ゲイフレンドリーな英国へようこそ! 同性婚の法制化と連動した観光プロモーション

 「かっこいい男の人はゲイであることが多いのよ」とがっかりする女性の声を聞く。とはいえ、「自分に脈ナシ」と残念がることはあっても、手をつないでいる同性カップルを気にしない、そんな「日常」が欧州にはあるようだ。ちなみに、誤解のないように説明をしておくと、ゲイという言葉は男性同士を指すこともあるが、女性同士、すなわちレズビアンのことも同時に指すことが多く、新聞では、「Same-Sex marriage」 や「Gay marriage」という見出しが使われている。

※画像は拡大表示します。 内閣府に掲げられたレインボーフラッグ 内閣府に掲げられたレインボーフラッグ

 ここ英国にて、3月29日、同性婚が法律で認められ、前日の深夜から翌日にかけて、数百組のカップルが挙式した。英国は比較的同性愛者に対して理解のある国とされており、シビルパートナーシップ法という制度が2005年にできたことで、同性間でも結婚をしているカップルと同等の権利が認められていた。ただ、法律上の結婚を認めてほしいという声は強く、昨年一足早く認められたフランスに続く形での、今回の法律改正に至った。記念すべき法律の施行日である29日から3日間、ロンドンの内閣府ではレインボーフラッグが掲げられていたのが印象的だ。英国国教会や保守党からは反対の声が根強くあったものの、国民の約7割が今回の法律改正に賛成していた(BBCラジオ5調査より)。

 英国全人口の約5~7%とされるゲイの人々(ガーディアン紙2013年10月3日より)、その大多数を占めているのが16~24歳までで、25~34歳、35~49歳はほぼ同数、50歳以上になると一気に少なくなる。その人口ボリュームはマーケットとして大きいとはいえないが、ゲイマーケティングに力を入れる企業は少なくない。そのひとつが“観光業界”である。

ヴァージンアトランティック航空とヴァージンホリデーのお祝いメッセージ広告 ヴァージンアトランティック航空と
ヴァージンホリデーの
お祝いメッセージ広告

 ヴァージンアトランティック航空とヴァージンホリデーは、昨年の法案通過のタイミングと今回の施行の際にお祝いのメッセージ広告をソーシャルメディアで行った。“Same Sex Marriage Bill Passed. Time for a Honeymoon(同姓婚が法案を通過しました。さあハネムーンに行こう)” というコピー通り、新婚旅行の需要を見込んだキャンペーンである。この広告はフェイスブックで5,475件のシェアを記録し、同社の最高記録をたたき出した。

 また、英国政府観光庁の「VISIT BRITAIN」でも、ホテルチェーンのラディソンブルーとともにキャンペーンを展開、専用のウェブサイト「Love is great」を立ち上げ、同姓婚の挙式が認められている教会やイベントの紹介などをアップし、ゲイフレンドリーな英国をアピールしている。

英国政府観光庁のキャンペーン 英国政府観光庁の
キャンペーン

 ゲイのシェアの高い米国では、専用の窓口も設置するほどの力の入れ様だ。英国観光庁はこのキャンペーンにより、少なくとも一年に100万ポンドによる収益の増加を目指しているという。というのも、結婚をせず同居を続ける異性のカップルはこの10年で22%も増えており(Office for National Statistics 調べ)、ハネムーンの需要も縮小傾向にある。観光業界が今回の法律改正に期待するというのもうなずける。

 先日、開催されたソチ五輪でもたびたびニュースとして取り上げられた、各国における同性愛者に対する反応。日本ではまだ「日常的な話題」ではないように思える。東京五輪の行われる2020年にどれほどの変化が起こっているだろうか。

 (朝日新聞社 広告局 ロンドン駐在 金井 文)