長期的視点で新商品・新事業の創出を推進

 産業用ロボットの精密減速機などの製造会社・帝人製機と、鉄道車両用ブレーキなどの製造会社・ナブコが経営統合して2003年に設立されたナブテスコ。鉄道、航空機、商用車、産業用ロボット、建設機械、自動ドアなど、広範な領域で最先端のテクノロジーを提供している。その取り組みについて、代表取締役社長の小谷和朗氏に聞いた。

小谷和朗氏 小谷和朗氏

──新しいトピックスは。

 二つあります。一つ目は、岐阜工場の増築です。三菱航空機の国産ジェットMRJ(Mitsubishi Regional Jet)およびボーイング737MAXへの製品納入が2017年より、ボーイング777Xへの製品納入が2019年より始まるのに備え、増産体制を整えていきます。

 二つ目は、神戸にあった「ナブテスコ・デジタル・エンジニアリング・センター(NDEC)」の京都移転です。NDECでは、企業や大学と連携しながら学際的に技術研究を進め、開発スピードの向上、グローバルな人材の育成などを図っています。

 当社は従来、高い製造技術をもってメーカーのニーズに合った製品を作ってきました。しかしこれからの時代は、いかに革新的な製品を自ら提案できるかが、生き残りのカギを握ります。NDECはまさにそのための機関であり、長期的視点で当社の新商品・新事業の創出を支えていきます。

──各事業の展望を聞かせてください。まず、航空機器事業の展望は。

 航空機器事業は、「フライト・コントロール・アクチュエーション・システム」という、航空機の3次元の動きを正確にコントロールする技術を、MRJやボーイングの航空機に提供しています。この分野は実績や製造技術が重視される一方で、革新的な製品は採用されるまでに時間がかかり、植林事業に近い根気が必要です。当社の強みは、高い製造技術を持っていることと、ボーイングという良い土壌を持っていること。リーマンショックのような大きな環境変化が起きない限りは今後も順調に推移し、MRJの拡販が進めばさらに成長できると考えています。

──商用車用機器事業の展望は。

 商用車用のエアドライヤーの国内市場シェアは約85%、ウェッジブレーキ用チャンバーの国内市場シェアは約70%を占めます。トラックやバスの安全と性能を守るこうした製品の市場占有率は非常に高いですが、自動運転時代の到来を見据えた新技術の追求に取り組まなければと思っています。

──舶用機器事業の展望は。

 舶用エンジン遠隔制御システムの世界市場シェアは約40%、国内では約60%を占めます。この分野でも、エンジンの電子化に適応する製品など、新技術の追求に取り組んでいます。

──鉄道車両用機器事業の展望は。

 鉄道車両用ブレーキシステムの国内市場シェアは約50%、鉄道車両用ドア開閉装置の国内シェアは約70%を占めます。一方、世界でのシェアはまだ拡大の余地があります。一昨年には、欧州大手車両メーカーと取引実績のあるイタリアのドアメーカーを買収しました。技術力は高く評価されているので、高い付加価値を提示することで、欧州での拡販を進めていきたいと考えています。

──精密減速機事業の展望は。

 弊社の精密減速機は国内外のメーカーの高い信頼を得ており、産業用ロボットの関節用精密減速機は世界市場シェア約60%、工作機械のATC駆動分野は国内市場シェア約60%を占めています。地域別では、中国における省人化・自動化ニーズの伸長が著しく、同国の産業用ロボットの導入台数は2013年より世界トップになっています。今後もその傾向は続くと考えられ、当社としてはこの事業での成長を年率10%と展望しています。

──自動ドア事業の展望は。

 建物用自動ドアの世界市場シェアは約20%、国内では約50%、プラットホームドアの世界シェアは約20%を占めます。この分野の強みは、商品の提供から施工・保守・管理までを一貫して担うバリューチェーン展開です。中長期の成長に向けた取り組みとしては、海外販売会社のM&Aにより、バリューチェーン経営を強化し、事業規模の拡大を目指しています。

──油圧機器事業の展望は。

 パワーショベル用走行ユニットの世界市場シェアは約30%。中国における建設機械需要減少の影響がありますが、今年、ハイエストコーポレーションを新しいパートナーとして弊社グループに迎え、製品ラインアップの拡充と油圧システム技術の強化を図っており、中期的には回復すると見ています。ハイブリッド化やICT化など、さらなる付加価値創出にも努めています。

──新エネルギー機器事業の展望は。

 風力発電機用駆動装置や太陽追尾駆動装置は、高い技術力を持っています。原油安の今は大きな成長が難しいですが、世界各国で再生可能エネルギー振興政策が実施される中、課題解決と市場開拓に努め、拡大を目指していきます。

──福祉機器事業の展望は。

 マイコン制御式の義足膝継手、電動アシスト型の介助用車いす、抑速ブレーキ付きの歩行車などを開発しており、日本以外でも高く評価され、愛用されています。ユーザー目線を大切にした着想と、独自の技術に磨きをかけ、より良い製品を提供していきます。

──包装機事業の展望は。

 レトルト食品用充塡(じゅうてん)包装機は、国内市場シェア約85%を占めます。国内のみならず、海外展開も強化し、主に欧州、北米、中国における売り上げ拡大を図ります。また、次世代の製品開発や、サービス体制強化により、競争優位性の維持・拡大を図ります。

──グローバルカンパニーとして心がけていることは。

 現地の文化の尊重と、オープン・フェア・オネストの行動を社員に呼びかけています。日本流のやり方を押し付けるのではなく、この国の人はどう考える? と率直に聞く。また、ギブ3:テイク1、くらいのつもりで現地社会に尽くし、信頼を勝ち取る。そうした努力も必要だと思っています。

 また、外国人の社員を増やし、海外子会社のトップも現地の方の登用を促進していきます。あわせて女性社員の増員にも力を入れています。

──愛読書は。

 坂根正弘コマツ元社長の著書『ダントツ経営』です。製造業のリーダー論として参考になりました。小説は好きな作家に傾倒するタイプで、北方謙三さんや浅田次郎さんの作品はほとんど読破しています。

小谷和朗(こたに・かずあき)

ナブテスコ 代表取締役社長

1951年兵庫県生まれ。74年関西学院大法学部卒。同年帝人製機(現・ナブテスコ)入社。2003年インドネシア現地法人副社長。09年ナブテスコ執行役員。10年取締役執行役員企画本部長などを経て11年6月から現職。

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