創業100周年の今年、「グループ力」をインナーにも訴えた元旦広告

 青空をバックに枝葉を広げる大樹が、朝日新聞の元旦紙面を飾った。日立グループの広告だ。同グループでは、新聞広告やテレビCMなどのマス広告を、インナーコミュニケーションの重要なツールとしても位置付けて展開している。日立製作所 ブランド・コミュニケーション本部 宣伝部 担当部長の大居弘明氏に話を聞いた。

 

国内外900社を超えるグループ社名が
元旦紙面に一堂に会した

日立製作所 ブランド・コミュニケーション本部 宣伝部 担当部長 大居弘明氏 日立製作所 ブランド・コミュニケーション本部 宣伝部 担当部長 大居弘明氏

――インナーコミュニケーションに対する考えを聞かせてください。

 日立には、国内に367社、海外にも547社の連結グループ企業があり、約40万人の従業員が働いています。日立が社会に対してどんな考えを持って事業展開しているのかを社外に発信することは当然大切ですが、同時にグループ社員にも日立の一員だと認識してもらうことも重要だと考えています。グループ内イントラネットなどを活用し、タイムリーな情報発信に取り組んでいますし、マス広告についてもインナーを強く意識しています。テレビや新聞に企業広告を出稿することで、事業支援と同じくらいに、グループ社員のモチベーション向上を狙っています。それが結果として、日立グループのブランディングにつながるものと考えています。

――元旦のグループ広告が印象的でした。概要について聞かせてください。

 メーンコピーで「グループ力」という言葉を用い、それを支えるすべての連結グループ企業名を掲載しました。当グループは今年100周年を迎えます。この機会に、社外に対して日立がグループ力をさらに結束し、事業を通じて社会に貢献していくことを宣言すると同時に、グループ企業で働くすべての従業員に日立の一員という意識を持ってもらうことで、さらなる力の向上につなげていきたい。それが広告の意図でした。

 クリエーティブには、「この木なんの木」というCMソングでおなじみの「日立の樹」を起用しました。大地に深く根ざし大きく枝葉を広げる様は「安心」「信頼」「総合力」を象徴し、まさに日立グループが目指す理想の姿です。100年に一度のタイミングでグループを語るには、「この木」以上にふさわしい存在はありませんでした。

 元旦の掲載にもこだわりました。100周年という節目の年の年始というタイミングも当然ありますが、家族がそろってくつろぐお正月に、皆さんで見ていただきたい、という思いがありました。この広告は国内でしか紙面を見ることができないので、海外のグループ企業には、新聞紙面を直送したりデータで送ったりなどしました。

2010年1月1日付 朝刊 2010年1月1日付 朝刊

――反響はいかがでしたか。

 まさに今、各方面から聞こえてきている段階ですが、グループ企業からの反響が大きく、「ポスターにしてほしい」「パネルにして展示会に掲出したい」という要望が何件も寄せられ、この広告の企画・制作に携わった者として喜んでいます。
今回の広告の「主役」はグループ会社の社名。正式な社名を確認する作業は、それは大変でした。例えば、中国の企業名では日本語では使わない漢字があったり、英語以外の言語の社名表記があったりで・・・。でも、それだけにグループ企業の皆さんに喜んでもらえたことは、そんな苦労を忘れるほどうれしいものでした。また、原稿作成や確認をする中で、私自身、入社以来、連結グループ企業を一つひとつ認識したことも初めてで、まだまだ知らないことが多いと思いましたし、たくさんの仲間たちが世界中で頑張っているんだと改めて実感しました。おそらく、この紙面を見て同じように感じたグループ会社の社員は多かったのではないかと思っています。

 

 

「社会イノベーション」と「環境」を切り口に
社内外のコミュニケーションを図る

――インナーコミュニケーションにマス広告を積極的に活用されています。

 国内外40万人ものグループ社員に、日立グループが今考えていることや、方向性を伝えるために、自分だけでなく家族の目にも触れるマス広告は欠かせないと考えています。企業広告はテレビと新聞を中心に展開していますが、テレビCMは30秒、60秒という時間の制約があります。その点新聞は、読者の許された時間の中でじっくりと読んでもらえる。テレビCMで語り尽くせないことを新聞で補完するという考えのもと、テレビと新聞を併せて活用しています。
とはいえ、グループ全体での事業分野は幅広く、1回の企業広告で取り上げられる事業やグループ企業は限られています。そういう意味では、今回の元旦広告で連結ベースのグループ企業を全社取り上げたことは、過去に例のないことです。100年という節目の年の元旦に出せたことに、大きな手ごたえを感じています。

――今後の展望などについて聞かせてください。

 2009年度から、経営体制も変わり、インフラを中心とした社会イノベーション事業をグループの中核として取り組んでいくことを標榜(ひょうぼう)しました。その経営方針は次年度も変わりません。社会イノベーション事業はB to Bの領域が中心となりますが、鉄道や電池など、できるだけ一般の生活者にもわかりやすい接点を見つけながら、広告宣伝を手掛けていく考えです。また、2008年度から展開している「環境コミュニケーション」の中で、しっかりと、人のくらしを支える社会イノベーション事業を取り上げていく予定です。そうしたコミュニケーションを通じ、グループ全体のモチベーション向上、グループ力のさらなる強化も進めていきたいと考えています。