がむしろうらやましい気もするが、これもまた英国人らしい皮肉なジョークなのかもしれない。

 ちなみに、ブルーマンデーの生みの親であるスカイトラベル社はもう営業を停止してしまっていた。それを知ったときになんとなくブルーな気分になった筆者である。

(朝日新聞社 広告局 ロンドン駐在 金井 文)