よりよい未来をともにつくろう! こどもの日に「未来空想新聞」を特別発行

 5月5日のこどもの日、東京・神奈川と関西2府4県の朝日新聞朝刊に「未来空想新聞」(ブランケット判12Pフルカラー、226万部)が折り込まれた。40を超える著名人・企業・団体が賛同し、「生き方」「家族」「ジェンダー」「教育」「身体」「AI」など、多彩なジャンルの「未来」をテーマに特別発行した広告特集だ。都内6カ所(代官山 蔦屋書店、SHIBUYA109など)でも配布したほか、特設サイトを用意し、紙面に掲載した各記事はwithnewsのカテゴリースポンサードに格納。協賛したパナソニック株式会社の足立昭博さん(戦略本部 CCXOチーム シニアデザイナー)と朝日新聞社で企画をプロデュースした田浦孝博と金森省吾(ともに総合プロデュース本部 コンテンツ事業部 ストラテジック・プロデュースチーム メディア・ディレクター)に、前代未聞の試みを振り返ってもらった。

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左から朝日新聞社 田浦、パナソニック株式会社 足立氏、朝日新聞社 金森

当日のツイッター分析~驚きから共感へ時間とともに変化

足立 当日はずっとツイッターの反応を見ていました。リアルな新聞が届くのは朝日新聞購読家庭で、配布エリアも全国でなかったため、そこからツイッターやweb上で特に若い人たちを中心に認知されることが大事だと思い、「1ツイート10円」というドネーションの企画も実施しました。これまでの常識に疑問を投げかけるような内容には、否定的な反応があることも想定はしていたのですが、そういった反応はごくわずか。思った以上に世の中にポジティブに受け入れられたと思います。

*「#こどもの日は未来を考える日」と「#未来空想新聞」の付いた投稿をツイッター上でリツイートまたは投稿をすると、1投稿につき10円をパナソニック株式会社から朝日新聞厚生文化事業団『未来をひらく こども応援基金』に寄付する企画

田浦 僕もツイッターを一日追いかけました。最初の「なんだ、これは!」といったツイートから、時間とともに読んだ感想や「こういう考え方には共感する」と内容が変化していきました。ツイート数も大きく伸び、だんだん浸透していっているな、理解されていっているなという肌感覚がありました。

金森 時間軸で変わっていきましたね。前日まで誰も知らなかった「未来空想新聞」という言葉が、世の中事化され、キーワードとなり、多くの人たちが議論していました。トレンド入りも果たし、その広がりを実感しました。

<画像をクリックすると各紙面が拡大表示されます>

田浦 それが、一日に数時間単位で起こったのは、12ページすべて未来がテーマというインパクトや、「子どもの日は未来を考える日」というコンセプトへの共感をつくれたからだと思います。
 ツイッター分析では、10代、20代にかなりリーチしていました。

足立 若い世代でパナソニックの認知度が下がっていることに課題意識がありました。将来においてもお客様のくらしに貢献し、共感していただけるブランドであり続けるためにも、若い人たちのくらしや社会の変化にもしっかりと向き合い、価値観に寄り添えることが重要と考えています。その層にリーチできたことはポイントだったかなと思います。

アクションワード「Make New」を効果的に社内外に届ける

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パナソニック 足立氏

足立 今回の企画は、今年4月に新体制をスタートしたパナソニック株式会社のアクションワード「Make New」を、当社の創業記念日にあたる5月5日に新聞広告で対外的に発信することがきっかけでした。
 「Make New」は、くらしに寄り添う未来の定番をつくり、次の時代の豊かさを実現していくというパナソニックの変革の意志を込めた言葉。その言葉に含まれている「ありたい未来を考え、つくり上げていこう」という思いを、朝日新聞が持つ「今のニュースを切り取って届ける」という特性と掛け合わせた時に、一方的にメッセージを発信するだけでない、より拡張した取り組みができるのではないか。パナソニックが「Make New」に込めた思いを、より読者に共感していただける形で届けることができるのではないか。

 そう考えて「こどもの日は未来を考える日」というコンセプトのもと、未来を考える新聞をつくろうということになりました。様々な人たちに未来のニュースを届けることで、未来を空想するきっかけをつくり、よりよい未来を実現していく後押しになればいいなと。社内での経緯としては、私が「2039ビジョンプロジェクト」という未来の理想の社会を考えるプロジェクトのリーダーをしていたので、未来を考える新聞をつくるうえでもその知見を生かせると考えました。

田浦 未来空想新聞に記載されている発行日は「2039年5月5日」。プロジェクトとの関連は? 

足立 私の所属する戦略部門は、パナソニック株式会社の将来のあるべき姿を考え、その実現に向けた戦略を策定する部門です。そのため短期的な視点でなく、20年くらいの時間軸で人々のくらしや社会の変化を捉え、未来のビジョンを描く必要があると考え立ち上がったのがこのプロジェクトです。しかしながら、2040年代の未来予測を見ると、社会課題や環境問題の深刻化など明るいものばかりではありません。2040年代の未来をより良いものにするため、それまでをどう生き、どう人々に貢献していくのかを考える旗印をつくりたいと、名称を「2039ビジョンプロジェクト」としました。

田浦 インナーブランディング的な側面での反応は?

足立 事前告知はしませんでしたが、社内でも注目されたと思います。パナソニック株式会社という枠を超え、パナソニックグループ内の他のカンパニーからも問い合わせがあり、累計で数千部単位の配布を行いました。また「今回の新聞を見て、我々の部門でも将来を見据えていかなくてはならないと考えた。ぜひ情報共有する場を持たせてほしい」という声も届きました。
 特にうれしかったのは、私と同世代の社員が個人的に送ってくれたメッセージです。たまたま朝日新聞を取っていた彼女は、当日何も気づかずにお子さんと一緒に未来空想新聞を読んでいて「今日の新聞すごくいいな」と思っていたらパナソニックの協賛だった(一同、笑)。こういう新聞を出してくれる会社に勤めていることを、すごく誇りに思ったと。

金森 こどもの日にふさわしいですね!一緒に取り組んできた者としても本当にうれしい反応です。朝日新聞社内でも、社会部の同世代の記者が「社内ながらちょっと嫉妬するほどの力作でした」とツイートしていました。

足立 今後パナソニックとしては、一人ひとりがお客様のくらしや社会の変化を捉え、未来に想像を巡らせて「Make New」で掲げた意志を体現する商品をつくっていかなければならないと思います。さらにこれからのくらしの当たり前を変える挑戦や企業の姿勢といったものも新しく立ち上げたオウンドメディア「Make New Magazine」で発信していきます。未来空想新聞で得られた共感を一過性のものにするのではなく、継続していくことが大事だと思うので。

同じ目線で議論できたからこそできたキャスティング

足立 プロジェクトを進めるうえでも、金森さん、田浦さんと価値観が合った点がよかったと思います。同じ世代、同じ課題意識を持つ人間がプロジェクトに携わったことで、一方的にこちらがオーダーしたものを作ってもらうという関係性ではなく、議論をしながらつくり上げていくことができた。そういう関係性の中でプロジェクトを進められこのようなアウトプットができたことは、私の会社人生の中ですごくいい機会になったなと思っています。

田浦・金森 ありがとうございます。

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パナソニック 足立氏

足立 特に議論を尽くしたのがキャスティングでした。唐突に「未来を想像してください」と言っても難しい。幅広い年齢層の人たちが自分事として未来を考えられるよう、親しみやすいタレントの方に登場してもらいつつ、彼らのくらし方や考え方には時代を先取りした先見性があることを意識しました。これからの未来にどういう課題意識を持ち、どういう風になっていってほしいと思っているか。実践者の生の声を届けることで空想を広げてもらいたかった。
 Z世代のなかで活躍している人にも登場してもらったのは、新しい時代を創る若い世代の活動を応援し、多くの方々にその熱意を届けたかったから。「ジェンダー」や「リアルとバーチャル」などこれからの自分らしい生き方を切り開いていたり、社会課題に取り組み、世の中を変えようとしたりしている若い世代の人たちから始まって、後半には、落合陽一さん、宮田裕章さんといったテクノロジーの深い知見を持つ有識者や、ファッション、エンターテインメントなど様々な分野の先駆者の方々が登場するというように、いろんな切り口から未来を語っていただくことで、読み進めるほどにどんどん未来を空想する視点が広がっていく構成にできたかなと思います。

田浦 「未来を考える」ことについての一貫した思いやコンセプトは、足立さんにかなり知見があったので、キャスティングの大枠の方向性、人選のご希望をいただき、一方でそういった方は新聞社が過去に編集記事に取り上げていたことが多いので、スムーズにコネクトできたという感じです。3カ月という時間的な制約の中で実現したのは新聞社というネットワークがうまく活用できたからだと思います。

金森 シンクロした部分は、日頃、朝日新聞が報じているスタンスに近しいところもあったと感じています。

足立 双方の視点を掛け合わせた結果、本当に良いキャスティングができました。我々だけでは到底リーチできなかったような人たちに、これまでのネットワークを駆使し、アプローチしていただけて、非常にありがたかったです。

社内の議論で鍛えられたまなざしが取材に生きた

足立 取材にも立ち会わせていただいたのですが、編集テーマを議論する中でこれからの時代に向け大事な考えだと思っていたことを、リアルな生の声として聴くことでいろいろな発見がありました。我々が「こういう風に考えているだろう」と思っていたことが、実践している人たちにとってはそんな感覚だったんだというような。

金森 僕と田浦は半分ずつ担当したのですが、足立さんは全部の取材に立ち会われましたからね。

田浦 足立さん、マックスで1日5取材でしたっけ?

足立 どの取材も楽しみに行かせてもらって、すごくエネルギーをもらいました。こういう人たちが時代の主役になっていけば、本当に世の中がいい方向へ向かっていくなと、強い期待を感じました。

金森 どの取材も非常に内容が濃く示唆に富んだ話ばかりだったのですが、どのポイントを切り取るかは足立さんにも入ってもらい、一貫した指針を持って原稿にまとめました。

足立 「2039ビジョンプロジェクト」で、ありたい未来の姿を描いた経験が、読者の方にもこういった未来に対する考え方に触れてほしいというイメージづくりに役立ったのかもしれないですね。

金森 普段からそのテーマについて議論を積み重ねていると、現場で取材した時にもひらめきを生みますよね。
 未来をテーマにした今回の取材においても、社内のプロジェクトで未来へのまなざしが鍛えられていたからこそ、先駆者の生の声を聞く中で、きらっと光るポイントがわかったのでは?

足立 確かにまなざしがないと光って見えない。不確実な未来を考えるうえで、これが正解というものがあるわけではないので、思想を持ったうえで編集に携わることができたことで、パナソニックの思いともつながった一貫性のあるメッセージが紙面の中に生まれたかもしれないです。これは我々の業務にも通じる話で、普段から未来に向けた議論を交わし、まなざしを鍛えることで、人々のくらしや社会の変化にも敏感になれる。今回の企画を通じて気づくことができました。また机上の空論とは違う生の声を聞けたのは、経験としても非常に面白かった。自分の考え方にも様々な影響を受け、貴重な体験をさせていただいたと思います。

田浦 先を行く人たちに話を聞いたので未来で市場調査しているような……。

足立 そう、未来からタイムスリップしてきた人たちに話を聞いているような感覚でしたね。

新聞社のリソースを駆使して「ともに考え、ともにつくる」

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朝日新聞社 金森

金森 我々のストラテジック・プロデュースというチーム名は、広告主とディスカッションしたものを最終的なエグゼキューション、実現するところまでプロデュースするという意図で付けられています。僕が田浦とよく言っていたのは、パナソニックさんの思いを聞き、汲み取り、それを表現するために、朝日新聞社が持っているありとあらゆるリソースを組み合わせること。
 僕の感覚では工場長みたいなところがあって、ラインづくりも大切ですし、原材料は何と何を配合するのか、あの人の知見とこの人の知見を組み合わせよう。それをきれいに走らせるためには、一番合理的で美しいラインをつくらないと時間的に間に合わない。なるべく作業に没入しないよう気を付けながら、どのオペレーションで回していけば一番ワークして、この期日で最高の商品を世の中に出せるかということを、引いた目でずっと考えてきました。

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朝日新聞社 田浦

田浦 制作体制もそうですが、足立さんといろいろチューニングしながら、通常つくらないものをつくっていった。アウトプットももちろん大事ですが、今回はプロセスの話かなと思っています。朝日新聞社は「ともに考え、ともにつくる」という企業理念を掲げています。我々は基本クライアント様から広告をいただいてビジネスをしていますが、ご出稿いただくというよりは、何かを協業して世の中に価値を届けていく。一緒につくり上げていくのが理想だと思っています。それが今回、共感を生んで世の中にしっかり届いた。ご一緒できたことが、気づきにもなりました。

金森 うまくいった要因の大きな部分にパナソニックさんの「世の中をよりよくしたい」という思いが、新聞社で仕事をしている人間の思いと共通していたことがあります。そこに弊社内のADS(Asahi Digital Solutions)に取り組むメンバーたちがすごく共感してくれて、自分が何をつくって、世の中に出そうとしているのか、メンバー全員が深く理解し、価値のあるものを生み出しているんだという感覚が感じられました。今回制作には20名ほどが関わったのですが、終わった後にいろいろな人から「この仕事に関われたことが、今までの仕事人生で一番うれしかった」と言われました。

足立 それはすごいですね。

金森 限られた時間の中で、多くのコンテンツをつくりましたが、元記者やデザイナー、データアナリストがいる、多様性に満ちたADSの体制があれば必ずできると思っていたので、不安はありませんでした。特に今回は紙面とデジタルでの展開だったため、紙面で適切な文字量と、webで読み応えのある文字量を両立させる必要がありましたが、編集局の記者出身者がうまくディレクションしてくれました。文字数調整をしながらも、伝わるメッセージを変えないように表現を工夫し、紙面やwebの見出しも書き分けるなど、プロのテクニックで仕上げることができました。

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足立 私としては朝日新聞のメンバーに「こういうものを届けたい」という思いを伝えることで、それを具体化するためのゴールへの道筋を引いていただけたのがとてもありがたかったなと思います。

田浦 足立さんが未来を考えたように、我々は社会課題と向き合っていたりします。その社会課題に詳しい人間を一緒にコーディネートしながら、新しい価値をクライアント様と一緒につくっていく。「共創」ですね。そしてそれをクライアント様のインナーに向かって浸透させていく。そういう感じのことができたらいいなと思います。

足立 世の中の人と一緒に次の世代の豊かさをつくっていくパナソニックの姿勢は、今後も発信していきたいと思っています。今回のメンバーとまた「共創」の機会をつくれたらうれしいですね。

金森・田浦 ありがとうございました。

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