国公立大学の独自性、今と未来を幅広い層に届ける

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大学間の競争が激しくなるなか、近年は国公立大学においても様々な改革が進み、その独自性や取り組みを、幅広いステークホルダーに訴求する必要性が高まっています。その一つの方法として、AERAムック教育編集部が制作を担当する、朝日新聞の広告特集シリーズ「国公立大学進学のすすめ」が、多くの大学に活用されています。
横浜国立大学

改革を続ける大学の「今」を活字メディアでしっかり伝える

横浜国立大学 広報担当理事 副学長
中村文彦氏

 横浜国立大学は昨年、初めて「国公立大学進学のすすめ」に出稿。学内外からの評判が良かったため、今年も続けて掲載した。同大学の広報担当理事で副学長の中村文彦氏は、掲載の意図を次のように語る。

 「2019年に創立70周年を迎える本学は、昔とは国公立大学のなかでの立ち位置が変わり、様々な改革も進めています。それだけに現在の大学の顔が見えにくい、との声もいただいていました。それはこれまで我々が積極的に情報発信をしてこなかったことも一因で、今後はあらゆる機会を活用し、本学の取り組みを外に発信していきたいと考えています」

 とりわけ外部にきちんと伝わっていなかったと中村氏が感じるのが、グローバル教育への取り組みだ。近代日本で初めて開港した横浜にある同大学は、もともとグローバル化への意識が強い。多くの留学生と学べる英語の講義、新興国や途上国について幅広く学ぶカリキュラム、国際協力に携わる海外派遣など、実践的なグローバル教育に力を入れている。

 「この紙面企画では、そのような本学の取り組みを取材してもらい、記事体広告のかたちで紹介しました。活字メディアの強みを生かし、できる限り具体的に、まとまった文章でしっかりと伝えたいと思ったのです」

2017年7月12日付 朝刊
19~21面2.3MB /22~24面2.1MB /25~26面1.6MB

学生や教授も巻き込みながら全員で大学の良さを発信する

 受験生が大学を選ぶうえでは、高校や予備校の教員、保護者の意見も大きく影響する。そういった意味でも、「幅広いステークホルダーにじっくり読んでもらえる新聞が有効」と中村氏は語る。昨年から受験生やオープンキャンパス参加者の数は、着実に増加しているという。

 今後、受験生獲得のためには、国公立大学でも様々な手法を駆使した戦略的なコミュニケーションが重要になる。同大学でも、地道に高校をまわっての説明会、動画の活用、ウェブサイトのリニューアルなどで、情報発信にますます力をいれていく。国公立大学という枠組みのなか、限られた予算を有効活用し、いかに他校との差別化を図るかが課題だ。

 「そのためにも本学では、学生や教員、職員の皆が大学の看板を背負い、積極的に大学の良さを発信していきます。全員参加型の広報活動を、これからは目指していきたいと考えています」

 すでに、そうした意識で活動をする学生も現れている。それこそ表現力、発信力を身につける、またとない実践教育の場といえるだろう。

都留文科大学

独自の魅力をアピールし新たな受験層を開拓する

都留文科大学 学長
福田誠治氏

 「少子化が進むなか、何もしなければ受験生は減る一方です。今までにない価値をつくってアピールし、これまでとは異なる受験層を開拓しないと、大学は生き残れません」

 2016年から2年続けて全面広告を朝日新聞に掲載した理由を、都留文科大学の福田誠治学長は語る。葛飾北斎による富士山の絵を大胆に使った広告は、大学のものとしてはユニークだ。

「今、大学は独自性が問われています。他と同じような広告を載せても意味はありません。そこで『富士山にいちばん近い学び舎から世界へ』といった私どものビジョンを、大胆なビジュアルで表現しました」

 同大学では教員養成の伝統を基に、グローバル人材の育成に力を入れるべく、国際教育学科や教養学部を開設するなどの改革を進めている。新聞広告は、これから同大学が向かう道を社会に広く伝えるものだ。

 「本校ならではの魅力を伝えることで、『この大学でこそ学びたい』と思う生徒に来てほしいと思っています。改革については、学内でも様々な意見が出ます。広告をつくるなかで議論を深め、社会に宣言することでビジョンを共有する。広告にはそのような意義もあります」

※画像は拡大表示します

2016年7月5日付 朝刊

2017年7月31日付 朝刊

学生の地域交流活動を記事体形式で紹介

 昨年同様7月には純広告に加え、広告特集「国公立大学進学のすすめ」にも出稿した。こちらはメディアの視点から、より客観的に大学の取り組みを読者に伝えることが狙いだ。

 「私どもは地域との交流や連携活動を重視し、学生が地域の魅力や課題を自ら見つけ、学びあう教育に力を入れています。今年は、本校の地域交流研究センターや、小学校で子どもと理科の実験を行う取り組みなどに焦点をあてました」

2017年7月11日付 朝刊
19~21面2.4MB /22~24面2.2MB /25~27面2.3MB

 思考力や判断力をより重視する方向に向かう日本の教育。その要請にいかに応えるか、様々なかたちでアピールし、大学への共感を育むことも必要だ。そのため広告でも新しい試みを取り入れている。「うちの大学をよく知る人に」と、卒業生が起業したネット企業に動画の制作を依頼し、YouTube上の公式ページに掲載しているのも一例だ。

 継続的な広告出稿の効果も着実に上がっているという。

 「昨年初めて新聞広告を出したところ、受験生が前年に比べ1,100人も増えました。特にうれしかったのは、これまで本校を受験したことがない高校の生徒がたくさん受験してくれたことです」と福田氏。

 「学生たちが何を学び、実践しているか。それを伝えていくことが何より大事。今後も新聞広告を、積極的に活用していきたい」と結んだ。