「FB経済圏」の行方

 米フェイスブック(FB)の開発者会議「F8」が、5月1日、2日の両日、カリフォルニア州サンノゼ市で開催された。

 マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は、いつものTシャツ姿で登場。わずか数週間前には、米議会の公聴会で厳しく追及され、「我々は会社を経営する上でたくさんの間違いを犯してきました」などと謝罪したザッカーバーグ氏だが、ここでは、終始余裕の表情を見せた。

 改革姿勢を示す狙いもあるのか、今後の重点テーマとして「選挙の公平性を守る(Protecting Election Integrity)」「フェイクニュースと戦う(Fighting Fake News)」「個人情報を保護する(Data Privacy)」の3つをあげ、起業当時の「コミュニティー重視」に立ち返ることを明言した。

米議会の公聴会を受けて、今後の重点テーマとして「選挙の公平性を守る」「フェイクニュースと戦う」「個人情報を保護する」の3つをあげた。

 FBアプリ向けに開発した機能を、FB MessengerやInstagram、WhatsAppなど傘下のアプリに展開している感じが強く、目新しい発表が少なかった中で、年内にも「デーティング機能」(出会い機能)をローンチするという発表は注目を集めた。

 デーティング機能は、FBアプリに組み込まれる。利用したい人は、専用のプロフィールページを新たに作成。興味のあるイベントページなどを開くと、参加を予定しているほかのユーザーの写真や自己紹介が見られるようになると同時に、おすすめの相手も表示されるという。すでに友だちになっているユーザーや、デーティング機能を使っていないユーザーはおすすめされない仕組みのようだ。

 米国のデーティングサービスの市場規模は30億米ドル。結婚するカップルの3組に1組は、オンラインサービスで知り合っているという。Match.com、Tinder、bumbleなどのオンライン・デーティング・アプリも数多く、EastMeetEast、Muzmatch、JSwipeなど、特化型のアプリの競争も激しい。ニューヨーク・タイムズ紙のウェディングコーナーでは、「Tinderで知り合いました」などの記述も珍しくない。「右スワイプ」「左スワイプ」がそれぞれ、「気に入った」「気に入らない」というジェスチャーとして市民権を持つようになっている。日本でも、Pairs、Omiaiといったサービスがユーザー数を伸ばし、結婚するカップルのおよそ10組に1組が、オンラインサービスで知り合っていると聞く。そんな状況の中で、ユーザー情報を持っているFBがデーティング事業に乗り出し、ユーザーのエンゲージメントを高めようと考えるのは必然的と思える。

年内にもローンチするという
「デーティング機能」

 オンライン・デーティング・アプリの多くは、FBアカウントでログインしたり、マーケティングにFBを利用していることが多く、FBに依存したビジネスになっている。FBのユーザー数は、およそ20億人。そのうち2億人が独身というのだから、FBはサービス開始とともに、2億人の見込みユーザーを持つことになる。これでは競合のサービスはひとたまりもない。実際、デーティング機能が発表されて、オンライン・デーティング大手Match.comの株価は、最大で20%も下落した。

 FBはデーティング機能と合わせて、サイトやアプリの閲覧履歴のうち、FBに情報を送っているものを一覧にし、ユーザーがまとめて履歴を消去できるようにする機能「Clear History」を、今後数カ月のうちにローンチすると発表した。

 ユーザーの情報を元にした情報や広告の表示で、FBはユーザーの利便性を高め、同時に広告収入を伸ばしてきた。ユーザーは自分の情報を提供することで、便利さを手に入れてきたわけだが、人生の一大イベントの一つ「結婚」までもFBがお世話しようというのであれば、より一層の個人情報の管理が求められる。折しもEUでは、一般データ保護規制(General Data Protection Regulation)が施行された。FBの今回のセキュリティーに関する取り組みが機能するかどうかは、「FB経済圏」がこれまで通りの力を持つのか、それとも弱体のきっかけになるのか、大きな分岐点になるだろう。

(朝日新聞社 メディアラボ 米シリコンバレー駐在 野澤 博)