築数十年は当たり前 シリコンバレーの住宅事情

 「東京から新規事業のネタを探しに来たんだよね」というと、決まって「それはクールだね」と返ってくる。毎日、街のどこかしらで「ミートアップ」と呼ばれるイベントが行われている。スタンフォード大学やUCバークリー校といった著名な大学、Apple、Google、Facebook、Salesforce、Oracleなどのソフトウエア/IT企業、Intelやciscoといったハードウエア企業などが軒並み集積するサンフランシスコ湾を取り囲む盆地地帯、通称シリコンバレー。そんな刺激にあふれる場所に、新規事業のネタ探しなどを目的に、3月末から駐在することになった。

 テクノロジーの進化は予想以上に早く激しく、メディアの役割も大きく変わりつつある。そんな時代に朝日新聞社はどうかわるのか。新しいテクノロジーは、私たちの暮らしをどう変えていくのか。世界のイノベーションの中心地といわれるサンフランシスコ・シリコンバレー周辺の話題をこれからお届けしていく。

 ところで、シリコンバレーとは、具体的にはどのあたりのことを言うのか。在サンフランシスコ日本国総領事館の資料によれば、シリコンバレーとは「サンフランシスコ湾を取り囲む盆地地帯に半導体やコンピューター関連産業が集積したことによる呼称(明確な地理的定義はない)。例えば、非営利団体「Joint Venture Silicon Valley Network」の定義では、サンノゼ市を中心とするサンタクララ郡全域、スタンフォード大学やサンマテオ市のあるサンマテオ郡全域、UCバークリーやオークランド市のあるアラメダ郡の一部及びサンタクルーズ郡の一部から構成される面積約1,854平方マイル(約4,800万平方キロ)の地域を指す」とある。サンフランシスコとシリコンバレーをまとめて「ベイエリア」と呼ぶこともある。

 シリコンバレー入りして最初の仕事は家探し。IT企業を中心に好況に沸くベイエリア最大の懸念事項は、家賃の急騰だ。現地に赴く前に、craigslistで、Stanford大学があるパロアルト市内の3ベッドルーム/2バスの平均家賃を調べてみたところ、該当する物件、約70件の平均家賃は約6,700米ドル。日本円で83万7,500円(1米ドル=125円換算)となる。住んだことはないけれど、きっと都心の高級マンションの家賃と同じくらいなのだと思う。

 さらに驚くことに、シリコンバレー界隈(かいわい)の家、特に一戸建ては築年数が驚くほど古い。築30年、40年は当たり前。私が借りることにした家は築50年だ。リノベーションを繰り返しに繰り返しているので、一見すると非常にきれいに見える。でも壁をよく見ると、何かのはずみで出来た穴を埋めた跡などを見つけることが出来る。一番のくせ者は、水道管や排水管だ。これらは往々にして改修されておらず、あるとき突然、逆流や排水管のつまりという荒業を繰り出してくる。知人は、水道管が破裂するという惨事に見舞われたそうだ。

 需要が多いので、シリコンバレーの大家さんはおおむね強気だ。契約は基本的に1年。契約更新時には家賃の値上げという恐ろしいオプションがついてくるが、その上げ方が素晴らしい。周りの人たちの話をまとめると、まず月額ベースで10%程度の値上げ案が提示される。ここで素直に受け入れずに交渉を重ねて、5%程度の値上げに落ち着かせるケースが多いようだ。ここシリコンバレーでは、何ごとも交渉が大切なのである。

 ここはシリコンバレー。家探しにもネットが欠かせない。数あるサービスの中でも「Zillow」には大変お世話になった。間取りや周囲の物件価格などが分かるのはもちろんのこと、家賃がどう変化したかや子どもが通うことになる学校の情報、Zillowオリジナルの計算式からはじき出した妥当性が高いと思われる家賃、これまでに何人のユーザーがその物件を見たかなどを確認することが出来るし、管理している不動産業者への連絡も可能だ。私も日本からZillowを使って家を探したが、本当に便利なツールだと感心した。もちろん、家賃の変遷などを調べたいときにはメールアドレスの登録が必要なことは言うまでもない。

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Zillow検索画面

Zillow検索画面

(朝日新聞社 メディアラボ 米シリコンバレー駐在 野澤 博)

野澤 博(のざわ・ひろし)

2000年入社。デジタル事業、紙面編集、経営企画等の仕事を経て、12年1月から報道局デジタル編集長。15年3月末からメディアラボ米シリコンバレー駐在。