新聞でしか捉えられない ユーザーの獲得目指す

 TSUTAYAグループにおけるネットサービスを取りまとめるT-MEDIAホールディングスは、今年のゴールデンウィークに新聞広告を出稿。有料会員の獲得を目的としてキャンペーンを展開、広告紙面では検索窓とQRコードで、自社サイトへの誘導を図りました。

動画配信サービス 月額課金制へのシフト狙う

星野大輔氏 星野大輔氏

 「新聞でしかアプローチできない層を捉えたい」。そう語るのは、T-MEDIAホールディングスの星野大輔氏。TSUTAYAグループのネットサービスを扱う同社では、数年にわたり定期的に新聞広告を出稿している。

 これまでは主に、月額課金のビジネスモデルが安定しているネット宅配レンタルの「TSUTAYA DISCAS」(以下ディスカス)で、無料のトライアル促進のために新聞広告を活用。この1年ほどは、ユーザー層の近い動画配信の「TSUTAYA TV」(以下ツタヤTV)も併せて紹介していた。

 そんな中、今年のゴールデンウィークに出稿した紙面では、ツタヤTVでも無料トライアル訴求を強調。さらにもう1種、今年4月にローンチしたブラウザーゲームのプラットフォーム「TSUTAYA オンラインゲーム」の広告を出稿した。いずれも、今年度に同社が注力する事業だ。

 これらのネットサービスと、サービスを統合するウェブサイト「Tサイト」のプロモーションなどを統括する星野氏は、まず二つの映像事業のユーザー層について「主に30~ 40代が中心」と話す。特に動画配信のツタヤTVは、テレビでの視聴を前提にしたクオリティーの高い画質が、映像にこだわりのあるユーザーに支持されている。圧倒的に男性が多く、所得もやや高い傾向があるという。

 ツタヤTVは、これまで1本ごとの課金がメインだった。しかし現在、スマートフォンによって広がっている動画視聴習慣も追い風に、サービスの充実と顧客の拡大を目指して秋にリニューアルを予定。同時に、安定的な収益を見込める月額課金制へシフトさせる戦略を立て、今回のクリエーティブを制作した。「ゴールデンウィークは動画配信を無料で観よう! 最新作もOK!」(ツタヤTV)「DVD&ブルーレイ&CDも! 借り放題¥0」(ディスカス)を広告コピーにしてアピールした紙面は、大きな反響を呼んだ。「『無料でお試し』はやはり効果が高いです。特に若年層には0円というハードルの低さが有効なのでしょう」(星野氏)

ブラウザーゲームへ本格参入 新聞広告で初速に弾み

※画像は拡大表示します。

2015年5月2日付 朝刊 2015年5月2日付 朝刊

 ここ数年、新聞には定期的に広告出稿しているが、その理由を星野氏は「レスポンスを取る上で効果が薄れず数値で結果が得られていることが大きい」と話す。新聞広告の効果指標には、出稿していない時期にウェブで取れている検索流入数(リスティング広告と自然検索経由の合計)と、出稿時に増える検索流入数との差分をひとつの目安として使っている。また、今回の出稿では、QRコードからの実測値も分析している。

 もうひとつの理由が、ウェブでは接触できず新聞購読者にしかいない見込み顧客へアプローチできることだ。高所得者層はまさにターゲット。「朝日新聞に限っていうと、無料期間からの有料化率(正規会員化率)が高い。推測ですが、映画やエンターテインメントへの関心層が多い、一定の新規読者が入っている、などの要因があるのではないかと社内で話しています」

 一方、ローンチに際した「TSUTAYA オンラインゲーム」の新聞広告は、どちらかというと認知が目的。同社では元々、Tポイントユーザーが楽しみながらポイントをためられるゲーム「Tの世界」を展開していたため、そのユーザーの誘引を手始めに、アプリに比べてまだ「ブルーオーシャン」市場のブラウザーゲームに注力する。Tポイントユーザーは老若男女幅広い。初速に勢いをつけるマス広告として、新聞を選択した。

 現在、広告予算の多くをウェブに割いているが、今後も映像事業の新聞広告は継続する意向だ。「顧客の獲得単価でみるとウェブの方が安いため、ジレンマもあります。ただ、獲得単価だけで判断していいのか、という考えもある。マスもデジタルも、広告展開の前に到達できる層の可視化を図るという意味で、今後同じ土俵で語られるようになってほしいですね。若年層を中心に、エンターテインメントにお金を払う概念が薄れているという難しい状況はありますが、その中でも価値を見出してくれる顧客を捉えるため、今後も模索を続けます」